■米大統領選直前までは、米ドル/円を買い!
11月9日(日本時間)の米大統領選の開票結果を挟んで急変している為替市場。米ドル/円は9月、100円割れ寸前とアベノミクス瓦解の危機にあったのに、11月になってみたら110~111円台へ急上昇している。そんな相場で巧みなトレードを見せてくれたのがシティバンクでチーフディーラーを務めていた西原宏一さんだ。
先に結論を明かしておくと、9月末の100円割れの円高予想の中で「買い」に入り、その後、米大統領選相場では、クリントン優勢の予想の中では、しばらくは円安と予想し、買い、その後、結果が出る前には手じまい、トランプ優勢となると、市場の動きにいち早く反応して、米ドル/円を買っていった。
特にトランプ相場とも言われる、予想外の米ドル/円急上昇の中で、早めに「買い」に転換したことは特筆すべきことだ。
どんなトレードだったのか、西原さんが配信しているメルマガ「FXトレード戦略指令!」で事実関係を追って行こう。まずは米大統領選前の約1カ月前、9月26日のメルマガから見てみよう――。
FXトレード戦略指令!:2016年9月26日の配信メールから抜粋
「ポイントにあげた100.00円を割り込めなかったため、100円台前半で、ドル円をロングにしています。今のところドル円が明確に上がると考えているわけではありませんが、ストップは99.90円をタイトにおいているので打診買いのみ」

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
■取り入れたい! リスク限定トレード術
このときのファンダメンタルズを確認しておくと、前週に日米では中央銀行会合を終えたばかり。FOMC(米連邦公開市場委員会)の金利据え置きは既定路線だったけど、日本銀行は「イールドカーブコントロール」と「オーバーシュート型コミットメント」の新たな政策を打ち出してきた。
日銀の政策がこれまでになかったものだったため、世間的な判断は「実質的な金融緩和の縮小」という評価が一般的だった。
西原さんはこの時、米ドル/円が100円割れしなかった事実を見て、ザイFX!で連載している「FX&コモディティ(商品) 今週の作戦会議」で「もしも本当にテーパリング(金融緩和の縮小)ならば10円とは言わないまでも、もっと急落していい」と、一般的な100円を割れる円高になるのでは、という見方とは逆に買っていった。
【参考記事】
●日銀会合への市場の評価は真っ二つ! 米ドル/円はこのまま反発しそうな感じも…
注目してほしいのがストップ(損切り設定)の位置である99.90円。このまま上昇トレンドへ転換するなら上値余地は大。一方。ストップは数十pipsの幅しかないから、もし下がってしまっても打撃は小。リスクとリターンのバランスに優れたトレードだ。

■デイトレの目安は移動平均線や公的機関のオーダー
円高予想が圧倒的な中、買っていった西原さん。するとチャートはスルスル上昇していく。ここから西原さんは100円台前半で買ったメインの買いポジションをキープしながら、「一部を利益確定→押し目で買い増し」を繰り返していく。
FXトレード戦略指令!:2016年9月30日の配信メールから抜粋
「21日線が位置しているレベルで一部縮小したものの、ドル円のロングは継続。100.80~101.00円レベルで下げ渋れば、101円台後半で減らしたロングを買い戻す予定。ストップは同じ」
たとえば、上記のような感じ。
途中、雇用統計でいったん手仕舞った場面はあったものの、すぐさま買いポジションを構築。チャート分析や公的機関などの大口オーダーを参考にしながら、利益確定&押し目での買い増しを繰り返し、コアロング(※)のストップの位置も切り上げていった。
(※西原さんはポジションをコア=メインに当たる部分と、打診買い的なポジションに分けている。ここではそのメインの買いポジションのこと)
■米大統領選当日、「セル・ザ・ファクト」で手じまい推奨!
そうやって迎えた米大統領選の開票日。朝8時56分に届いたのが、このメールだ。
FXトレード戦略指令!:2016年11月9日の配信メールから抜粋
「ヒラリー優勢を見込んで、ドル円は105円台を回復。ここまでコアロングを引っ張ってきましたが、105.15円でドル円のコアロングを全てスクエアに。この後は、トランプ優勢はもとより、ヒラリー優勢でもセル・ザ・ファクトとなり、どちらかというと投票結果次第の超短期売買に限って売り目線」
朝9時はまだトランプ優勢が伝わる前。「ヒラリー大統領」への期待で105円台に乗せたところで、100円台前半から引っ張ってきた買いポジションをスクウェア(すべて決済)に。5円幅の利益となった。
ほぼ天井での利益確定の背景にあったのは、「セル・ザ・ファクト」(事実で売り)。ヒラリー当選への期待で買われていたポジションが、実際にヒラリーの当選が判明すれば決済されて、相場は下がるだろう、との分析だ。
西原さんのメルマガを購読していれば、100円から105円までの上昇トレンド第一弾は余裕で取れていたはず。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
11月9日午前(日本時間)にトランプ優勢が明らかになると…
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