金曜日はEUサミットの2日目だった。すでに木曜日のECB理事会の後のドラギ総裁のコメントでマーケットはやや失望気味。リスク回避もあいまって株安、ユーロ安の状態で2日目を迎えたことになる。途中でイギリスの姿勢が問題になった。イギリスは通貨ユーロを使用していないので、ユーロ圏ではない。しかしEU協定には参加しているので、いちおうの発言権はある。そのイギリスが協定の見直しに断固として反対したのだ。
これをうけてアジア時間ではリスク回避の動きが強まり、グローベックスでの米国株は大幅安を演じることとなった。イギリスの首相は「ユーロになんか絶対に入らない」などと毒づいていたほどだ。ああしたものが映像で流れると、欧州に関するすべての投資をやめてしまいたくなる。
ただ為替相場に従事している者としてはユーロポンドの行方に影響を与えそうで、今後は面白くなってくるかもしれない。欧州不安を打開しようとして真剣に取り組んでいるのに、なんとも不謹慎ではあるがのだが…(苦笑)。単純に考えれば、ユーロは売られ、ポンドが買われそうである。短期的にはユーロポンドが0.80台の大台を割り込んでくるのではないかとも考えられる。ただこの日の動きは実に限定的でユーロポンドの材料にもあまりされていないようだった。
しかし海外市場では、たとえイギリスを除いた17カ国の協議であったにせよ、財政規律をうたった合意事項には欧州不安を遠のかせるであろうというオプティミスティックな見解が台頭した。次第にリスク回避の勢いは薄らいでいき、株価だけを見るとニューヨーク時間に入る頃には完全に元の発射地点のレベルを回復。しかし欧州時間に1.34台まで戻したユーロドルだったが、ユーロクロスの重さに押される形で後退。
米国株が高値追いを続け、そのまま高値圏でのクローズとなったのと比べるとユーロの目先の重さがとても意識された一日となった。株価とクロス円の逆行を許してしまうような相場展開で私はあまり取引したいとは思わない。だから結局はなにもできなかったのだが、翌週以降のユーロの動きにはいろいろな意味で興味が持たれるところであった。
そして週明けの今日のアジア時間では、リスク商品は少しだけ安かった。100ドルの大台を狙っていた原油価格はやや垂れ気味。そしてグローベックスでの米国株も前日のクローズ比でマイナス圏を保っている。上値が重そうだと見た一部のアジアンネームの売りがユーロドルの下げを助長していた。
私も欧州市場から参加しようとは思っていたが、アジア時間の後半にユーロドルが1.3330を割り込んできたあたりからユーロドルショートにしている。この後ユーロドルは1.33台をキープすることができず、ベアムードに包まれている。だいたいいつも「合意」とか「決定」という言葉にポジティブに反応するマーケットだが、少し冷静になるとすぐにふつふつと疑問が浮かんでくることを繰り返している。確かに先週のEUサミットは具体性を欠いていた。
私も決して先週の会合のあり方はあまり評価できるとは考えていない。どのみち今晩はイベントがないので、そうした水準訂正のためのテクニカルな動きにも脆い相場つきではないかと思う。
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