(この対談の収録日時は日本時間の2010年9月15日14時~でした)
■やっぱり気になる為替介入の話から
——おふたりとも今、ここにいて大丈夫なんですか?
松崎 今日みたいなのは血が騒ぐ(笑)。2004年以来の介入ですし。
西原 さきほど、野田財務相が市場介入を開始したと発言したばかりですよね。まず、85円台までは米ドル/円を押し上げてくると思いますが、その後、どの程度までさらに押し上げてくるかを見ているところですので、大丈夫です(と言いながら視線は下へ。持参したパソコンでトレーダーとチャットしているご様子!?)。
——介入の甲斐なく、中期では円高・米ドル安継続の見通しの人が多いようですが…。
西原 僕も中期ではそうですね。アメリカの中間選挙に向けて、為替市場全体が今は米ドル安に傾きつつあるんですよ。オバマさんも公言はしていないけど、米ドル安を放任する姿勢だし。
米ドル安容認の目的はアメリカの輸出産業の振興です。それでも日本が介入できたということは、対アメリカで何らかの合意がとれたんでしょう。また、介入の目的ですが、9月末は本邦企業の上半期決算ですから、日本の輸出企業に猶予を与えるための介入ではないかと思います。
——ロンドンの金融街といえばシティ。シティでも日本の介入は話題になっていたんですか?
松崎 みんな神経質になっていましたよ。今日にしても、このあとも断続的に介入があるのか、1回ポッキリで終わるのか、気にしていると思います。ただ、1回ポッキリで終わることはないと思いますが…。いずれにせよ、最終的にはみんな米ドルを売ってくると思うので、米ドル/円が下がるのは時間の問題じゃないですか。
■気になるプロのポジションは?
——西原さんはポジションをとっているんですか?
西原 先ほどまでは、短期で米ドル/円をロングにしていました。ただ、その後は今回の介入の規模を確認してから動きたい。中期の相場観は、ドルベア(米ドルの下落)のままですが。
介入初日なので本日は少なくとも85円台までは、押し上げてくると思いますが、問題はその後。
先ほどもちょっと触れましたが、85円台は介入を想定してオプションを組んでいたヘッジファンドを中心に海外勢が米ドル売りを開始してくるはずです。それに対して当局が、85円台以上に米ドル/円を押し上げてくるのかどうかを本日の介入の規模で確認したいと考えています。
そして、今のところは2通りの戦略を考えているんですよ。
(1)介入の規模が巨額であれば、今月末まで米ドルロングでいく。
(2)海外勢の米ドル売りで、あっさり85.00円を割ってくるようなら、中期の相場観どおり、米ドルショート(米ドル売り)に戻す
このどちらのシナリオにするのかを、本日の市場、特にNY市場の動きで決めようと考えています。NY市場では、介入が入ることを想定していたヘッジファンドが米ドル/円を売ってくる可能性が濃厚ですので。
——ヘッジファンドってドライなんですね。
西原 協調介入なら別ですが、今回は単独介入ですよね。今年はSNB(スイスの中央銀行)も単独で介入しましたけど、800億スイスフランを注ぎ込んだのに負けて、1兆円を超える損失が出ています。
介入を開始して全然効果がないというわけではないんです。ただ、時間が経つにつれ、単独介入のみだと、効果がなくなることは確かですね。
松崎 介入効果で上がっても、上値のメドは87~88円、正直90円は難しいと思っています。日足で抵抗線を引くと、ちょうどそのくらいのところに来るんですよ(下のチャート参照)。
西原 ボクも90円には乗らないと思う。事業法人の友人には87~89円では、米ドルを売っておいたほうがいいと言っておきました。
■米ドル/円は79.75円を果たして割れるのか?
——介入の効果は一時的で、再び円の史上最高値(79.75円)更新へ、という流れですか?
西原 繰り返しになりますが、アメリカでは11月に中間選挙があるので、選挙対策のために米ドル安を容認するかなと。米ドル/スイスフランなんてパリティ(※)を割っちゃったし、ユーロ/米ドルも1.3ドルを超えてきました。
そうすると、米ドル/円だけ米ドル高なのはおかしいので、いずれ落ちると思います。ただ、本日、仙谷由人官房長官が「82円が防衛ライン」と、うっかりメディアに発言してしまったので、当面のポイントはそこでしょう。
松崎 私も米ドル安の見通しは一緒です。ただ、年内に79.75円割れはないと思っています。いずれ割れるだろうし、割れたらズドン! と60~65円まで行くでしょうけど。それは2012年とか、もう少し先。
西原 ボクは年内のメドは80円。円の市場最高値の手前あたりまで行く可能性があるかな? と思っています。ただ、あくまで円高というより、米ドル安ですね。
(※「パリティ」とは通貨と通貨の交換比率が等しくなること。この場合は1ドル=1スイスフラン)
■「おまえら、なめんなよ!」の意地から介入へ?
——民主党の代表選挙翌日に介入というタイミング。これについてはどう見ますか?
西原 マーケットの「小沢さん=強行介入。菅さん=思い切った押し上げ介入はできない」というコンセンサスの中で、菅総理が再任。この結果を受け、米ドル/円は82円台に突入しました。そこで介入したというタイミングは効果的だと思います。
マーケットでは、もし、介入をやるのであれば、「ちゃんと円高対策してますよ」と代表選の前にアピールする意味で行うのではないか、という意見が多数派でした。ところが、選挙前はまったく動かず、再任が決まった直後に介入した。このタイミングはサプライズであり、効果的だったと思います。
——1ドル83円を割ったところでの介入でしたが…
西原 先ほども触れましたが、仙石さんから「82円は防衛ラインである」という発言(※)がありました。今日の介入はその発言どおり行われたということなのでしょう。ただ、基本的には「特定のレベル」は言わない方がいいんです。言っちゃうと、82円まで攻められちゃうから。
ここ数年、米ドル/円は値動きが少ないので、テーマになりづらかったんですね。ただ、「介入」っていうキーワードがあると、相場が大きく動く傾向があるので、普段、米ドル/円をトレードしないファンドも参加する傾向がある。で、介入があって上がったところを売りで攻めていく。
(※みんなの党の渡辺喜美代表も「官房長官は82円がラインだみたいにバカなこと言っちゃう。私が投機筋だったら必ず狙う。本当にバカだ」と痛烈批判した)
——松崎さんは介入の現場に何度も立ち会っていますよね。
松崎 日本が介入するときは普通は東京市場でやるんですが、意表を突くことも。NY市場が閉まったあとのオーストラリア市場で介入したことが一度あります。そのときは市場がものすごく薄いから、ちょっと介入しただけですごく動いた。今回はどんな方針でやるのか、今日は1日見ていないと……。今、対談してていいのかな(笑)。
(「元ディーラー西原宏一×松崎美子対談(2) ロンドンっ子はギャンブル感覚でFX!?」へつづく)
(取材・文/高城泰(ミドルマン) 撮影/和田佳久)
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