
<要点>
・アイルランドが主役を演じる欧州財政危機第2幕は、ギリシャが主役で展開した「第1幕」と多くの点で違いがある。
・「第1幕」は欧州全体の信用悪化と欧州コア国の金利低下により「ユーロ危機」に発展していったが、「第2幕」での「ユーロ危機」再燃は微妙だろう。
・ただし、12月EUサミットへ持ち越しになっているソブリン債務の投資家への強制負担を巡る独仏vs「ユーロの番人」ECB対立の行方は要注意か。
■「欧州危機=ユーロ離れ」第2弾は起こらない!?
10月末から、アイルランドを主役とした欧州財政危機第2幕の様相となってきました。ただこの「第2幕」、今年6月にかけて展開した「第1幕」とはいくつかの点で明らかに違っています。
ギリシャが主役となった欧州財政危機第1幕では、欧州全体の信用悪化からユーロが一本調子で売られるといった「ユーロ危機」へ発展するところとなりましたが、「第2幕」はそれとはちょっと違うのかもしれません。
「第1幕」と「第2幕」の顕著な違いの1つは、金利の動きです。
第1幕では、ギリシャなど財政危機に陥った国から、欧州域内の「安全圏」独への「質への逃避」が広がった結果、両者の金利差が拡大する中で、とくに独金利は短中期中心に大幅な低下となりました。しかし、第2幕では、これまでのところ独金利は高止まりが続いています。
たとえば、1年もの独国債利回りは、今年初めは0.8%程度だったのが、6月にかけて一時0.2%台へ大幅に低下しました。このような独金利の低下がユーロ売りを後押しした面は大きかったと思います。

実際に、独金利とユーロの相関性は高く、両者の安値はともに6月初めとなっています。
10月末のEUサミットのあたりから、アイルランドを主役とした欧州財政危機第2幕が始まりました。しかし、その中でも、これまでのところ2年もの独国債利回りは年初の水準よりわずかに高い、0.9%程度での高止まりが続いています。
これは、11月初めのFOMC(米連邦公開市場委員会)、米10月雇用統計発表などをきっかけに米金利が反発に向い、それがリード役になり世界的に金利上昇の動きになる中で、独金利もそれに連動している影響が大きいでしよう。
それにしても、これまでのところは米金利上昇に伴う米ドルの買い戻しが強いわけですが、独金利がこのまま大きく下がらない中でもユーロが大きく売り込まれ、「ユーロ危機第2幕」になるといったことはあるのでしょうか?
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