(「後藤田明広氏に聞く(1) ギリシャはデフォルト同然。ユーロは2分割すべき!」からつづく)
■ドイツは欧州のアメリカになれ!
後藤田さんは「ギリシャの財政問題を解決するカギを握っているのはドイツ」と話す。
「ドイツは経常収支の黒字国。日本と似ていて、輸出の方が輸入より多いんですね。あまりドイツ国民は消費しない、内需が弱いというところがあるんです。
だから、ドイツ国民の消費を増やし、ギリシャなどPIIGS諸国からモノをたくさん買えばいいんです。
それには先ほどお話ししたとおり、ユーロを2分割して、PIIGS諸国の通貨を割安にし、PIIGS諸国の製品が割安で魅力的になるようにすればいいのですが、それが実際問題できないとなると…。別の方法として、ドイツ国民の賃金を上げることが考えられます。
実はドイツは国策によって賃金があまり上がらないように抑えているんです。
ドイツの単位労働コストの伸びは、ほぼ一貫してギリシャよりかなり低く、ユーロ圏全体よりも低い水準に止まってきたんですね(下のグラフ参照)。
ドイツはユーロ圏ナンバー1の経済規模を誇るのに労働者の賃金は上がっていないのが現実なんです」

いったい、それはなぜなのだろうか?
「旧西ドイツと旧東ドイツには当然のごとく、大きな賃金格差がありました。そして、両者の統合後、賃金を上げていくと、両者の賃金格差が開くことにつながりやすいので、国策として全体的な賃金上昇を抑えていたのです。
けれど、ここでドイツの労働者の賃金を上げ、ドイツの人たちがもっと消費を楽しむようなライフスタイルに変わってくれれば、まわりまわって、ギリシャなどPIIGS諸国の経済も上向くと思われるんですね」
消費を楽しむようなライフスタイルといえば、思い浮かぶのはアメリカ。つまり、「ドイツは欧州のアメリカになれ!」というのが後藤田さんの意見だ。それがギリシャ復活へつながるということなのだ。
■ユーロ/米ドルは1.1ドル程度まで下がる
では、ここで為替のことに話を移そう。後藤田さんは「私はあくまで債券中心に見ていて、為替は専門外なのですが…」とのことだが、そこをお願いして、今回はユーロ/米ドル相場の見通しを聞いてみた。
「まず、そもそもユーロは高すぎたのではないかと思っています。サブプライムショック前の時期、つまり住宅バブルが進んでいた時期、アメリカの方が欧州よりも若干、経済成長率が高かったんです。
にもかかわらず、その間、基本的にはずっとユーロ高が進み、サブプライムショック後もしばらくはユーロ高が進み、2008年にユーロ/米ドルは1.6ドル台まで上昇しました。これはユーロが高すぎたと思うんですね。
だから、今はそれの巻き戻しが入っているとも言えます。
先ほどお話ししたような『ずるずるシナリオ』になれば、ギリシャ問題、PIIGS問題は当面くすぶり続けるでしょう。そうなれば、いわゆる出口戦略の面でも、ユーロ圏の方がアメリカより早く利上げモードに入るとは考えにくい。
となると、まだ今後もユーロ安・米ドル高が進み、ユーロ/米ドルは1.2ドルをあっさり割れて、いずれ1.1ドルぐらいまで下がるのではないかと思っています」
ユーロ/米ドル 月足

「ただ、下がるといっても、どこかでは歯止めがかかってくると思うので、1.0ドルまでは行かず、だいたい1.1ドルくらいかなと見ているんです」
■日本国債のデフォルトはあるのか?
最後に、せっかく債券の専門家に取材したので、我が日本の国債について話を聞いてみた。このところ、ギリシャだけでなく、日本の財政赤字が膨らんでいることもよく話題になるが、日本国債は大丈夫なのだろうか?
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