ギリシャ問題やユーロ圏のソブリンリスクなどから、ユーロ安を懸念する声が強かったが、足もとではユーロ安は一服感が強く、むしろ英ポンドの軟調が目立つ。
3月1日(月)には、昨年の高値と比べ、英ポンド/米ドルは2270pips、英ポンド/円は3100pips(※)近くとなる下げ幅を一時記録した。
(※編集部注:「pips」とは取引レートの最小単位のこと)

■「ギリシャ以下」と見なされている英ポンド
それだけではなく、英ポンドはユーロに対しても下げ幅を拡大している。それは、英ポンドがマーケットから「ギリシャ以下」と見なされていることを物語っている。
ギリシャ問題が飛び火し、英ポンド安が引き起されたという見方もあるが、筆者からみれば、それはまったくの誤りである。
英国のソブリンリスクはユーロ圏のソブリンリスクより深刻で、英ポンド安はギリシャ問題がなくても起こるべくして起こったものと受け止めている。
筆者がそう主張するのは、今さらの後解釈ではない。昨年10月と12月の本コラムでは、英ポンド安の進行に警鐘を鳴らし、「ポンドキャリートレード」が盛んになるリスクについて注意をうながしていた(「年末に向け、米ドルのリバウンドと英ポンドの『サプライズ』に備えるべき!」「そろそろ英ポンドのサプライズが起こる!? 来年は『ポンドキャリートレード』が流行か?」参照)。
目下のトレンドはまさにそのとおりの展開と言える。
■英ポンド安が進行した3つの理由
では、英ポンド安が「必然的」に進行した背景はどこにあるのか? まとめると、おおむね以下の3点が挙げられるだろう。
まず、英国の財政赤字はGDPに対する比率が12%に達しており、これからも拡大していく見通しだ。
同比率はギリシャ並みであるが、肝心なところは、英国の製造業にしても、銀行業にしても問題が山積みということ。
同時進行している貿易赤字は大幅な英ポンド安でも改善される気配がないようだ。実際、リーマンショック以来、英ポンドは25%も暴落していたが、1月貿易赤字は逆に17カ月ぶりの高い水準に膨らんでいた。

製造業が落ちこむ一方、稼ぎ頭だった銀行業も危機的な状況にある。業界全体が今後3~4年の間に7920億ドルの不良債権を処理しなければならないという研究報告があるほどだ。
■政局は混迷、金融政策は不透明な英国
次に、英政局の混迷だ。
現在与党の労働党と野党の保守党は5月の選挙でいずれも多数派にならないといった見通しがあり、政局の混迷が続けば、今後英国は財政赤字削減に取り組むどころか、財政赤字を逆に拡大させる恐れさえある。
このような不信感が広まるなか、英ポンドが買われる展開は想定しにくい。
最後に、もっとも決定的なのは、英金融政策の不透明感だ。
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