■『人民日報』の「裏の裏」を読む中国庶民の姿
一般論として、民主主義でない国や発展途上国の多くは、国民と政府がお互いに不信感を持っていることが大きな特徴として挙げられる。
『人民日報』の「裏の裏」を読み切ることで真相をつかもうとする中国の庶民の姿が今も健在であることは、中国のカントリーリスクをよく表している。
今回の原発事故では、日本政府と米国政府が指定する避難範囲に50キロメートルもの差があり、また避難範囲の外でも何千倍の放射線が検出されていることが国民の不信感を招いている。
そして、多くのマスコミが、菅総理の東電への一喝を「恫喝」と表現した例からみても、民間の「政府叩き」が尋常ではないレベルに達している。
ところで、あのような緊急事態においては、菅総理の「恫喝」なしでは事態がさらに悪化していたことも間違いあるまい。
まして、一国の総理が誰であれ、緊急事態においては多少乱暴でもリーダーシップの発揮が求められるから、立派な行動を評価しない世論自体が官民の間に横たわる深刻な不信感を浮き彫りにしている。
一部報道によると、東電ばかりか、政府が自衛隊や消防隊さえ思うままにコントロールしていなかったから、今回の危機が拡大した側面もあるようだ。
■中長期的に円に対する「信頼」は大きく損なわれた
官民の不信が中国のような「非民主主義国」のレベルに陥った一方、中国共産党のように軍隊や全国のあらゆる力を動員、コントロールする力もない。そうなれば、誰が総理になっても同じ結果となり、非常時には国としての真価を発揮できないはずだ。
この国の「カントリーリスク」の真実はまさにここにあるのではないかと思う。
政治コラムのような書き方になって申し訳ないが、要するに、カントリーリスクを含め、マクロの視点から、円に対する「信頼」が中長期的に大きく毀損しているように見えるということだ。だから、円高の基礎も弱められることになる。
もっとも、円は安全資産とみなされているからこそ、常に「翻弄される通貨」として位置づけられてきた。つまり、円相場は円の事情にあまり関係なく、外貨の高安で決定されてきたのだが、今後、円サイドのリスクが鮮明になってくれば、そのような位置づけは難しくなるだろう。
テクニカル的な視点では、短期スパンにおいて、為替マーケットのレートはロング筋とショート筋の力関係とバランスによって決定されるが、中長期では、やはり相場の内部構造(サイクル)によって作られるものと思う。
(出所:米国FXCM)
上のチャートをご覧いただきたい。
下位の序列にある5年サイクルにゆがみが生じていることから、上位の序列にある16~17年サイクルがそろそろボトムをつけることが示唆されている。
これについての詳しい説明は次回に。
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