■ギリシャのデフォルト懸念が高まる
このところ、為替相場の動きが大きくなっている。
今、一番注目されているのはユーロ圏の財政問題。ギリシャがデフォルトするのではないかという懸念が高まるとともに、それがさらに他のPIIGS諸国(※)にも波及するという見方が強まっている。
ギリシャ、イタリア国債の価格急落(利回り上昇)、一部格付け会社によるアイルランド国債の格付け引き下げといったイベントを受け、ユーロは7月11日(月)~12日(火)と急落した。
これを少し荒っぽくまとめると、「ユーロ圏の一部の国が借金踏み倒し宣言をする可能性が高まっていますよ」ということだ。
(※「PIIGS」とは欧州で財政面に不安があると言われるポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペインを指す言葉)
■バーナンキFRB議長はQE3の可能性に言及
一方、米国経済も順調とは言えない。7月8日(金)に発表された米国雇用統計は市場予想よりも大幅に悪いものとなり、7月13日(水)にはFRB(米連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長が議会証言で、QE3(量的緩和策第3弾)実施の可能性ついて言及した。
こちらも少し荒っぽくまとめると、「米国経済は今イチなので、場合によっては、世の中に流通する米ドルをもっと増やすかもしれませんよ」ということだ。
また、このところ、米国では「連邦債務の上限引き上げ」で合意が得られるかどうかという問題もくすぶっている。もしも、合意が得られないようなことがあると米国は「テクニカル・デフォルト」を起こす可能性がある。
こうしたことを受け、ユーロ/米ドル相場は荒っぽく下がったり、上がったりしている。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
ユーロ圏、米国に比べ、相対的に話題が少なく、他よりはマシ(?)というのが日本。「リスク回避→円が買われる」という最近ではおなじみの動きが起こり、多くの通貨に対して今週は全般的に円高が進行している。
●円高進行の理由については、今井雅人さんのコラムでも解説されています。こちらもご覧ください。
⇒「米ドル/円が78円台まで下落! ここまで円高が進んだ理由とは?」
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
■ついに動き出し、78円台に突入した米ドル/円相場
そんな中、注目されるのが米ドル/円の動きだ。
米ドル/円が80円の大台を割れたことは歴史的に見ても、あまり多くない。戦後の変動相場制以降、つい最近に至るまで、1995年4月に短期間あっただけという状況だった。このときの米ドル/円最安値が79.75円。
この最安値を割れて、一気に下落したのが東日本大震災後の3月17日(木)。このときは一時、76.25円まで急落した。
その後はG7による協調介入があり、今度は一気に米ドル高・円安へ。4月には一時、85円台をつけるまで米ドル/円は上昇した。
このあたりは非常にダイナミックな動きをしていた米ドル/円だが、5月に入ったあたりからかなりの小動きに。79円台後半~82円台前半の狭いボックス相場が続いていた。それも79円台や82円台に滞在した時間帯は長くなく、いつ見ても80円台か81円台という感じ。
「米ドル/円は動かないな~」と感じていたFXトレーダーは少なくなかったはずだ。
それが7月12日(火)に80円台を割れ79円台へ入ると、7月13日(水)には一時急落して78円台に突入。完全にそれまでのボックス相場を下に抜けた形になっている。
そして、本日、7月14日(木)になると、近くて遠い存在だった78円台がもはや普通といった様相になっている。
しかし、今まで述べてきたとおり、この「米ドル/円の78円台が普通」という状況は歴史的に見てもかなり珍しい状況なのだ。
そして、今後は3月17日(木)の安値、76.25円が意識される一方、再び為替介入があるかどうかが注目されるだろう。
■日本時間早朝の急激な値動きには要注意
1つ注意したいのは、米ドル/円の急落が日本時間の早朝に起こりやすくなっている点だ。ニューヨーク市場が終わってから東京市場が開くまでは為替の取引量が少なく、少ない売買で大きく値が動く可能性が高い時間帯。
7月13日(水)も7月14日(木)も日本時間の早朝に急落は起こっている(ただ、本日7月14日(木)については東京市場が開いてから、早朝に急落したレベルをさらに割り込んでいるが…)。
(出所:米国FXCM)
さらに言えば、東日本大震災後の3月17日(木)も急落は日本時間の早朝に起こっていた。
こういったことから、日本時間早朝の値動きには要注意だろう。
大きな値動きのあるときに、大きく稼ぎたいというアクティブなトレーダーは、早起きしてチャンスを待つのも1つの手かもしれない。
(ザイFX!編集部・井口稔)
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)