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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

EU首脳会議の結果がどうなろうと、
急激なユーロ崩壊はないと読む理由とは?

2011年12月09日(金)17:26公開 (2011年12月09日(金)17:26更新)
陳満咲杜

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■各国中銀もユーロ崩壊に備え始めた

 足元の為替市場はこう着状態となっており、市場関係者は固唾(かたず)を飲んでEU(欧州連合)首脳会議の動向を見守っている。

 この12月8日(木)~9日(金)開催の会議は「ユーロの存亡に関わる」とさえ言われているが、いかに重要なのかは、次の報道からもおわかりいただけるだろう。

 「アイルランド中銀は新たな紙幣印刷機の調達を検討」

 「ギリシャ中銀は紙幣印刷体制の限界を懸念」

 「BOE(英中銀)は自国紙幣印刷の確保に全力」

 「スイス中銀はユーロ以外の通貨を『ペッグ対象』にする作業に入る」

 この他にも複数見受けられるが、その背景は「万が一、ユーロ崩壊となった場合に備える」ということで共通している

 ちなみに、ECB(欧州中央銀行)はユーロ紙幣の印刷を各国中銀に委託しており、アイルランドとギリシャの中銀は自前の印刷工場を持っているが、その他の国は民間業者に業務を委託している。

 ただ、その多くは英国のポンド紙幣の印刷も受託しており、ユーロが崩壊した場合は、各国紙幣の印刷需要が殺到すると想定される。英ポンド紙幣の印刷に影響が及ぶリスクもあるため、ユーロを使用していない英国も慌てたとのことだ。

 また、スイスの場合、スイスフランは事実上ユーロと「ペッグ」していることから、ユーロがなくなれば、今度は新ドイツマルクと「ペッグ」することが予想される。これは1970年代に、スイスフランがドイツマルクとペッグした歴史を鑑みれば、自然な成り行きとも言えるだろう。

■利下げしたのに、マーケットはユーロ買いに反応した

 このように、ヨーロッパ各国の中銀の「用意周到ぶり」が報道されているのだから、市場のマインドは一層冷え込んでいる。 民間銀行や企業だけでなく、中銀でさえ最悪の事態を想定せざるを得ない状況なのだから、ユーロ崩壊の現実味はさらに高まっている

 また、マーケットは2人の人物に対して、問題解決に向けての多大なる期待と希望を託していたが、12月8日(木)に、そのうちの1人がマーケットの期待を裏切り、多くの市場関係者を失望させた。

 この人物とは、ECBのドラギ総裁である。ECBは市場予想(期待)のとおりに利下げしたものの、包括的なユーロ危機対策として浮上している国債買い入れ規模の拡大とIMFへの融資に難色を示したため、過大な期待を寄せていたマーケットに水を差した

 一般論として、利下げ自体は通貨安に作用することが多いが、今回に限っては、ECBの利下げ決定自体は一時ユーロ高をもたらした。

 これに関しては、筆者はツイッターで「ECB、利下げならユーロが買われ、大幅利下げ、あるいは他の措置があったらさらに買われるだろう」との見通しを事前にコメントしていたが、そのとおりになった。

 それは、危機回避のための利下げは好感され、リスクオンのムードが広がり、結果的にユーロを下支えすると読んでいたためだ。

 実際のところ、市場予想の範囲内にとどまる0.25%の利下げに対して、ユーロ/米ドルは一時1.3459ドルまで買われた。

ユーロ/米ドル 4時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足

 ところが、さらなる高値を追うことはできなかった。その後、ドラギ総裁の発言で大きく売られたためだ。

 ただ、利下げでユーロ買いといったロジック自体は正しかったし、「リスク回避」の動き自体を回避する措置ならば、何であれ、今のマーケットには歓迎されると思われる。

ドラギ総裁への市場の期待は大きすぎた

 前述のように、危機的状況に置かれた足元のマーケットであるからこそ、多くの市場関係者はECBに大胆な措置を求め、ドラギ総裁に多大な期待を寄せていた。

 だが、冷静に考えれば、無理なところが多かった。筆者は事前にツイッターで、「リーマン・ショックでも、ECBは1%以下まで利下げしなかった。翌日のEU首脳会議待ちで、ECBは盲進しない公算」との見通しをつぶやいた。

ECBにとって、注目度の高いEU首脳会議前に大胆すぎるほどの施策を打ち出すリスクはあまりにも大きいし、市場の期待どおりの材料を包括的に提示できたとしても、EU首脳会議のメインテーマである財政統括に悪影響を及ぼすことは必至だ

 したがって、ドラギ総裁からすれば、小幅な利下げにとどめることは、むしろ当然の判断である。「ECBはEUの財政統括なしで、最後の貸し手にはなれない」といった立場を表明することなど、拙速であり、到底できない。

 つまり、ドラギ総裁が市場の期待を裏切ったのではなく、そもそも、市場の期待が大きすぎたのだ。その分、失望も大きいわけで、ユーロ/米ドルの1.3300ドル割れはその象徴である。

問題は、首脳会議の合意や成果を市場がどう判断するか

 ただし、一本調子のユーロ売りにもなっておらず、11月安値の1.3212ドルを下回っていない。このことは、市場がなお希望を持っていることを示唆しているだろう。

 ここから、2人目の重要人物であるドイツのメルケル首相の英断に期待するマーケットの雰囲気が読み取れる

 ユーロの核心であるドイツの譲歩なしで、ユーロのソブリン危機は解決できない「ドル資金の供給拡大は一時しのぎの策。そして、どう転んでも円高傾向は不変だ!」を参照)

 その一方で、ドイツが財政統括を前提条件としている以上、それが達成されたとしても、今回の危機の解決にどれほどの実行性があるのか、疑問も多い。

ユーロ/米ドル 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足

 しかし、EU首脳会議の結果を過度に悲観視することもないだろう

 危機の深刻さと緊急性は独仏の両大国も十分に承知しており、焦眉の問題を何とかしなければならない状況において、何らかの成果を見出せるのではないかと見ている。

問題は、首脳会議における合意や各種成果を、マーケットがどう評価するかである

なお、メルケル首相の指導力は期待されている

 前日にドラギ総裁の「裏切り」があった分、EU首脳会議に対する期待がかなり後退している可能性が考えられる。

 一方で、ユーロ相場が崩れていないことは、なお、メルケル首相の指導力が期待されていることを示していると思う。

 いずれにせよ、市場の内部構造がファンダメンタルズに先行するといった「哲学」の信奉者としては、EU首脳会談の結果を予想できなくとも、急激なユーロ崩壊はないと見ているし、逆に、年内に一段のリスクオン、ユーロ高があってもおかしくはないと思っている。

 テクニカル・アナリシスの視点でユーロを見れば、年初来安値を更新していくよりも、いったんリバウンドしてから安値更新していく蓋然性が高いと思われる。

 極めて重要とされている今回のEU首脳会議で、何らかの形でマーケットを納得させ、リスクオンのムードを再起させる結果が出てくると見ている。

 確かに、各国中銀でさえユーロ崩壊に備え、準備に余念がない状況下で、このような見通しを示すことに対して「頭がおかしい」と思われるかもしれない。

 しかし、周知され、かつ、万全な善後策が用意される中、なかなか本格的な危機が発生しないことは、歴史が教えてくれている

 ユーロ崩壊があれば、それは紛れもなく、現代史に残る一大惨事である。それだけに、このタイミングでは早すぎると思う。

(12月9日12:00執筆)

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