延々と先週の事例をご説明してきたが、その目的はただひとつ、「なぜ、英ポンドは大きくリバウンドできたか?」を解明しておくことだ。
要するに、性急に作られたショートポジション(売り持ち)が多かったために、踏み上げられたわけだ。最近のユーロ/米ドルの上昇に関しても、基本的には、同じロジックで解明できる。
このような解釈を理解し、納得できれば、今後のトレンドが一層鮮明に見えてくるだろう。
まず、英ポンド/円の上昇が一服し、そして、英ポンド/米ドルの踏み上げが一巡すると想定できる。
■米ドル/円は調整があっても、ブルトレンドを維持する!
ドルインデックスは、上昇トレンドを続ける可能性が高い。したがって、英ポンド/円、英ポンド/米ドルは売り圧力にさらされるだろう。
さらに、米ドル高を引っ張ってきた円売りがそろそろ一服し、今後は、円以外の外貨安が米ドル高をリードする公算が高い。
ゆえに、英ポンド/米ドル、ユーロ/米ドルなどの主要通貨ペアは、これから売られる可能性が高いといったシナリオが描ける。
また、このような見方が正しければ、下のチャートのように、英ポンド/米ドルは今度こそ「教科書どおり」に「三尊型」を形成し、反落してくるといった結論が得られる。
(出所:米国FXCM)
さらに、英ポンド/円などクロス円に暴落の兆しが読み取れないので、米ドル/円は調整があっても、基本的にはブル(強気)トレンドを維持できるといった予測もできる。
ドルインデックスとの連動性はやや薄れるだろうが、引き続き、米ドル/円は上昇基調を保てるだろう。大台の85円のターゲットは堅持しておく。
■「QE3」が実施されても、影響が限定的と考えるワケは?
最後に、米ドル全体のブルトレンドを加速させるには、米国の「QE3(量的緩和策第3弾)」に関する思惑が解消されることが不可欠だということを、ご説明させていただこう。
値動きが先で、材料が後からついてくるという前提だと、4月までに一段の米ドル高があれば、「QE3」は実施されない可能性が高まるだろう。
ただ、最近になって、中国に関する悲観論が急速に浮上してきた。このあたりの事情は流動的であるため、「QE3」が実施されないとは言い切れなくなった。
しかし、次の2点に注意すれば、「QE3」が実施されても、その影響は限定的であると想定できる。
まず、今年は米国の大統領選が行われる。7月までに「QE3」が実施されなければ、政治的な思惑を避けるために、FRB(米連邦準備制度理事会)は実施を断念するだろう。
早ければ、4月末のFOMC(米連邦公開市場委員会)で「QE3」の有無が明らかにされることも考えられる。それによって不確実性が減り、結果的に、米ドルへの影響は限定的になる。
2つ目は、「FRBが『QE3』を不胎化するといった報道が、FRBメンバーから語られたのではなく、WSJ(ウォールストリート・ジャーナル)の『御用記者』へのリークにより伝えられた」ということだ。
ここから、米ドルへのマイナス効果を最小限にとどめたいといった「配慮」が読み取れる。さらに、アナウンス効果を狙って、本当は「QE3」の「不胎化」ではなく、「QE3」自体を「不胎化」する可能性がある。
このあたりの話は、中国の景気減速懸念の真贋(しんがん)とともに、次回、ご説明させていただこう。
(2012年3月23日 14:00執筆)
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