イラン-イスラエル戦争はあっさり終了
「開放の日(Liberation Day)」2025年4月2日以降、マーケットは激震に見舞われました。特に6月13日(金)にはイスラエルがイラン攻撃を開始し、22日(日)には米国まで「バンカーバスター」で地下深いところにあるイラン核施設を攻撃したときには、対抗措置でイランがホルムズ海峡を封鎖し、原油価格が青天井に上昇してしまうのではないかと懸念されました。
しかし、イランはエスカレーションを望まず、米国側の損害が発生しないよう、事前通告した上でカタールの米軍基地にミサイルを発射しました。トランプ大統領はイランの配慮に感謝し、イランとイスラエルによる12日間の戦争は幕を閉じる事になりました。
あまりにもあっけない幕切れに、原油価格は80ドル前後から一気に65ドル前後まで急落、米ドル/円は146.70円前後から148円まで上昇しましたが、戦争終結で有事の米ドル買いが剥落し、144円割れまで下落しています。

(出所:TradingView)

(出所:TradingView)
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マーケットの注目は米金融政策にシフト
戦争が終わったので、マーケットの焦点は本来のファンダメンタルズに戻ることになります。
そこに驚くべきニュースが飛び込んできました。FRB(米連邦準備制度理事会)内でももっともタカ派と見られていたボウマン副議長が6月23日(月)プラハにおいて、7月FOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げに言及しました。
昨年(2024年)9月FOMCにおいて0.50%の利下げが決定されましたが、当時のボウマン理事は0.25%の利下げが望ましいとして、唯一反対票を投じました。
それだけタカ派のボウマン副議長が7月利下げに言及するという、もっともハト派的な発言を行ったことはショックです。
もしかすると、トランプ大統領によって副議長に推薦されたとき、何か密約があったのか?と、疑心暗鬼になります。ちなみに、ボウマン副議長は共和党支持者です。
ボウマン副議長は次のように言っています。
「7月FOMC前に雇用・インフレに関する追加的データを得ることができる。そのときにインフレ圧力が抑制されたままならば、健全な労働市場を維持するためにも、次回会合という早い段階での政策金利引下げを支持するだろう」
また、ボウマン副議長のみならず、最近ではウォラー理事(共和党支持)も20日の米CNBCにおいて、「早ければ7月にも利下げは実施できる段階にあると思う」と発言しています。
ボウマン、ウォラーと影響力・発信力のある2人が7月利下げに言及したことで、FRB内が分裂しているのではないかとの懸念が広まっています。
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パウエル議長はボルカー議長のように追い込まれてしまうのか?
先日発表された6月FOMCにおいて、2025年末におけるFF金利のドットチャートは2回の利下げを織り込んでいるのですが、FRB内がタカ派・ハト派、2つのグループに分裂しているのではないかと、心配になります。

(※筆者提供)
実は、今のFRBが置かれている状況と似たようなことがかつてありました。
ポール・ボルカー氏は、元FRB議長として、1970年代の猛烈なインフレを超高金利政策で抑え込んだ英雄、セントラルバンカーの中のセントラルバンカーと見られていますが、退任直前のころは、引き締め政策にこだわるボルカー氏に緩和政策を行わせるため、当時のベーカー財務長官に、あの手この手でFRB内に手を突っ込こまれ、実権を失っていました。
1986年2月24日、「宮廷クーデター」と呼ばれる事件が起き、ボルカー議長の意に反して、マーチン副議長が利下げを求め、あらかじめ結託していたジョンソン、エンジェル、シーガー3理事とマーチン副議長が賛成し、4対3で利下げが決まりました。
議長の意思が無視されたことは、長いFRBの歴史の中でもありえない事態です。ボルカー議長は辞意を表明しましたが、すぐにベーカー財務長官に慰留され、その後は意に沿わぬ利下げを行わざるを得ない立場に追い込まれました。
次のFRB議長は超ハト派確定的で、いずれ米ドルは急落へ
7月FOMCで同じようなことが起こるとは思わないですが、(トランプ大統領の意を汲んだ)利下げを求めるウォラー、ボウマン両氏が中心となりグループが形成され、パウエル議長の意に沿わない利下げを決めてしまう可能性は、過去に前例もあるだけに、無きにしもあらずかもしれません。そして、もしそうなれば大事件であり、米ドルの下値は相当低くなるでしょう。

(出所:TradingView)
もっとも、そうしたトリックを使わなくても、次のFRB議長は超ハト派は確定的で、いずれ米ドルは急落する可能性は高いと思います。
ユーロ/米ドルは1.2500ドルが見えてきたかもしれません。米ドル/円は140円を割り込むまでが大変ですが、いったん割り込めば、下げは早そうです。

(出所:TradingView)
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