パウエルFRB議長が利下げ示唆で米ドル売りに! 8月21日まではニュージーランドドル/米ドルの下落で米ドル高で推移
西原宏一(以下、トレーダー西原) みなさん、こんにちは。
しかし、いつまでも暑いですね。叶内さんは最近の暑さでどんな工夫をされていますか?
叶内文子(以下、MC叶内) 私はこの夏、冷蔵庫にお茶のピッチャーを常備するようになりました。水出しの緑茶とか玄米茶とか紅茶とか気分で変えています。
トレーダー西原 それはいいですね。僕はわんこの散歩を早めて、日の出頃に済ませるようにしました。そうしないと暑くてわんこが持ちません。
さて、それでは、市場の熱さも分析していきましょうか? 叶内さん、まず先週(8月18日~)の株の振り返りからお願いします。
MC叶内 はい。8月22日(金)のジャクソンホール会合でのパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長講演を待つ形で、米国株は木曜日(8月21日)まで軟調に推移しました。特にナスダック総合指数、SOX、マグニフィセントセブン(※)の下げが目立ちました。
(※マグニフィセントセブンとは、米株式市場を代表するテクノロジー企業であるアルファベット、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフト、テスラ、エヌビディアの7社を指す)
これを受ける形で、日経平均は745円(1.7%)安の4万2633円と、3週ぶりに下落しています。火曜日(8月19日)の朝には4万3800円台まで上昇しましたが、そこからは牽引役だった主力株に利益確定売りが目立ちました。ただ、全面安ではなく、銀行株、中小型や業績の変化が見られるものには買いが入っています。
そして、注目のジャクソンホール会合でのパウエル議長講演を受けて、週末の米国株は一気に上昇しました。パウエル議長が利下げを示唆、インフレ再燃への警戒感も示したものの、市場は予想外のハト派姿勢と受け止め、NYダウは過去最高値を更新、3指数そろって1.5%以上の上昇を見せました。
週間ベースでNYダウは前週末比685.62ドル(1.52%)高の45631.74ドルで終えています。ただ、ナスダック総合指数は戻し切れず0.58%安、S&P500はほぼ横ばい0.02%高でした。
為替はいかがでしたか?
トレーダー西原 先週は、8月13日(水)のブルームバーグのテレビインタビューで、ベッセント米財務長官がFRBに対し、「9月に50ベーシスポイントの利下げから始まり、一連の利下げを行うことができる」とコメントしたことから、「マーケットのコンセンサスは米ドル安」でスタート。
ところが、木曜日までは総じて米ドル高に推移。その要因はニュージーランドドル/米ドルの下落(米ドル高)でした。そのきっかけは、8月20日(水)のRBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])会合にあります。
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RBNZはコンセンサスどおり3.25%から0.25ポイントの利下げを決定。加えて、インフレ見通しを引き上げる一方、同時に公表した最新予測で、さらに2回の0.25%利下げの可能性が十分あることを示唆しました。
これを受け、ニュージーランドドル/米ドルは大きく値を下げ、ニュージーランドドル/円も約1円下落して、一時86.00円割れまで下落。
その結果、週初のコンセンサスとは異なり、ユーロ/米ドルは反落、米ドル/円も踏み上がる展開になりました。
しかし、金曜日(8月22日)にパウエル議長が「経済リスクの『変化』がFRBの利下げの必要性を強める」とコメントしたことから、9月17日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)の利下げ織り込み度は83%に上昇。年末までに2.1回程度の利下げを織り込み始めました。
結果として、週初のマーケットのコンセンサスどおりに米ドル売りに。この米金利の低下と米ドル安が当面続くのかがポイントでしょうか?
叶内さん、今週(8月25日~)の展望の前に、今週のスケジュールと株の注目ポイントをお願いします。
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ユーロ/円は175円超えへ! 米利下げ期待でのユーロ/米ドル続伸と、日経平均の上昇が支え。ウクライナ戦争終焉期待の後退に注意
MC叶内 今週の株式市場はジャクソンホールを通過し、米利下げ期待で上昇して始まりそうです。
次の大きな材料は、8月27日(水)の米半導体大手エヌビディアの2Q決算発表です。アナリストのコンセンサスでは売上高は約459億8000万ドルだそうです。会社計画は450億ドル±2%。これまで予想を上回ることが「ふつう」でしたから、今回も市場は期待しているでしょう。
注目ポイントはBlackwell(エヌビディアが開発した次世代のGPU)生産・出荷状況、中国市場の影響、粗利益率、そして3Qの予想をどのあたりで出してくるかです。カンファレンスでのファンCEOの発言も気になります。株価はどう反応するのか、今後の半導体AI関連株の行方を占う大イベントになります。日本時間では8月28日(木)早朝に予定されています。
そのほか、経済指標では8月29日(金)の米7月個人消費支出(PCE)物価指数が重要です。ただ、パウエル議長から利下げが示唆されているので、よほどインフレが高まっていなければマーケットの反応は大きくないと想像します。
8月25日(月)に米7月新築住宅販売件数、8月26日(火)に米8月消費者信頼感指数、8月28日(木)に米4~6月期GDP改定値、ECB(欧州中央銀行)の議事要旨が公表されます。
決算発表もAI絡みで注目されているところが意外と多く、8月27日(水)にクラウドストライク、ヒューレット・パッカード、スノーフレイク、8月28日(木)にデル・テクノロジーズ。個人消費関連でギャップが8月28日(木)、半導体関連で8月29日(金)にトリケミカル研究所が決算発表を行います。
国内経済指標では、8月29日(金)の8月東京都区部CPI(消費者物価指数)に注目。日銀利上げ思惑が高まっていますが、8月28日(木)に2年国債入札もあります。そのほか、8月25日(月)に7月全国百貨店売上高、8月29日(金)に7月失業率・有効求人倍率が出ます。
為替はどうなるでしょうか?
トレーダー西原 まず米金利の低下期待は米ドル安を誘引しますが、株のサポート要因にもなります。
叶内さんがご指摘されているように、エヌビディアの決算が気になるところですが、日経平均が再び史上最高値を更新することを期待しています。
日経平均の上昇は通常、円安を誘引します。ところが、米の利下げ期待から米ドル/円は上値も重く、145~151円でのもみ合いに終始。
そこで注目したいのがユーロ/円です。米ドル売りでユーロ/米ドルは続伸すると想定され、株が上昇すれば、米ドル/円も底堅くなる。結果、ユーロ/円は続伸すると考えます。
加えて、通貨ペアと日経平均との相関性にも注目です。日足の米ドル/円と日経平均のチャートを見てみましょう。

(出所:TradingView)
今年の春先から、日経平均が続伸しても、米ドル/円は追随してきません。
次のチャートは、同じく日足のユーロ/円と日経平均です。こちらは、日経平均の上昇につれて、ユーロ/円が上昇しています。

(出所:TradingView)
昨年(2024年)まで、リスクアセットの代表は豪/ドル円だったのですが、トランプ関税以降、株の上昇に豪ドル/円は追随せず。
こうした株との相関性もあって、ユーロ/円は引き続き175円を超えて続伸すると見ています。米ドル/円は引き続き145円~152円のレンジでしょうか?
ユーロ関連のリスクは、ウクライナ戦争終焉期待の後退になるため、今週もウクライナ関連のニュースはちゃんと抑えておきたいところです。
トレーダー西原 MC叶内 それでは、今週も株と為替のトレードを楽しんで行きましょう!
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