元シティバンクのチーフディーラー西原宏一さんと、「ロンドンFX」こと松崎美子さんとの対談は、次々に話題が転換して、話は為替介入があったときの銀行の様子からイギリス経済の現状、そしてロンドンのFX事情へ。イギリス人ってホント、ギャンブル好きなのね……。
■日銀はテクニカル派? 一目均衡表を気にしている!?
西原 美子さんはロンドンでずっと働いていたんだよね。ボクもそうだったけど、世界的な金融機関でも、だいたいロンドン支店だと為替部門に日本人はひとりだよね。
松崎 こうやって政府・日銀の介入が入ったりすると、日本人はひとりだけでしょ。私に顧客からいろいろ質問がきて、私のひと言だけで顧客が動く。日本人冥利に尽きるというか……。
西原 介入が入ると、みんな朝早く出社するしね。
松崎 普段は6時半に出社するのに5時の時点で全員揃う。「日本で何が起こってるんだ、日本人に聞いてみろ!」って。何兆円という資金が動くんで、間違えたこと、大げさなことをいうと「えらいこっちゃ」ですよ。
松崎 介入後は市場の反応の聞き取りを兼ねて、日銀から電話がくるんです。
西原 そりゃあ、日銀も気にするよね。
松崎 「海外の顧客には完全にナメられてますよ」とか、正直に答えることもありました。介入後、新たに入ってきた顧客のオーダー状況も名前や出所を伏せて話し合ったりも。「今回のドル買い介入を絶好のドル売りとみなした売りオーダーばかりですよ!」とか(笑)
西原 そんな時、日銀はどう反応するの?
松崎 「やっぱり……」という沈黙(笑)。それはそうですよね。介入実施前には、何度も何度も聞き取りの電話がくるんです。「どのくらいロングが貯まってますか」とか、「チャート的にどこを抜けたらオダブツですか」とか。
それを私以外にも聞いて入念に準備した上で介入してくるんですから、効いているかどうか、ものすごく気にしますよね。
西原 チャートのポイントとかも全部聞いてくるよね。「一目の雲がここにあるから」とか。
松崎 今回の介入に関しては、ロンドンでもみんな神経質になっていると思いますよ。今後も断続的に介入するのかどうか。ただ、最終的には、全体的な流れが米ドル売りなので、米ドル/円が下がるのは時間の問題だと思うんですけど。
■各国政府は「通貨安競争」へ!
西原 9月に発表されたドイツの経済指標がすごく良かったんです。今年、ユーロが大幅に下落したおかげで、ドイツの景気がものすごく良くなっている。「輸出を振興している国には通貨安が良薬になる」ということを、あらためて証明しちゃったんですよね。
オバマさんも輸出を振興して景気を浮揚させようとしているので、米ドル安に導こうとしているのは明らかです。ただ、それを明言すると、暴落しちゃうから言わないですけど。
——英ポンドも一時期と比べるとずいぶん安くなりましたよね。2年ぐらい前は250円をつけたこともあったのに、今はそこから半値に近い状況です。
松崎 イギリスもポンド安を喜んでいますよ。今、金融立国から製造業立国へと鞍替えしようとしているので。
西原 イギリスといえば、金融なのにね。
松崎 銀行員のボーナスに50%の特別税をかけたり、取れるところからは取るという姿勢なので、金融業がずいぶん流出しています。
■金融立国・イギリスから金融業が流出している!
松崎 ヘッジファンドもスイスに動いていますし。何百年とかけて築いてきた金融立国という看板がそげつつあることに、私は恐怖感を抱いています。
金融業界の共通語は英語ですが、スイス人だって英語はペラペラですから。フランスのサルコジさんも、ロンドンにある金融機関に対して「特別法人税を適用するから、パリにきてくれ」というアプローチをかけているようです。
西原 イギリスから金融業が流出しちゃうと……。
松崎 そうすると、残る産業がないんですよ。金融立国から製造業立国にって、半年や1年で変えられるものではないし…。政府は自分で自分の首を絞めているんじゃないかなと思います。かといってイギリスがユーロに加盟することも、まずない。
■イギリス人の注目は日本、中国よりもインド!
西原 日本の民主党の代表選挙はロンドンでも注目されてた?
松崎 あんまりされてなかったですね。
ただ、ちょうど、私が日本に来る直前の『エコノミスト』誌で小沢さんが紹介されてましたね。「The Destroyer」って。「小沢さんが代表になれば国会空転は避けられない。経済的な余裕がないはずなのに日本は何をやってるんだ」という論調で。
西原 ボクはシンガポールに友人のヘッジファンドがあるんだけど、アジアだと民主党の代表選挙がけっこう話題になっていましたよ。アジア諸国だと、日本の次の総理が誰になるのか、関心は高い。でも、ロンドンやニューヨークだとあんまり…という感じですよね。
——欧米の人たちがアジアの中で注目している国というと、日本よりやっぱり中国なんでしょうか?
松崎 イギリスがアジアで注目しているのは、中国よりもインド。今のキャメロン首相は、中国は仲間というより脅威とみなしているようで(笑)。
イギリスでは今、財政赤字を減らすために歳出削減が議論になっているんですが、そこで核開発を今後どうするかということが議題に上ったんです。「核開発なんてするより教育や医療に回せ!」と言われたキャメロン首相が「中国がいる限り、核開発をやめられるか!」って(笑)。
ブラウン前首相のほうが中国を向いていましたよね。今、ロンドンの目線は完全に中国よりインド。
■イギリス人のFX=「スプレッドベット」って?
——ロンドンでは、個人でFXをやっている人は多いんですか?
松崎 日本でいうFX、外国為替証拠金取引はあまり盛んではないですね。ただ、その代わりに「スプレッドベット」というのがあります。
「選挙で勝つのは保守党か、労働党か」といったベッティング、賭けの一種です。すごい細かいものまであって「予算案の演説の何分目で財務相は水を飲むか」とか(笑)。そういうお店が日本の銀行と同じくらいの頻度で街中にあって、オンラインでもできる。その中のひとつとして為替もあるんです。
西原 日本のFXとはどこが違うの?
松崎 レバレッジも効くし、スワップもあるし、内容的にはほとんど一緒。レートを指定して、そこから1銭動いたときの損益を自分で指定してやるんです。「1銭動いたら1ポンド」「1銭動いたら10ポンド」といった感じ。
ただ、スプレッドベットだと無税になる。バクチだから(笑)。日本でいうFXだと20%以上の税金がかかるから、その違いが大きいんです。
西原 バクチは言い過ぎだと思うけど(笑)。でも、博才というかギャンブルの上手・下手は為替の取引と多少関係があると思う。ボクもディーラーになるときの面接で聞かれたよ。「ポーカーは好きか」「麻雀はやるか」って。
(「元ディーラー西原宏一×松崎美子対談(3) 注目通貨ペア・ユーロ/ポンドの行方は?」へつづく)
(取材・文/高城泰(ミドルマン) 撮影/和田佳久)
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