英ポンドといえば英ポンド/円? でも、西原さん、松崎さんの注目はユーロ/英ポンド。日本人にはなじみの薄い通貨ペアだけど、2人の話を聞いていると、かなりおもしろそう。大きなトレンドは英ポンド安!
■値動きの少ない米ドル/円は実は「プロ向け」
——おふたりが取引する通貨ペアは、やはり米ドル/円が中心なんですか?
西原 今回のように介入があって盛り上がればやりますけど、そうじゃなければやらない。米ドル/円は「いつ見ても84円」みたいに動かないですから。
オプションを絡めれば別ですが、逆にオプションを絡めないと儲けづらいプロ向けのマーケットになっちゃってる気がします。動かないマーケットでは、どうにもやりようがない。値動きが少ないから、本当の初心者には低リスクでいいかもしれないですけど。
松崎 ロンドンだと、今は米ドル/円よりもユーロ/円のほうが取引が多い。イギリスのFXブローカーは日本のようにサービスが良くないですから、英ポンド/円はスプレッドが8銭くらいある。それがユーロ/円なら3銭ほどなので、私も含めてユーロ/円に逃げています。
■英ポンド/米ドルは動き出すと足が速い!
西原 英ポンド/円ってマーケットが小さいよね。
松崎 ポンドをやるんだったら英ポンド/円よりユーロ/英ポンドですね。あとは英ポンド/米ドル。ロンドン時間に「あ、落ちてきた」と思うと、結構大きく落ちるので、値動きあるときなら、いちばん儲けやすいのは英ポンド/米ドル。
西原 何かきっかけがあって動き出す?
松崎 動かないときは米ドル/円のように1日50ポイントぐらいしか動かないですけど、何かきっかけがあると、特に経済指標発表時なんですけど、「あ、落ちてきた」と思ったところから、さらに50~80ポイントぐらい平気で動く。やりやすいですね。
西原 短期だと英ポンド/米ドルなんだ。中長期だと?
松崎 ユーロ/英ポンドがいいですね。
西原 やっと今日の本題だね(笑)。
■「ちょっとご飯」で国境を越えるイギリス人
松崎 ユーロ/英ポンドって、イギリス人の生活に密着しているんですよ。日本での米ドル/円以上に。というのも、パリの中華料理はロンドンの中華料理よりも、ずっとおいしい。イギリスの料理はすごくまずいですからね。
だから、「ちょっと中華食べようか」と、ユーロスター(※)やクルマに乗って、すぐパリへ行ってしまう。うちからだとドア・ツー・ドアで2時間ぐらいだもん。そして、パリに行けば通貨はユーロになるから、ユーロ/英ポンドという通貨ペアはすごく生活に密着しているんです。
西原 ボクが以前住んでいたシンガポールもそれに近いものがあった。すぐ隣のマレーシアのほうがガソリンが安いから、「ちょっと入れてくる」ってガソリンのためだけに国境をまたいじゃう。日本にはない感覚ですよね。
ボクがロンドンにいたころはユーロがなくて、フランスはフレンチフラン、スペインはスパニッシュペセタ、ポルトガルはポルトガルエスクードだった。それぞれ文化も違うけど、ロンドンにいるとどこも結構身近でしたね。休暇でちょっと行ったりね。
※(「ユーロスター」とは最高時速300kmの国際高速列車。英仏海峡トンネルを通って、イギリスのロンドンと、フランスのパリやベルギーのブリュッセルなどを結んでいる)
西原 そもそも何でスペインなんだろう?
松崎 天気。スペインって1年中、お日さまが出ていて、年間の晴天日数が300日。だけど、イギリスなんてそれが7日くらいしかない。10月だと午後3時を過ぎれば、ライトをつけないとクルマの運転もできないくらい。
西原 確かに冬のイギリスに行くと気持ちが暗くなってくる(笑)。
松崎 イギリスはお酒の楽しみがないとやっていけない国なんです(笑)。だから、お金持ちやリタイアした人たちは移住したがる。いちばん多いのは同じ英語圏のオーストラリアなんですけど、ヨーロッパの中だと断トツでスペイン。
——晴天が少ない割りに松崎さんはよく焼けてますが…。
松崎 これは地黒なんです(笑)。でも、イギリスだと、お金持ちほど色が黒いんですよ。休暇でバカンスに行けることの裏返しで、色黒がステータス。うちの子の学校でも色が黒い子のほうが人気がある。勉強もせずに、いかに自分を黒く見せるかの競い合い。日本の「美白」とはまったく逆の発想です。
西原 で、スペインに移住するイギリス人が急増して、ユーロ/英ポンドは2005年に0.7ポンドぐらいだったのが2008年には0.98ポンドまで上がったんだよね。
松崎 ところがスペインの住宅価格がリーマンショック以降は逆に70%近くダウンした。スペインに家を買って移住した人たちが、住宅価格は暴落するし、失業率は20%近くで仕事もないしで、イギリスに帰ろうとするようになったんです。
だけど、資産であるスペインに買った住宅は暴落しているし、売ったとしてもユーロの価値が急落してきた。結局、帰るに帰れない人たちが増えているんですね。
■来年5月に英ポンド暴落の気配!?
松崎 ユーロ/英ポンドの値動きとしては、いったん下に調整が入ると見ています。0.8ポンドを抜けるかどうかの調整が入って、そのあとはパリティ(1ユーロ=1ポンド)を抜けて上がっていくユーロ高・英ポンド安の動き。
西原 それはなぜ?
松崎 イギリスはこれからガツンと悪くなると思うから。今は各省庁が予算削減に動いています。普通の省庁で25%、医療・教育分野は削りにくいので10%、厳しいところだと40%といわれる予算カットを今後3、4年でやっていきます。
雇用の確保か財政再建かというところで、現政権は緊縮財政を重視しているんです。それに現政権は保守党と自由民主党の連立政権ですが、自由民主党がどこまで今の路線についていくのか。そう考えると、財政危機と政治危機が同時進行という可能性が大きいんですね。
西原 来年には国民投票もあるんでしょ。
松崎 そう。小選挙区制から比例代表制に変えるための国民投票があるんですけど、それが現在保守党と連立を組んでいる自由民主党・クレッグ党首に対する国民投票になる可能性もある。
今のところ、投票日程が変わらなければ来年の5月5日あたりの投票になりますが、その前後で政治的な混乱の可能性もあり、とみています。
西原 そうなると英ポンド安が進む…。
■英ポンドが売られ、米ドルが売られてユーロ高へ
松崎 私の手帳によれば英ポンドは落ちる予定になってます(笑)。そのときにアメリカがどのくらいダメになっているか、ユーロ加盟国が財政的にどの程度立ち直っているかにもよりますが、為替は2つの通貨の交換取引なので米ドルが売られる、英ポンドも売られるとなると、その反対でユーロが買われる予定です。
まあ、ユーロが立ち直っているということが大前提ですが…。
西原 それでユーロ/英ポンドもパリティを目指していく、と。日本の個人投資家と話していると、ユーロも英ポンドも欧州通貨として一緒くたにしがちだけど、まったく違うんだよね。
松崎 イギリスは財政も金融も自分たちで決めたいからこそ、ユーロを使っていないし、そこはまったく別モノとして考えないと、すごく大きな間違いを起こすかもしれないですね。
(取材・文/高城泰(ミドルマン) 撮影/和田佳久)
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