昨日の注目はECBの理事会であった。こんなに関心を集めたECBの会合は珍しい。いかんせん、先週の木曜日にドラギ総裁が「ユーロのために何でもする」と発言したからだが、これはマーケットにとっては即効性のある手を次の会合のときにでも打ち出してくると思わせるには十分であった。ちょうどこのタイミングよく、スペイン債が急落を演じ、10年債の利回りが7.7%を越えてきたときと一致だったからだ。
このままでは放っておけない、だから何かするのだと理解されても仕方がない。しかし金融当局者としては「なんでもやって最善を尽くす」というのはどのようなときでも取るべき態度なのであって、格別に変わったことを言ったのでもなければ、もちろんウソをついたわけではない。あくまでも当たり前のことを発言したに過ぎない。
しかしマーケットのほうが誤解をしてしまうかもしれないという混乱を起こすリスクをはらんでいる。そしてこれは「マーケットとの対話」を重視していないとも取られかねない。悪く考えると、わざと誤解を招くような事を言ったのだとしたら、今後に遺恨を残すこととなり、市場との対話はおぼつかなくなる。
そうした状況のもとで、昨日のECBは発表された。政策金利に変更はなし。一部には利下げもありうるとする向きすらもあったので、これでまずは第一段の失望となった。それでもマーケットが崩れることはなく、やはりドラギ総裁の見解を聞いてからというスタンスのほうが強かった。
ユーロドルは徐々に上がってきて、21時半の会見の直前ではユーロドルは1.23台に乗せこんできた、そして欧州株も噴き上がり、グローベックスでの米国株も高値張り付きの状態となった。私は1.23台の後半で売りたいと思っていたのだが、ドラギ総裁の発言までは1.2340あたりがトップであり、もう待ちたくないのでいっそのこと売ってしまおうかとも考えた。
しかしやはりこんなに高いのだから本当に何かしてくるのかも…。目標は先週のドラギ発言の後の戻し高値である1.2389なので、とりあえず1.2380でオファーを出し、そして前日と同じように1.2410でストップ注文も出してある。そうするといつの間にダンになったのかわからないくらいに、ドラギ総裁の会見が始まるとともにユーロドルは1.24台まで行ったようで、売れたと認識したときには、すでに下がっており、フェイバーになっていた。高値は1.2402までだったらしく、運よくストップ注文はセーフ(汗)。
ニュースで中味はいちいち見ながらということはできなかったが、想像はつく。ドイツ連銀とも調整するといっていたが、結論は出ていないのであろう。また債券買い取りもやるにはしても、いつやるのかは不透明といったような感じなのだろうと想像しつつ、ユーロのレートを追いかける方が忙しかった。
ユーロドルの下落は急激で、それまでの期待分をすべてはぎ落そうとする勢いだ。10分くらいで1.21台にまで突入した。しかしその後はまた急なショートカバーに見舞われだしたので、私も1.22台の前半で買い戻した。しかしユーロの戻りは大きくなく、それだけ失望が大きかったことを示している。その後のニューヨーク時間ではユーロドルは1.21台での値動きが中心となった。
さて本日は雇用統計。予想では就業者数は10万人前後の増加が見込まれている。直近の過去3回のデータはいずれも予想を下回っているので、今回もどうせ良くないだろうとの見方が強い。確かに多少悪くても、そんなものかとマーケットの反応は鈍いだろう。底値から切り返してきた米国株も昨日の安値を抜けてくるのは困難だろうし、リスク回避になっても一時的なもので終わってしまうかもしれない。
昨日までの金利会合と反対で、雇用に関しては期待がほとんどない分だけ、良かった場合の反応のほうが面白そうだ。私もユーロ円の94円台か、ユーロドルの1.20台が指標発表前にでもあるならば、いったんは拾ってみてもよいかなと考えている。
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