■新たな時代「令和」が到来! そして10連休がやってくる
「令和(れいわ)」
本日(4月1日)、新天皇の即位に伴う2019年5月1日(水)からの元号が、「令和」と発表されましたね。新たな時代の幕開けに向けて、国内の祝賀ムードも一層、高まっていきそうです。
そして、多くの方が待ち望んでいると思われるのが、4月27日(土)から5月6日(月)までの10日間にわたる、超大型の連休でしょう。これは、皇太子さまが天皇に即位される5月1日(水)が祝日と決まり(※)、その前後の平日が祝日法に基づいて「国民の休日」扱いになったことによるものです。
(※2019年限りの特別措置。即位礼正殿の儀が行われる10月22日(火)も2019年に限り祝日となる)
祝日法が施行された1948年以降で最長となる今回の10連休中に、旅行や帰省などを計画している方もたくさんいると思いますが、トレーダーにとって気がかりなのは、やはり、「10連休中のマーケットがどうなるのか?」ではないでしょうか。
ザイFX!では先日、10連休中は日本の証券取引所と商品取引所のすべてが10日連続の休業日となり、日経平均が算出されず、大阪取引所の日経225先物も取引できないということをお伝えする記事を公開しました。

しかし、たとえ日本が祝日でも、FXは土曜日と日曜日を除けば、ほぼ24時間、休みなくマーケットが動き続けていることは、多くの方がご存知だと思います。それ以外で取引できないときは、元日(1月1日)と、クリスマス(12月25日)の海外市場ぐらいです。
【参考記事】
●FX初心者のための基礎知識入門:FXの取引のしくみ
ですから、10連休とはいえ、4月29日(月)から5月3日(金)までの連続5日間と、週末を挟んで迎える5月6日(月)の祝日も、ほとんどのFX会社で通常どおりに取引できることが見込まれています。普段なら仕事などで思うようにできない日中の時間帯のトレードに、思う存分、取り組めるチャンスと言えるかもしれません。
■ゴールデンウィークは円高になりやすいって本当?
ところで、日本の祝日は円高になりやすく、特に祝日が連続するゴールデンウィーク(GW)中は、米ドル/円やクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)が大きく下落することが多いという話を聞いたことがある方は、少なからずいるのではないでしょうか?
「セル・イン・メイ(Sell in May)」(※)の期間と重なるため、ゴールデンウィークは時期的にリスク回避で円高になりやすかったり、東京勢不在の流動性が低下した時間帯に、海外の投機筋が日本のFXトレーダーの米ドル/円やクロス円の買いポジションを狙い撃ちするトレードを仕掛けることで、急激な円高に見舞われる可能性などが、理由として考えられているようです。でも、本当にゴールデンウィーク中は円高が進むのでしょうか…?
そこで、来るべき10連休を前に、米ドル/円で「ゴールデンウィーク中は円高になりやすい」説を検証してみることにしました。
もし本当なら、ゴールデンウィークまでにポジションを整理しておくなど事前対策ができますし、そうでなくても、何かしらの傾向がつかめれば、トレードに活かすことができるかもしれません。
(※「セル・イン・メイ(Sell in May)」とは、元々は米国株に関する相場格言で「5月に株を売れ」という意味。5月に株が下がりやすい傾向があるためできた言葉。そこから少し意味が転じて、「5月にリスク資産が急落すること自体」を指して使われることがある)
■「日本の祝日は円高になりやすい」説は本当か?
過去のゴールデンウィーク中の値動きを検証する前に、そもそも「日本の祝日は円高になりやすい」という見方もあるので、それが本当かどうか、まずはGMOクリック証券が口座開設者向けに提供している1分足のヒストリカルデータ(※)を使って、入手できる2007年以降の祝日の日すべての、米ドル/円の値動きを調べてみました。ここからも、何かしらのヒントが得られるかもしれません。
(※2015年までは旧[FXネオ]、2016年以降は[FXネオ]のデータ。BIDの値を採用。取得できなかったごく一部のデータに関しては、BloombergからEBS(電子ブローキング・システム)の値を取得して補完)
対象となった日は、2007年以降で178日ありました(2019年3月21日(木)の春分の日まで)。その多くは日本が祝日で、かつFXを取引できた日になりますが、銀行法で国内の金融機関が休業日となる、12月31日から翌年1月3日(ただし1月1日は全市場が休場のため除外)までの期間も調査対象に含めました。
便宜上、東京タイムをその日の取引開始(※)から日本時間15時までとすると、全178日のうち、東京タイム中に円高(米ドル/円が下落)になった日は94回、円安(米ドル/円が上昇)になった日は84回。単純に円高になったか円安になったかを調べた結果では、祝日はやや、円高になった日が多かったものの、どちらかに大きく偏ってはいなかったことがわかります。
サンプル数もそれほど多くないため、統計的な検定を用いて調べてみても、偶然とは考えにくい有意差はありませんでした。
(※GMOクリック証券[FXネオ]の取引開始時刻は、米国が標準時間の期間中は7時、サマータイム期間中は6時。ただし、週明け月曜日の取引開始時刻は通年で7時)

※主なデータ参照元…GMOクリック証券
※米ドル/円レートの小数点第3位を四捨五入して算出
値動き自体を調べると、始値(取引開始時)から終値(日本時間15時時点)までの値幅は、円高のときは平均21銭、円安のときは平均15銭。また、東京タイム中の高値から安値までの変動幅は、円高のときが平均43銭、円安のときが平均34銭でした。
あくまでも平均なので、一概には言えませんが、この結果からは円安のときよりも円高のときの方が、値動きが大きめになりがちな印象を、若干ながら受けます。もしかしたら、このあたりが祝日の日は円高になりやすいというイメージを市場参加者に与えている可能性があるのかもしれません…。
なお、もっとも円高になったのは、多くの方の記憶に新しい、今年、2019年1月3日(木)のフラッシュ・クラッシュのときでした。この日の始値から終値(日本時間15時)までの値幅は1.91円、高値から安値までの変動幅は3.04円。次が2016年のゴールデンウィーク中となる4月29日(金)で、このときは0.77円の円高が進み、高値から安値までの変動幅は1.13円ありました。
【参考記事】
●フラッシュ・クラッシュで米ドル/円が暴落! 株の下落を伴えば、100円割れの可能性も!?(1月7日、西原宏一&大橋ひろこ)
●フラッシュ・クラッシュの真犯人はトルコリラ!? クラッシュ時もスプレッドが優秀なFX会社は?
●フラッシュクラッシュのロスカット等未収金は過去3番目の規模! 25%がくりっく365から発生
■円高になっても、3回に1回は値動きが反転!?
次に、東京タイムだけでなく、日本が祝日だった日の取引開始からその日のNYクローズまでの、まるまる1日の値動きを調べてみると、全178日のうち、円高になった日は83回、円安になった日は95回と、円安になった日の方が多かったという結果になりました。

※主なデータ参照元…GMOクリック証券
※米ドル/円レートの小数点第3位を四捨五入して算出
また、始値(取引開始時)と終値(NYクローズ)の値幅は、円高のときは平均で39銭、円安のときは平均42銭。1日の高値から安値までの変動幅は、円高のときが平均83銭、円安のときは平均90銭となり、1日を通してみると、平均では円高よりも円安のときの方が、若干ですが、値動きが少し大きかったいうことがわかりました。
もう少し掘り下げてみると、東京タイムで円高だった94回中、その日の取引も円高で終えた日は59回(62.77%)で、東京タイムは円高だったけれど、円安で1日の取引を終えた日は35回(37.23%)。およそ3回に1回は、東京タイムでの値動きが否定され、円安に反転していたということがわかりました。
同じように東京タイムで円安だった日を調べてみると、84回中、そのまま円安でその日の取引を終えた日は60回(約71.43%)、東京タイムは円安だったけれど、1日の取引を円高で終えた日は24回(約28.57%)ありました。

※主なデータ参照元…GMOクリック証券
※米ドル/円レートの小数点第3位を四捨五入して算出
円高のときも円安のときも、基本的には東京タイムのトレンドが、そのあとの海外市場でも続く可能性の方が高いですが、そうでない日も一定の割合であるということがわかります。
東京タイムでは円高だったけれど、円安に転じてその日の取引が終了した日の何回かは、東京タイムの流動性の薄い時間帯に、海外の投機筋に日本のFXトレーダーの米ドル/円やクロス円の買いポジションが狙い撃ちされたことも、もしかしたらあったのかもしれません。
そして、日本のFXトレーダーの損失を確定するストップ注文や、強制ロスカットが執行されて、為替レートが下がったあと、投機筋が自らの売りポジションを買い戻して利益確定を行うことによって、海外市場にかけて為替レートがジリジリと上昇していく…。あくまでも記者個人の推測ですが、そんなシナリオも、描けるのではないでしょうか?
■週明けの窓開けも考慮してみると…
もう1つ、日本の祝日は月曜日に多いということを踏まえた検証を行ってみます。なぜ、日本の祝日が月曜日に多いのかは、国民の祝日の一部を、特定の週の月曜日に移動させる「ハッピーマンデー制度」が影響しています。2000年からは成人の日(1月第2月曜日)と体育の日(10月第2月曜日)が、2002年からは海の日(7月第3月曜日)と敬老の日(9月第3月曜日)が対象になっています。
月曜日に出現することがあるものと言えば、そう、チャートの「窓」です。これは、前週末のNYクローズ時点の為替レートと、週明け月曜日の取引開始時点の為替レートに差があることで生じる現象です(為替レートが急激に動いたときは、平日の取引時間中にも短い時間軸のチャートで窓が出現することはあります)。
【参考記事】
●FX初心者のための基礎知識入門:2本のローソク足の組み合わせ1
●FX初心者のための基礎知識入門:酒田五法と複数足2(三川/三空)
週末に為替相場を動かすニュースなどが出た場合、前週末の終値と月曜日の始値に違いが生じる可能性がありますよね。もし、月曜日が祝日で、その日の東京タイム中には為替レートがそれほど動いていなかったとしても、取引開始時に窓を開けていて、前週末と比較すると値動きがあったということも、考えられるからです。
今回(2019年)の10連休では、4月29日と5月6日が月曜日となりますので、それぞれ前の週の終値から離れて取引が始まる可能性だって、あるかもしれません。
【参考記事】
●月曜日の窓埋めトレードを狙ってひと儲け! 午前3時からトレードすればニ度オイシイ…!?
月曜日に祝日があった日と、原則として年初の取引開始日となる1月2日(土日などで休場の場合は翌営業日が対象)も加えると、期間中(2007年~)に調査の対象となった日は95回ありました。
結論を簡単にお伝えすると、その全95回のうち、10銭以上の窓が出現したのは円高方向と円安方向の合計で39回(40.05%)。月曜日で日本が祝日の日の3回に1回以上は、10銭を超える窓が出現するということです。

※主なデータ参照元…GMOクリック証券
※米ドル/円レートの小数点第3位を四捨五入して算出
10銭以上の窓開け39回中、前営業日の終値よりも当日の始値が安い「下窓」を開けた日(=円高)は19回、逆に前営業日の終値よりも当日の始値が高い「上窓」を開けた日(=円安)は20回でした。割合的にもほとんど変わらず、祝日は円高になりやすいという説が、正しいとは言い切れないと思います。
ちなみに、50銭以上の大きめの窓を開けたのは、円高時と円安時で、ともに2回ずつありますが、いずれも今回の検証のメインとなるゴールデンウィーク中に起こったものではありませんでした。一番大きかった窓は、2008年9月15日(月)に開けた2.03円の下窓(円高)です。世界的な金融危機の引き金となった、米投資銀行リーマン・ブラザーズ・ホールディングスの破綻観測が、週末に伝わったことが材料になっていました。
(次ページでは、過去20年のゴールデンウィークの値動きを徹底検証!)
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