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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

危機で露呈した日本のカントリーリスク。
果たして、円高傾向は続くのか?

2011年03月25日(金)17:57公開 (2011年03月25日(金)17:57更新)
陳満咲杜

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■大震災がもたらした日本経済の問題は3点に集約できる

 地震、津波、原発事故と今回の災難は95年の阪神・淡路大震災と比べ、より大きい損失額をもたらしたと思われる。日本経済全般について、これからの問題を整理すると、おもに以下の3点に集約できるだろう。

 まず、復興に伴う需要が景気を向上させる原動力となるか、それとも巨額の被害で一段の景気低迷につながるか

 次に、財政再建の必要性、緊急性が叫ばれる中、今回の震災がもたらす財政悪化を避けられるか

 最後に、円高傾向が続くかどうか、である。

 短期スパンはともかく、中長期スパンにおいて円の動向を論じる場合、やはりこれからの景気変動と財政問題は切り離すことができない。

 その際、より重要になるのは、今まで円高傾向が続いてきた根本的な原因を正しく認識することである。

■口では「反米」を唱えても米ドルで資産運用

 71年のニクソン・ショック以来(※)、主要国の通貨は金という裏づけを失い、その価値の測定は実に困難なものになっている。米ドルを含め、目に見える数値や基準よりも、目に見えないものが各国の通貨の高安を決定していると思う。

 この目に見えないものを一言で表現すれば、「信頼」にほかならない。

(※編集部注:「ニクソン・ショック」とは、米国のニクソン大統領が発表した「米ドルと金の交換停止」のこと。為替の固定相場制が終わるキッカケとなった)

米ドル/円 年足

 「双子の赤字」の構造が続き、「量的緩和」の名で紙幣を刷り撒く米ドルが、なお基軸通貨の地位を有しているのは、もっとも流動性があり透明なしくみを有する資本市場、圧倒的な軍事力、そして西側をリードする政治的な力への信頼感ではないかと思う。

 もちろん、米国が法治国家であり、民主主義ということも、とても重要な要素だ。

 口では「反米」と言い、場合によっては米国と軍事的対立までした国や政治団体、政治的指導者(多くの場合は民主主義を否定する政党と独裁者)も米ドルで資産運用を行っていることは何よりも米ドルへの信頼の証左である。

 ちなみに、EU、英国など西側諸国への信頼も基本的には同じである。この意味でも、人民元の国際化は容易ではない。

■今回の震災で日本の「安全神話」は崩れた

 では、円に対する信頼はなんだろうか?

 米、英、欧と同じ、民主主義のしくみで運営される経済大国、勤勉な国民性と高い技術力、安全、清潔な生活環境が円の信頼を生み出してきたと思う。

 しかし、今回の震災で少なくとも日本の「安全神話」は崩れた。

 地震多発国として知られる日本における「観測史上最大級」の地震自体はさほどサプライズではない。しかし、この地震で露呈したさまざまな問題が大きな「カントリーリスク」を浮上させている。

 最新の報道では、今回の福島第一原発の事故で放出された放射線は、推定量からみて、国際評価尺度で「レベル6」に相当することがわかった。

 それは、米スリーマイル島原発事故(レベル5)を上回る規模で、部分的には旧ソ連のチェルノブイリ原発事故に匹敵する土壌汚染が見つかったことを意味する。放射線の放出は今も続き、周辺の土地が長期間使えなくなる恐れがあるという。

 ここまで深刻な事態に発展したのは、これが単に自然災害だけなのではなく、行政上の「人災」という側面が大きいことを直視すべきだ。

 今では「改ざん、隠蔽常習犯」と批判されている電力会社に対して、国は監督責任をなぜ果たしていなかったのか? これは国家の安全を脅かす可能性もある原発の管理を一企業に任せてきた国全体の問題であり、カントリーリスクそのものであろう。

 また、今回の危機で露呈した政府の統制、危機対応能力の欠如も大きな問題であり、カントリーリスクの1つであろう。

 その問題に関しては、マスコミの多くがさまざまな角度で検証、報道しているので、詳説を省くが、筆者はやや違う視点で問題を提起しておきたいと思う。

■『人民日報』の「裏の裏」を読む中国庶民の姿

 一般論として、民主主義でない国や発展途上国の多くは、国民と政府がお互いに不信感を持っていることが大きな特徴として挙げられる。

 『人民日報』の「裏の裏」を読み切ることで真相をつかもうとする中国の庶民の姿が今も健在であることは、中国のカントリーリスクをよく表している。

 今回の原発事故では、日本政府と米国政府が指定する避難範囲に50キロメートルもの差があり、また避難範囲の外でも何千倍の放射線が検出されていることが国民の不信感を招いている。

 そして、多くのマスコミが、菅総理の東電への一喝を「恫喝」と表現した例からみても、民間の「政府叩き」が尋常ではないレベルに達している。

 ところで、あのような緊急事態においては、菅総理の「恫喝」なしでは事態がさらに悪化していたことも間違いあるまい。

 まして、一国の総理が誰であれ、緊急事態においては多少乱暴でもリーダーシップの発揮が求められるから、立派な行動を評価しない世論自体が官民の間に横たわる深刻な不信感を浮き彫りにしている

 一部報道によると、東電ばかりか、政府が自衛隊や消防隊さえ思うままにコントロールしていなかったから、今回の危機が拡大した側面もあるようだ。

■中長期的に円に対する「信頼」は大きく損なわれた

 官民の不信が中国のような「非民主主義国」のレベルに陥った一方、中国共産党のように軍隊や全国のあらゆる力を動員、コントロールする力もない。そうなれば、誰が総理になっても同じ結果となり、非常時には国としての真価を発揮できないはずだ。

 この国の「カントリーリスク」の真実はまさにここにあるのではないかと思う。

 政治コラムのような書き方になって申し訳ないが、要するに、カントリーリスクを含め、マクロの視点から、円に対する「信頼」が中長期的に大きく毀損しているように見えるということだ。だから、円高の基礎も弱められることになる。

 もっとも、円は安全資産とみなされているからこそ、常に「翻弄される通貨」として位置づけられてきた。つまり、円相場は円の事情にあまり関係なく、外貨の高安で決定されてきたのだが、今後、円サイドのリスクが鮮明になってくれば、そのような位置づけは難しくなるだろう。

 テクニカル的な視点では、短期スパンにおいて、為替マーケットのレートはロング筋とショート筋の力関係とバランスによって決定されるが、中長期では、やはり相場の内部構造(サイクル)によって作られるものと思う。

米ドル/円 月足(クリックで拡大)

(出所:米国FXCM

 上のチャートをご覧いただきたい。

 下位の序列にある5年サイクルにゆがみが生じていることから、上位の序列にある16~17年サイクルがそろそろボトムをつけることが示唆されている。

 これについての詳しい説明は次回に。

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