米ドル/円急上昇! 為替のプロトレーダーに従えば勝てたのか?
突然始まった米ドル/円の上昇トレンド。小さな値動きが続いたあとだったため、意表を突かれて買い逃してしまった人もいるのでは?
個人投資家の動向を示す指標を見ると、売り向かっている人も多いようだ。
「あのとき買っておけば……!」と後悔している人もいるだろう。ではプロのトレーダーは儲かっていたのだろうか?
ゴールドマンサックス出身の志摩力男さん、シティバンク出身の西原宏一さん、それに世界的なトレード大会で日本人初優勝を果たしたバカラ村さんの3人がどんなトレードを行なっていたのかを振り返りながら、その特徴を見ていこう。
【参考コンテンツ】
●志摩力男のグローバルFXトレード!
●西原宏一のトレード戦略指令!
●バカラ村のFXトレード日報!
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
政治イベントで2人のプロトレーダーは米ドル/円ロング
9月28日(火)に米ドル/円を買ったのは西原さんだ。中国の不動産デベロッパー、恒大集団(エバーグランデ)のデフォルト騒動、原油や天然ガスなど資源価格の高騰、米国の利上げ――さまざまな材料が交錯していた時期だった。
西原宏一×ザイFX!トレード戦略指令!
2021年9月28日(火) 17:44の配信メール
明日の自民党総裁選を控え、高市さん優勢の声も大きくなってきています。結果はどうあれ、総裁選に向け111.25円で0.3、ドル円のロングを追加しました。Stopは109.80円割れ
西原さんが解説していたとおり、日本では2日後に迫った自民党の総裁選挙が話題となっていた。この前日には志摩さんも米ドル/円を買っていた。
志摩力男のグローバルFXトレード!
2021年9月28日(火) 3:04の配信メール
遅い時間に申し訳ないですが、ドル円を買うことにします。恒大集団の問題や、金利上昇で米株下落のリスク等を考慮していましたが、下がりません。天然ガスの上昇、それに連れた原油の上昇もあり、それは日本の貿易収支を赤字にします。ただ、高いレベルにあるので、押し目では買い増しできる余裕を持ちたいと思います。
USDJPY +0.5@110.98 ストップは109.80円110.55円で、もう0.5買います
FXメルマガでは、ポジション量も記載される
この記事では西原さん、志摩さん、バカラ村さんがザイ投資戦略メルマガで配信するメルマガを引用していく。上記のように、3人が自身のトレードを詳細に公開してくれるサービスだ。
【参考コンテンツ】
●志摩力男のグローバルFXトレード!
引用文中にある「0.3」や「0.5」などはポジション量の目安だ。それぞれのメルマガで基準は異なるが、3つのメルマガではいずれもポジション量の目安が記載されている。くれぐれも「西原さんが買ったからレバレッジ25倍で買い!」などと考えないように。
さて、西原さんと志摩さんの2人が米ドル/円の買いポジションを決済したのは自民党総裁選の当日(9月29日)。志摩さんは党員票が発表された直後だ。
志摩力男のグローバルFXトレード!
2021年9月29日(水) 11:34の配信メール
自民党総裁選が注目されますが、株価を見ると、期待がかなり剥落しております。ドル円は先程、新高値をつけてしまいました。岸田総裁というつまらない結果に備え、ドル円はいったん閉じます
西原さんも同様に、総裁選の結果が出る前に決済。ともに利益を得た。
(出所:TradingView)
一方で、自民党総裁選を挟んで動かなかったのがバカラ村さん。ユーロ/米ドルの売りポジションを持っていたため、ムリをしなかったのだと推測される。ユーロ/米ドルの売りを決済したのは総裁選当日(9月29日)の夜。80pipsの利幅となっていた。
(出所:TradingView)
ダイナミックな相場観が志摩さんの持ち味!
自民党総裁選を通過し、買いポジションを決済した西原さん、志摩さんだが、バカラ村さんを含め3人の目線は依然として上だった。
ただし、米ドル/円上昇を予見した理由は三者三様。何を見て、どう判断するのか、それぞれの特徴が出ているので、引用してみよう。
まずは志摩さんだ。
志摩力男のグローバルFXトレード!
2021年9月29日(水) 12:14の配信メール
1回目の投票で誰が2位になるかがポイントでした。高市氏の可能性が遠のき、岸田氏が事実上、新総裁となりそうです。新総裁選を理由とした円安は終わりました。米金利上昇を背景とした円安は、それでも続く可能性はあると思います
米ドル/円のターゲットとして、志摩さんが着目したのは「DXY」。米ドル全体の値動きを示すドルインデックスだ。
志摩力男のグローバルFXトレード!
2021年9月29日(水) 23:37の配信メール
DXYが93.75の重要レジスタンスを突破し、94.20に達しています。DXYのターゲットは103となるので、あと10%程上昇しそうです。そうなると、ユーロドル目標は1.05、ドル円は120円ということになります。ドル円は111.68の本日高値、そして111.72円の2020年3月24日高値を抜けてきました。112.22円の2020年2月20日高値を抜ければ、新しい相場になります
(出所:TradingView)
この時点で1ドル=111円台。120円は彼方遠くのレートだったが、志摩さんははっきりと視界に捉えていた。志摩さんの特徴は、こうしたダイナミックな相場観にある。
ファンダメンタルズなどからトレンドの種を敏感に察知して、その先に花咲く壮大な為替シナリオをいち早く提示してくれるのが志摩さんのメルマガだ。
もちろんシナリオが100%実現するとは限らないが、的中したときには大きな利益をもたらしてくれる。
バカラさんの根拠は、卓越したチャート分析とアノマリー(季節性)
では、バカラ村さんは米ドル/円をどう見ていたか。総裁選前々日(9月27日)に配信されたメルマガでは、米ドル/円の上昇を予想する投稿がされていた。
チャート分析やポジション分析、アノマリー(季節性)などの客観的な材料から先行きを予想していくのが、バカラ村さんの真骨頂が発揮された分析だ。
バカラ村のFXトレード日報!
2021年9月27日(月) 16:39の配信メール
米長期金利は長期では上昇していくことになると思います。為替市場にとってはドル高になりやすく、特にドル円での上昇が期待できるように考えています。ADXなどのインディケーターもいつ動きが出てきてもいい状態となっており、季節性からは10月中旬からは年末にかけて上昇しやすい時期となることもあって、ドル円は買い方向で考えています
米ドル/円上昇を予想した根拠として、ADX(※)と季節性の2つを要因として指摘していたバカラ村さん。「10月半ばから年末にかけて上がりやすい」という季節性(アノマリー)を月足チャートで確認してみよう。
(※編集部注:「ADX」とは、モメンタム指標の一種。トレンドの総合的な強さを知ることができる指標)
(出所:TradingView)
縦線を引いたのが10月。ざっくり見ても10月から12月に向けて上昇しやすい傾向が見て取れる。より詳細に10月半ば=10月15日から年末までの騰落を見ても、10年中7年で上昇していた。
(※筆者作成)
バカラ村さんの得意ワザ「ギュッと縮小」して比較する手法
もうひとつ、バカラ村さんが円安トレンドの発生をピンポイントで予想した根拠がADXだった。
ADXは「トレンドが出ているかどうか」を教えてくれる指標。ADXが低水準ならトレンドレスなレンジ相場だし、高水準にあればトレンドが発生しているということになる。
バカラ村さんがメルマガでたびたび披露している「1本1本のローソク足が見えなくなるくらいチャートをギュッと縮小して、広い視野で過去の最低水準と比較する」手法でみると、ADXは2015年以来の低水準にあった。
(出所:TradingView)
以前、同水準まで低下した2015年には、数日後にチャイナ・ショックによる世界同時株安が発生。米ドル/円は1週間で124円から116円へと暴落した。バカラ村さんが「米ドル/円はそろそろ値動きが出てきそう」とたびたび発言していた背景にあったのは、このADXだった。
米ドル/円上昇に、最初に反応したのは志摩さん!
3人のトレードに話を戻そう。まずは志摩さんから。
志摩力男のグローバルFXトレード!
2021年9月29日(水) 20:30の配信メール
ポジションを追加します。ドル円を少し買います、そして豪ドルドルを少し売ります。ドルロングポジションです
このあと、月末のロンドンフィックスを警戒して一度スクエア(全決済)にする場面もあったが、米ドル/円を「買い増し→一部決済→買い増し→一部決済」と繰り返していく。その過程をプロットしたのが以下のチャートだ。
(出所:TradingView)
この記事の執筆時点(10月19日時点)ではまだ保有中だが、10月18日(月)までの米ドル/円トレードでの獲得pipsを単純合計すると250pipsになる。志摩さんのメルマガをそのままマネしてトレードした人は大きな利益となっていたはずだ。
(取材・文/ミドルマン・高城泰 編集担当/ザイ投資戦略メルマガ事業部)
(「西原氏、バカラ村氏は豪ドルトレードも成功! 『イージーマーケット』に注目した西原氏は、豪ドル/円で合計400pips超の利確達成!」へつづく)
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