スイスフラン/円は180.07円を超えて歴史的高値更新中。トランプ「停戦合意」表明でリスクオンに
西原宏一(以下、トレーダー西原) 叶内文子(以下、MC叶内) みなさん、こんにちは。
トレーダー西原 先週(6月23日~)は、米国がイランの核施設攻撃を行ったことでマーケットに緊張感が走りましたが、日本時間火曜日(6月24日)早朝、トランプ大統領がSNSで「停戦合意」と表明すると、マーケットはリスクオンに大きく舵を切りました。
マーケットのテーマが1週間も持たず変わってしまうため、ボラティリティの高さに警戒ですね、
それでは、先週の振り返りからお願いします。
MC叶内 今週(6月30日~)も、よろしくお願いします。
東京市場ではリスク回避の売りが先行しましたが、日本時間火曜日早朝にトランプ大統領がSNSで「停戦合意」と表明すると一気に上昇、後半にかけて買いが加速しました。
タカ派で知られたボウマンFRB(米連邦準備制度理事会)副議長が、7月利下げに言及したことなどから利下げ期待が高まり、長期金利が低下したことも追い風です。
特に米ビックテック、マグニフィセントセブン(※)の反応が大きく見られました。
(※マグニフィセントセブンとは、米株式市場を代表するテクノロジー企業であるアルファベット、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフト、テスラ、エヌビディアの7社を指す)
エヌビディアが最高値を更新して、日米ともに他の半導体関連、AI関連に買いが波及しました。
S&P500は6173.07、前週末比3.44%高で3週ぶりに反発し、2月以来の最高値更新。ナスダック総合指数も最高値を更新しました。週間で+4.25%、2週連続の上昇。NYダウは+3.82%、2週続伸です。
日経平均は前週末比1747.56円高(+4.55%)の40150.79円で3週連続の上昇です。1月27日(月)以来の4万円台回復となりました。TOPIXも+2.50%で2週連続上昇。3月26日(水)の年初来高値を更新し、2024年7月以来の高値水準をつけました。日本株は配当再投資の買いなどもあったと指摘されています。
為替市場はいかがでしたか。
トレーダー西原 中東情勢で、一時的に有事の米ドル買いが起きる場面もありましたが、あっという間に停戦したこともあり、ほとんどの主要通貨に対して米ドル安になっています。
本日は6月30日(月)の月末。そこで、トランプ関税や中東情勢に振り回された6月を振り返ってみましょう。
以下は、6月月初からの主要通貨の対米ドル騰落率です。

ほとんどの主要通貨に対して米ドル安になっており、目立ったのがユーロ、スイスフラン、英ポンドの上昇。
そして唯一、米ドルに対して値を下げているのが日本円です。中東情勢の悪化で、米ドル/円が一時148円台まで反発したことが影響しています。
結果として、ユーロ/円、スイスフラン/円は大きく上昇。特にスイスフラン/円は、昨年の史上最高値180.07円を超えて、歴史的高値を更新中です。

(出所:TradingView)
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スイスイフラン/円、ユーロ/円を押し目買い。中東情勢が沈静化し対欧州通貨で米ドル安トレンドに回帰
MC叶内 重要指標が多いです。
7月1日(火)に6月のISM製造業景況指数、7月3日(木)に6月のISM非製造業景況指数が発表になります。
米雇用統計は、7月4日(金)が独立記念日のため7月3日(木)に前倒しで発表されます(7月4日は休場、7月3日は株式・債券市場が短縮)。市場予想では非農業部門雇用者数(前月比)+ 11.6万人、(前回13.9万人)、失業率4.3%(同4.2%)、時間当たり賃金(前年比)3.9%横ばいとなっています。
その前哨戦として、7月1日(火)の5月の雇用動態調査(JOLTS)、7月2日(水)の6月のADP雇用統計も気にされそうです。
FRB高官の発言機会も多くあります。
7月1日(火)はECB(欧州中央銀行)フォーラムが開催され、パウエルFRB議長はじめ、植田日銀総裁、ラガルドECB総裁など各国中銀トップの発言が予定されています。
中国のPMIは国家版が6月30日(月)、財新版が7月1日(火)に出てきます。
国内では、6月30日(月)に5月の鉱工業生産指数、7月2日(水)にマネタリーベース、7月4日(金)に5月の家計調査が発表されます。
そして7月1日(火)に日銀短観が公表されます。大企業製造業DIの市場予想は9、前回12から悪化が予想されていますが、米国関税政策の影響、駆け込み輸出などで評価がしにくいと言われています。先行き見通しがどの程度悪化しているかが気になります。市場予想は8(前回12)です。業種別で、自動車や鉄鋼を見たいです。大企業全産業の設備投資計画は10%程度の伸びが予想されています。前回3.1%で、通常通り6月調査では上方修正されるみこみです。
ヘッドラインリスクは残るものの、勢いのある米国株は上昇継続との見方が多いです。
先週の流れを見ると、米指標で景気の減速や雇用の悪化が示されれば利下げ期待につながって、むしろ株価は上昇するのかもしれません。
相互関税の一部停止の期限切れを7月9日(水)に控えていますが、「一部の国は再延長」と示唆されています。トランプ大統領がカナダに強硬姿勢を示していますが、市場はTACO(※)と捉えそうです。
(※編集部注:TACOとは「Trump Always Chickens Out(トランプはいつもビビってやめる)」の頭文字をとった言葉のこと。FT(フィナンシャル・タイムズ)のコラムニスト、ロバート・アームストロング氏が「TACO理論」として考案した)
ただ、高値更新でいったん達成感が出る可能性もあります。週末の米独立記念日の祝日を控えて、参加者は減るかもしれません。
日本株については、自動車貿易が不公平だとトランプ大統領に改めて言われており、関税交渉に不安があります。7月の2週目にはETF(上場投資信託)分配金捻出売りで、短期的に需給が悪化する面も想定されます。とはいえ、先週後半の急上昇で売り方の踏み上げもあると聞きます。市場関係者の声は強弱入り混じっています。
為替市場はいかがですか。
トレーダー西原 突然降って湧いたような中東での紛争ですが、あっという間に収束。
今週は再びトランプ関税に視点が移行しそうです。
特に日本にとって、自動車関税はインパクトが大きく、今後の景気、そして日銀の金融政策に影響を及ぼしそうなので要注意です。
本稿執筆時点では、日本とトランプ政権との間で交渉がまとまらず、トランプ大統領はかなりご不満な様子で、相互関税が7月9日(水)に延長されるかどうかの行方に警戒しています。
中東情勢の混乱が収束したため、為替相場はもとの米ドル安トレンドに戻ると考えています。
特筆すべきはスイスフランです。
中東情勢が混乱する中、避難通貨であるスイスフランと米ドルが急騰。そして、それが収束してもスイスフラン高は続く一方、米ドルは米ドル安トレンドに戻ったため、対米ドルではスイスフラン高が進行し、結局スイスフラン/円は史上最高値を更新しています。
一方、米ドル/スイスフランに遅れていますが、ユーロ/米ドルでもじわじわとユーロ高・米ドル安が進行。
米ドル/円ですが、欧米短期筋にとって円ロングは依然として人気で、マーケットにはまだ円ロングはかなり残っています。
ただ、彼らはもう3カ月ほど円ロングを維持していますが、なかなか結果がでないため、彼らにとってスワップコストがきつくなってきています。
今回のことで改めてわかったのが、中東情勢の悪化のようなマーケットに大きな負荷がかかると、ポジションの巻き戻しが簡単に起こること。
今回、ポジション調整が大きく起きたのが日本円です。中東情勢の悪化で、原油高騰、日本円が売り込まれるのはわかりますが、148円台まで簡単に上がったのはポジション調整の影響が大きい。
中期では、対円でも米ドルは下がると想定していますが、スワップコストが徐々にきつくなってきており、今回の中東情勢悪化のようなマーケットに大きな負荷がかかるようなイベントがあると、米ドル/円は再びポジション調整で踏み上がることが懸念されるため、
米ドル/円はあくまでも、米ドルの戻しがあれば米ドル売りで。

(出所:TradingView)
どちらかといえば、これまでどおりスイスフランを筆頭とした欧州通貨に注目しています。スイスフラン/円に加え、ユーロ/円の押し目買い方針です。

(出所:TradingView)

(出所:TradingView)
トレーダー西原 MC叶内 それでは、今週も株と為替のトレードを楽しんで行きましょう。
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