そのギリシャについて、2月上旬という早い段階で「ギリシャは第2のリーマンか?」と題したレポートを発表し、また、5月上旬の段階で「ギリシャ国債は既にデフォルトしていると見たほうがよいと思われる」と論じていたのがT&Cフィナンシャルリサーチ・国際金融情報部の後藤田明広さんだ。

後藤田さんがそうコメントしていたのはT&Cフィナンシャルリサーチが発行する「G20マーケット・インサイト」というレポート。ちなみに同レポートでは、ザイFX!の連載でおなじみの吉田恒さんも執筆している。
「ギリシャ国債は既にデフォルトしている」とはずいぶん刺激的だが、後藤田さんの真意はどこにあるのか? 債券の専門家である後藤田さんから見て、ギリシャはもう死んでいるというのだろうか!?
■ギリシャはすでに死んでいる!?
「もちろん、ギリシャが本当にデフォルトしたと言ってるわけではないですよ。
メリルリンチ証券が作成している債券の指標があるんですが、それを見ると、5月上旬の市場が荒れた段階で、格付けCCC以下の新興市場国債よりも、ギリシャ国債のほうが利回りが高い状態だったんです。格付けCCC以下に評価されているということは、つまりギリシャ国債はデフォルト同然ということですよ」
「もうこんな債券、怖くていらない!」と機関投資家などが売りに走れば、債券価格は下落する。その債券に対して支払われるはずの利子は変わらないので、価格が下落すれば、利回りは上昇することになる。
そして、国債の格付けでCCCというのは、デフォルト寸前という意味だ。ギリシャ国債はデフォルト寸前の債券よりも利回りが高くなってしまったのだから、市場はギリシャ国債がデフォルトしたとみなしているようなもの、という話なのだ。

■ギリシャは第2のリーマンか?
では、「ギリシャは第2のリーマンか?」というのはどういう意味なのだろう? リーマンというのはもちろん、リーマン・ブラザーズ証券のこと。2008年9月に起こったあのリーマン・ショックのようなことがまたやってくるということだろうか?
「今回、私が『第2のリーマン・ショック』になり得るかなと思ったのは、『危機は伝播する』ということです。
リーマン・ブラザーズが破綻して、『100年に一度』とも表現されるような不況になったわけですが、今回も、もしギリシャが最悪デフォルトしてしまうと、その次に財政問題が大きいポルトガルに問題が波及し、さらにスペイン、アイルランド、イタリアなど欧州の財政的に弱いところへ危機が伝播していくのではないかということなんです。
英語ではこれを「コンテイジョン」(contagion)と言いますが、1990年代にはアジア通貨危機で同様のことが起こりました」
■「良いユーロ」と「悪いユーロ」に分割すべき!
危機の伝播とは、金融市場にとって怖い話だが、一方、5月にはギリシャなどに対する支援策も次々と発表された。
5月2日、EU(欧州連合)はIMF(国際通貨基金)と共同でギリシャに対し、総額1100億ユーロ(約12兆円)の協調融資を実施することを発表した。
また、5月10日、EUはIMFと共同でユーロ導入国の財政危機に備え、最大7500億ユーロ(約85兆円)の「ユーロ安定化基金」を創設すると発表している。こういった支援策、危機対策で安心というわけにはいかないのだろうか?
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