日銀の点検というのは、かなり拍子抜けする内容であった。なにか変更事項があるのかと思えば、単なる長期金利の変動幅の微調整と、ETF購入の中身をトピックス銘柄に集中させるというだけ。ほぼ前日までに日銀の行うアクションとして報道されていたものと同じであった。後はその正当性を主張するといっただけで、どういう効果があったのか、短期的であっても目標は何かはまったく示されなかった。
そもそも長期金利の変動幅を0.20%から0.25%に拡大するのを容認したというが、そんなものはマーケットが勝手に変動を始めれば何の効力もないのは明らか。これまでは単に長期金利が動くだけの材料に乏しかっただけで、決してイールドカーブ・コントロールが効いていたわけではない。
今月に入ってアメリカの長期金利が上がると資本市場は緊張感を増し、上げ止まると安心感を得てリスクテークを再開するの繰り返しであった。上げ止まるだけで着実に長期金利の水準は切り上げているわけで、元の水準に戻してきているわけではない。
そして先週はとうとう米国債は安値引けしたわけだが、結局のところは金利水準の切り上がりがあっても、だんだんと市場参加者の目が慣れてくるだけで、これは10年債の利回りが2%を越えて きても3%を超えてきても変わらないのだろう。
念頭に置いてかないといけないのは、世界は徐々にコロナ感染から立ち直りつつあり、それがダイレクトにインフレ懸念に結びついているということだ。とくに新興国では短期金利にも影響が出始め、先週はブラジル中銀が予想を上回る利上げに踏み切った。
トルコ中銀も同様である。そしてロシア中銀も金融スタンスを緩和から中立に引き上げている。先進国ではニュージーランドやイギリスあたりが、まっさきに利上げのスタンスに変更する可能性が高い。
為替相場はドル高水準においてボックス圏におさまっている。しかし流れとしてはドルの先高感が拭えない。これは世界的に利上げモードへの転換の時期が迫っているからだろう。押し出されるようにしてドルも利上げの対象になるのを待っている状態なのである。
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