つまり、ショートポジションがかなり早いスピードで積み上げられているにもかかわらず、レートのほうはまだ高いレベルにあるのだ。これは、リーマン・ショックがあった2008年秋の状況と見比べれば、さらに一目瞭然であろう。
2008年7月から同年の10月末まで、ユーロは約23%も急落し、2009年11月から翌2010年6月までは22%近い下落率を記録した。
だが、昨年5月から始まった下落変動は、1年をかけて約16%の下落率しか達成していない。
※都合により、データは5月8日現在のものとなっています。
今年1月に、ユーロ・ショートは史上最高レベルに達したが、現在も極限まで積み上げられていて、ショートポジションは「前例なし」のレベルにまで膨らんでいる。
ところが、ユーロの下落は、値幅にしても、スピードにしても、相応するものとは言い難い。ここも一種のダイバージェンスとなったわけだ。
■豪ドル急落といっても、リーマン・ショック時ほどではない
ところで、ダイバージェンスの話をすると、もう1つの通貨に注目しないわけにはいかない。急落の続いている豪ドルである。
こちらもCFTC統計を見てみよう。すると、5月15日(火)時点のネットロングは4734枚しかなく、本日あたりはニュートラルか売り越しになっていてもおかしくないだろう。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
言うまでもないが、ギリシャ危機に加え、中国のハードランディング懸念や豪州の大幅利下げが豪ドル急落の背景にある。さらなる利下げも示唆され、マイナス材料に事欠かない中、豪ドルの下落は当然のように思われる。これからも下がると予想されがちである。
だが、過去の事例と見比べなければ、今の状況が行き過ぎか、否かは判断できない。
前回、豪ドルが売り越しになったのはいつかと調べると、それはあの「100年に一度の危機」と言われたリーマン・ショックの後であった。
※都合により、データは5月8日現在のものとなっています。
足元でも豪ドルのマイナス材料は多いものの、やはり、2008年秋のリーマン・ショックのインパクトとは比べものにならない。
2008年7月から10月末までの「暴落ぶり」と比べると、下げたとはいっても、今の豪ドルの下落は「かわいい」程度にしか見えない。これも、強烈なダイバージェンスを示す好例と見ている。
■中短期で見れば、さらなるユーロ安、豪ドル安は困難!
以上、ユーロにしても、豪ドルにしても、さらなる下値予想が多いが、そのような中でも、あえて今は「売られ過ぎ」になっているというシナリオを堅持したい。
少なくとも、中短期のスパンでは、調整なしでさらに下落するのは困難と思っている。
もちろん、こういった予測の前提条件は、ギリシャのユーロ離脱がすぐに起こらないことである。離脱があれば、一時的にせよ、マーケットがパニック的な反応を示し、さらなる暴落が引き起こされる可能性は高い。
ただし、この部分に関して、次の2点を指摘しておきたい。
1、 マーケットはギリシャの離脱を全部ではないにしても、かなりの部分を織り込んでいる。
2、前記のダイバージェンスの状況から推測すれば、近々、ギリシャが離脱するよりも、ユーロ圏にとどまる確率のほうが高いだろう。
このあたりの話は、また次回に!
なお次週、6月1日(金)は社用で中国出張のため、本コラムをお休みさせていただくことをご了承いただきたい。
それでは、みなさん、よい取引&よい週末を!
(2012年5月25日 東京時間14:00執筆)
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