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ブレグジット混迷で英議会は崩壊寸前!?
メイ首相は条件付きで辞任表明するも…

2019年04月01日(月)16:54公開 (2019年04月01日(月)16:54更新)
ザイFX!編集部

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 英国のEU(欧州連合)離脱(=ブレグジット)を控え、ザイFX!では、これまで何度か元為替ディーラーで英国在住の松崎美子さんに、混迷する英国の状況や英議会での実施が想定されるイベントなどについて、解説していただきました。

【参考記事】
EU離脱案の採決中止! ますます混乱する英国で、メイ首相降ろしのクーデター勃発!?(3月25日、松崎美子)
メイ首相最後の賭け! 3月19~20日も山場、21~22日も山場。混乱の英国から直送レポ!(3月18日、松崎美子)

 ブレグジットについては、当初予定されていた3月29日(金)の離脱が、ひとまず延期されましたが、英国内では混乱が続いていて、メイ首相が解散総選挙の可能性を示唆しているとの情報が流れるなど、状況は二転三転しています。

 そこで今回も松崎美子さんに、現在のブレグジットに関する最新情報や今後の見通しについて、ご寄稿いただきました(ザイFX!編集部)。


松崎美子さんプロフィール

■英国議会は崩壊寸前、「もうたくさんだ…」という本音も

 2017年3月29日、メイ首相がEU(欧州連合)基本条約50条の書簡に署名し、正式に2年間の交渉期間がスタートした。

 それから2年経った今年(2019年)3月29日(金)、英国は未だにEUの一員のままである。

 3月29日(金)を目前に、英国議会では数々の出来事が繰り広げられたが、議員も国民も「Enough is enough(もう、たくさんだ)」というのが本音である。

 もし、何も決まらないまま時間だけが経過すれば、さすがの英国人たちも合意なき離脱を受け入れるのかもしれない

■Indicative Vote実施にGoサインは出たが…

 3月26日(火)にブレグジット修正案に対する採決が、再度行なわれた。そこで唯一議会の賛成を得たのが、保守党レトウィン卿と超党派議員が提出した「3月27日にIndicative Vote(示唆的投票)(※)を実施する」修正案であった。

(※編集部注:「示唆的投票」とは、法的拘束力を持たない投票のこと)

英国下院(庶民院)のツイート
英国下院(庶民院)のツイート

 これを受け、3月27日(水)の議会では、ブレグジットの内容を決断をするのは、メイ首相でなく議会に移った。

 ただし、これで議会のもやもやが一気に晴れると思ったら、大間違い。

 Indicative Voteの結果には法的拘束力がないため、どういう結末を迎えるのかは、実際にやってみないと誰にもわからない。

 そして、2003年に上院改革案を巡り、Indicative Voteを実施した時には、7つのオプションを前に、上院議員たちはすべてのオプションを否決し、ますます混沌とした暗い過去があるからだ。

■Indicative Voteは、8つのオプションすべて否決

 そもそも、このIndicative Voteとは、何か?そこから簡単に説明しよう。

●Indicative Voteとは?

 合意なき離脱を避ける目的で、議員達がさまざまな選択肢を出し合い、議会で審議/採決することを容認する。

 ここで問題となるのは、この決定には法的拘束力がないため、過半数以上の賛成を得た案を政府が採用し、EUとの交渉に使うとは限らないことである。下手をすると、単なる時間の無駄になるリスクもある。

●Indicative Vote、8つのオプション

 3月27日(水)のIndicative Voteに向け、合計16個のオプションが議員から提出され、最終的にバーコウ議長は8つのオプションに絞込み、投票が行われた。保守党は自由投票となったが、労働党はいくつかのオプションについて、党議拘束をかけた。

●投票結果、全て否決

 現地時間、3月27日(水)19時から投票が行われた。方法としては、議員に1枚の紙が手渡され、そこには8つのオプションと「YES/NO」の書き込み欄があり、そこに印をつけていくやり方だった。

 書き込み時間は30分の制限が設けられ、最終結果は21時過ぎに発表された。そして、大変驚いたことに、8つすべてが否決となったのである。

 各オプションの投票結果は以下のとおりとなった。


● オプションB:保守党バロン議員案

「合意なき離脱」

賛成:160
反対:400

240票差で否決


●オプションD:超党派案(ボールズ保守党議員)

「コモンマーケット 2.0」

賛成:188
反対:283

95票差で否決


●オプションH:ユースティス保守党議員案

「関税同盟抜きのEFTA(欧州自由貿易連合)/EEA(欧州経済領域)

賛成:65
反対:377

312票差で否決


●オプションJ:クラーク保守党議員案/労働党ベテラン議員案

「関税同盟残留」

賛成:264
反対:272

8票差で否決


● オプションK:労働党コービン党首案

「労働党案(EUと経済的な協力体制の継続。包括的関税同盟と単一市場に限りなく近い位置付けを求むソフトブレグジット案)」

賛成:237
反対:307

70票差で否決


●オプションL:チェリーSNP(スコットランド国民党)党議員と超党派案 

「EU基本条約50条の一方的な破棄」

賛成:184
反対:293

109票差で否決


●オプションM:ベケット労働党議員と超党派案

「批准手続きに入る前に国民に問う目的で2度めの国民投票実施」

賛成:268
反対:295
27票差で否決


● オプションO:フィッシュ保守党議員と超党派案(ブレグジット強行派案)

「モルトハウス案B」

賛成:139
反対:422
283票差で否決


■ブレグジット実施と引き換えに、メイ首相が辞任を示唆

 Indicative Voteの投票に入る2時間前に、議会の半分が空席となった。いったい何が起きていたのか?

 実は、保守党は伝統的に毎週水曜日夕方に、1922年委員会(※)を招集する。

(※執筆者注:「1922年委員会」とは、保守党の中で、もっとも重要な組織の1つ。保守党は長い間、現職議員の組織を持っていなかった。ところが、1922年の選挙で初当選した議員の間から、幹部議員以外の議員(バックベンチャーと呼ばれる)の組織をつくることが要望されて実現の運びとなった。この組織は、党首を束縛する権限は持っていないが、議員の意見や動向を党首に伝えるという重要な機能を十分に果していると言われている。現在でも毎週1回、招集される)

 3月27日も水曜日であったため、保守党議員たちは議会を抜け出し、1922年委員会に出席した。そして、この日の集会には、もうひとつ重要な意味があった。

 それは、メイ首相が辞任を発表するというウワサである。

 週末の保守党クーデターからもわかるように、保守党議員は、メイ首相の辞任と引き換えにブレグジット案に賛成票を投じる用意があるため、とうとうメイ首相は折れたのだろう。

 1922年委員会がスタートして15分くらい経った時、「メイ首相、集会の会場に到着」というヘッドラインが出てすぐに、「メイ首相、ブレグジットをきちんと実行に移したら、辞任を表明」と発表された。

■EU離脱日延期でも、3月29日はやっぱり重要な日だった

 メイ首相が辞任を発表した翌日の3月28日(木)の議会で、またしても、びっくりする発表があった。

 それは、急遽、3月29日(金)に議会採決を実施するという内容であった。

 3月21日(木)のEUサミットで、ひとまず離脱日が延期されたが、それでも3月29日(金)は重要な日であった。

 それは、サミットでEUは、5月22日(水)まで交渉期間を延長したい場合、「遅くとも、3月29日(金)までにMV3を実施し、ブレグジット案を可決すること」と、条件をつけたからだ。

 もし、3月29日(金)までにそれができなければ、最悪のシナリオとして、英国は、4月12日(金)に合意なき離脱のリスクとなるのだ。

 以下は、サミット合意内容の詳細であるが、こう明記されている。

「In the event that the Withdrawal Agreement is approved by the House of Commons by 29 March 2019 at the latest, the period provided for in Article 50(3) TEU is extended until 22 May 2019.

In the event that the Withdrawal Agreement is not approved by the House of Commons by 29 March 2019 at the latest, the period provided for in Article 50(3) TEU is extended until 12 April 2019. In that event, the United Kingdom will indicate a way forward before 12 April 2019, for consideration by the European Council」

(出所:欧州委員会)

 英国議会で、ブレグジット案が3月29日(金)までに可決されれば、英国のEU離脱日は、5月22日(水)まで延長される。

 もし、3月29日(金)までに可決されなければ、英国のEU離脱日は、4月12日(金)まで延長される。その場合、英国は4月12日(金)より前に、その後の計画についてEUに報告する。

 つまり、MV3(3度目の本採決)の可決まで残り1日のタイミングで、メイ首相は議会採決を呼びかけたことになる。

■ブレグジット案を2つに分けて議会採決に持ち込む

 3月28日(木)夕方、メイ首相が爆弾発表をした。それは、メイ首相が昨年(2018年)11月にEUと合意したブレグジット案を2つに分け、そのうちのひとつだけを29日(金)の議会で採決にかけるというものであった。

 バーコウ議長は、同じ内容のブレグジット案を何度も本採決に持ち込むことを禁止しているが、ブレグジット案そのものが真っ二つに分かれるのであれば、採決実施を禁止することはできない。

 そもそもブレグジット案は、「Withdrawal agreement(WA)=離脱案内容に対する合意」と、「Political declaration(PD)=政治的な宣言」に分かれている。

 そこで、3月29日(金)の採決では、WAだけを取り上げ、採決を行なうということである。

 BBCニュースによると、EU側はまず、WAを3月29日(金)までに可決すれば、5月22日(水)までの延長を認めるとサミットで語ったそうだ。

■そもそもWAとPDとは、何を指すのか?

 まず、WAは、EU/英国双方に住む住民の権利、南北アイルランド間に国境は設置しない(バックストップ)、手切れ金の支払額とタイミング、移行期間の詳細など、ブレグジットを巡る条件をまとめたものである。

PDは、英国がEUを離脱したあとの、EU/英国間の将来の関係についてまとめたものである。

 細かいことであるが、過去2度に渡って行なわれた本採決では、WAとPD両方を対象に採決を取っていたが、3月29日(金)の採決は片方だけとなっており、この採決はMV3とは呼ばれていない

■3月29日、WAに関する採決も否決

 伝統的に英国議会は、金曜日は休会となる。しかし、今の英国には時間がない。そのため、急遽、3月29日(金)を議会開会日とし、午後から採決を行なった。

●採決結果

 メイ首相の辞任と引き換えに、保守党のブレグジット強行派が賛成に廻ったため、もしかしたら可決されるのではないか?そんな期待感が高まった。

 しかし、北アイルランドDUP(民主統一党)党や労働党は依然として反対である。

 最終的には、「賛成286 vs 反対344、58票差で否決」となった。メイ首相、3度目の大敗である。

●トゥスクEU大統領からの発表

 否決のニュースが流れるのとほぼ同時に、トゥスクEU大統領が発言した。

 「In view of the rejection of the Withdrawal Agreement by the House of Commons, I have decided to call a European Council on 10 April

 英国議会で実施された採決で、WAが否決されたことを受け、4月10日に緊急EUサミットを開催する」

 この発表により、メイ政権は、なんとしても4月10日(水)までに「次の一手」を決めなければならない。

■週末に流れた、2つの大きな報道とは?

 この週末には、2つの大きな報道が出た。

●解散総選挙?

 先週(3月25日~)金曜日に、またしても負けたメイ首相。その後、親しい人間に対し、英国議会は完全に崩壊しているため、残された道は解散総選挙しかない……と漏らしたようである。

英国議会は完全に崩壊しているため、残された道は解散総選挙しかないと漏らしたとされるメイ首相…。ブレグジット実施に向けて打開策はあるのだろうか? (C)Matt Cardy/Getty Images News

英国議会は完全に崩壊しているため、残された道は解散総選挙しかないと漏らしたとされるメイ首相…。ブレグジット実施に向けて打開策はあるのだろうか? (C)Matt Cardy/Getty Images News

 しかし、このニュースが流れてから、ほとんどの保守党議員は、大反対している。

 表向きには、ブレグジットで時間がないことを理由に挙げているが、本音としては、首相がメイさんのままでの総選挙をするリスクを取りたくないことは明白だ。

議会の3分の2の賛成がない限り、総選挙には踏み切れないため、たぶん無理であろう。

■保守党議員170名の署名入りの手紙の中身とは?

●170名の署名入り、保守党議員からの手紙

 週末に、保守党議員の半分以上である170人の署名入りの手紙が、メイ首相に届けられた。内容は、「2017年総選挙のマニフェストに従って、長期の期間延長は絶対に止めてください。」というものである。

 保守党が大きく議席を失った2017年解散総選挙。この時の保守党のマニフェストには、「2年間の交渉期間中にブレグジットが決定しなかった場合でも、2019年5月の欧州議会選挙を越えるような長期の延長は、やらない」というものがあったそうだ。

【参考記事】
圧勝するつもりの選挙で過半数割れ!?英総選挙で保守党敗北、英ポンドは急落!

 しかし、最近のメイ首相の言動を見る限り、1年ほどの延長も受け入れる姿勢を見せている。

 それに危機感を抱いた保守党議員達は、IV2(2度目の示唆的投票)が行なわれる4月1日(月)を前にして、改めてメイ首相に釘を刺した形となった。

■ブレグジットに関する、今後のスケジュールは?

 かなり多くの報道を読んだ結果、タイムラインがひとつにまとめられず、2つのパターンを作った。

 最初のものは、4月2日(火)以降に、IV3、あるいはMV3が続くもの。

ブレグジットに関する今後のスケジュール(パターン1)
ブレグジットに関する今後のスケジュール(パターン1)

※筆者作成

 もうひとつのパターンは、IV2と3を続けて行い、候補を絞ってから、今週(4月1日~)、4月4日(木)、5日(金)にMV3と続くものである。

ブレグジットに関する今後のスケジュール(パターン2)
ブレグジットに関する今後のスケジュール(パターン2)

※筆者作成

 以下は、私の独断と偏見で作成したシナリオのフローチャートである。

松崎さんが予想するブレグジットに関する今後のシナリオ
松崎さんが予想するブレグジットに関する今後のシナリオ

※筆者作成

■ユリ・ゲラー氏の超能力でブレグジットを回避?

 スプーン曲げで有名なユリ・ゲラー氏。この人は、イギリスの市民権を持っているイスラエル人である。現在もイスラエル在住であるが、イギリスに住んでいた当時は、メイ首相の選挙区の近くだったようで、同首相と一緒に写した写真があった。

ユリ・ゲラー氏のツイート
ユリ・ゲラー氏のツイート

 先週(3月25日~)、同氏は「超能力でブレグジットを止める」という手紙をメイ首相に届け、それがユダヤ人の新聞に大きく取り上げられたらしい。

 英国の主要各紙は小さい記事を載せていたが、BBCニュースなどでは報道されていない。

 どうして、英国人の対応が冷ややかなのか? いろいろ理由があるだろう。まず最初に頭に浮かんできたのは、英国人がこの期に及び、超能力などというナンセンスなことに時間を割いている余裕がないことが挙げられる。

 もうひとつは、そもそもこの人はイスラエル人であり、その人が英国の国政に口を挟むことを、もしかしたら快く思っていないのかもしれない。

 私もこのニュースが出た日にご近所の方々と立ち話しをし、ユリ・ゲラーさんのニュースを知っているか聞いてみたが、「超能力でどうにかなるものなら、とっくに解決している。イギリス人でもないのに、口を挟むな」という感じであった。

■最新世論調査では、合意なき離脱賛成が全体の3割!

 果たして、国民はどう考えているのか? 最新の世論調査結果をご紹介しよう。

 英国の調査最大手、YouGov社の最新の調査結果は以下のとおり。

「合意なきEU離脱」を、どう思うか?

(1)全体

賛成:33%
反対:46%

全体の3割が、合意なき離脱でも構わないという衝撃的な結果!

 日本人にはなかなか理解に苦しむが、どうして合意なき離脱がここまで受け入れられているのかについては、2016年6月の国民投票で離脱という結果になったので、いかなる離脱の方法でも受け入れることが民主主義を尊重することになるから……と答えている模様。

【参考記事】
緊急特集:EU離脱・英国国民投票まとめ。まさかのEU離脱で世界に激震

(2)保守党支持者

賛成:58%
反対:28%

(3)労働党支持者

賛成:17%
反対:65%

 次に、スカイニュースが実施した世論調査結果

 これは、3月27日(水)に、1005人を対象としたブレグジットの世論調査結果である。

(1)英国は合意なき離脱をしてでも、EUから離脱すべきか?

すべき:35%
すべきでない:44%
わからない:20%

 やはり、ここでも3割以上の人が、合意なき離脱でも構わないと答えている。

(2)英国はEU基本条約50条を一方的に破棄し、EU残留すべき

すべき:37%
すべきでない:41%
わからない:22%

 僅差であるが、「EU残留すべきでない>すべき」という結果へ。

(3)議会で可決し承認されたいかなるブレグジット案でも、最終的には国民投票で真意を問うべき

そう思う:40%
そう思わない:35%
わからない:25%

(4)EU離脱後も、関税同盟に(恒久的に)残留すべき

すべき:34%
すべきでない:35%
わからない:32%

(5)EU離脱後も、関税同盟と単一市場に(恒久的に)残留すべき

すべき:32%
すべきでない:37%
わからない:31%

(4)、(5)がここまで僅差となったことに、私は驚いた。

(6)EU離脱後も、関税同盟に(恒久的に)残留すると同時に、EU規制を受け入れるべき

そう思う:28%
そう思わない:43%
わからない:29%

(7)英国はメイ首相のブレグジット案に従って離脱すべき

すべき:26%
すべきでない:42%
わからない:32%

■ブレグジットに進展がなければ、英ポンドの上値は重い

 ここからの英ポンドについて考える。

 ある大手米系投資銀行が、今後のブレグジットの行く末について以下の予想を立てている。

・ 合意なき離脱となる可能性 15%

・ メイ首相のブレグジット案、あるいは修正案によりEU離脱となる可能性 45%

・ EU基本条約50条の破棄、あるいは2度目の国民投票により残留となる可能性 40%

 これに対し、欧州系銀行の予想は以下のとおりである。

・ 合意なき離脱となる可能性 20%

・ メイ首相のブレグジット案、あるいは修正案によりEU離脱となる可能性 40%

・ EU基本条約50条の破棄、あるいは2度目の国民投票により残留となる可能性 25%

 何が言いたいかというと、米系銀行より欧州系銀行のほうが、「残留の可能性」を低く見ている点である。

 英国に住んでいる私も、残留となる可能性を40%とした米系の予想には驚いた

 もし残留となる可能性が高まるとしたら、解散総選挙により労働党政権となった時であろう。

 さて、ここからの英ポンドであるが、MV3でメイ首相のブレグジット案が可決されるか、IV2/IV3でなんらかのオプションが可決されるまでは、頭の重い展開とならざるを得ないと考えている。

英ポンド/円 週足
英ポンド/円 週足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 週足

 3月27日(水)の最初の「Indicative vote」でもっとも賛成票が高かったのが、保守党でもっとも残留支持者である「オプションJ:クラーク保守党議員案/労働党ベテラン議員案:関税同盟残留」であった。

 8票差で否決となったが、もしIV2/IV3で可決された場合、果たしてメイ首相がこの案に対し、前向きに検討するかが次の鍵となろう。

 保守党の170人が長期の延長に反対していること、そして保守党は「ブレグジット党」であることを考えると、メイ首相がこの案を正式に採用し、EUとの交渉に使うことは、現時点では考えにくい。

 もし、突如として政府が残留支持派の案を受け入れるような姿勢を示せば話は別であるが、そうでなければ、4月10日(水)の臨時EUサミットに向けて、ボラティリティーが高い状態が続き、英ポンドは頭が重い展開が続くと予想する

 万が一、議会での決定内容が悲観一色になり、英ポンド売りが炸裂する場合は、ユーロ/英ポンドでは、チャートにがついている0.8860ポンド台が最初のターゲット

 もし、それも抜けて、さらに英ポンド安が加速するような事態になれば、★★がついている0.8780ポンド/0.8800ポンド台が視野に入ってくるかもしれない。

ユーロ/英ポンド 週足
ユーロ/英ポンド 週足

※筆者作成

(編集担当/ザイFX!・庄司正高)

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