■2014年は欧米金融政策の相違がいっそう鮮明に
遅くなりましたが、新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
2013年~2014年の年末年始の相場は、やや波乱があったが、総じて米ドルの全面高基調を維持していると思う。
ドルインデックスは12月27日(金)に一時79.68の安値をつけたが、そこから順調に回復し、81の節目打診を果たした。対応するかのように、ユーロ/米ドルも同日に1.3893ドルまで高値更新してから反落、昨日(1月9日)は一時1.3550ドルを割れるところまで下落した。

(出所:米国FXCM)

(出所:米国FXCM)
こういった値動きは、2014年の相場のテーマを暗示しているようにみえる。
言ってみれば、欧米金融政策の相違は今年(2014年)になってから一段と鮮明になっていくはずで、「割高」のユーロが売られ、「割安」な米ドルが買われるのが今年のメイン基調になる公算が大きい。ユーロのブチバブルは延長されたが、これから崩壊に向かう可能性が高いとみる。
1月9日(木)のドラギECB(欧州中央銀行)総裁の発言もこれを証左する材料だ。
ドラギ総裁はフォワードガイダンスを強めたと発言、必要がある限り金融政策を緩和的なスタンスに維持すると明言した。
一方、米サイドは慎重な立場を崩していないものの、今月(1月)から出口政策を実施していく。したがって、欧米の金融政策は二極化していき、それがこれからじわじわ相場に影響力を発揮してこよう。
■日欧の緩和政策が相場に与える影響の相違点とは?
EU(欧州連合)と同じく緩和政策を継続する日本の、米金融政策との格差は基本的に同じような構造となるが、相場における事情は異なる点も見逃せない。
具体的に2013年1月安値と2013年最高値で測るパフォーマンスを見てみよう。ユーロ/米ドルは+6.89%と上昇し、ユーロ高・米ドル安となっていたのに対し、米ドル/円は+29%と大幅な米ドル高・円安になっていた。
こういった違いでわかるように、同じ緩和政策を続ける日欧同士の差も大きく、円の場合、明らかに過激に反応していた。

(出所:米国FXCM)

(出所:米国FXCM)
言い換えれば、円サイドは日銀の金融政策をいち早く織り込んでおり、また日銀のさらなる緩和政策に対する期待感が大きい。それと比べると、ユーロは金融政策をあまり織り込んでいない。織り込んでいくなら、むしろこれからで、その余地は大きいと言える。
つまり、円が金融政策を過剰に織り込んでいる間、ユーロは随分出遅れているから、これからのユーロ/円の修正余地は、より大きいということである。
■ユーロ/円、英ポンド/円の本格的な反落はこれから
2013年末には、ユーロ/円が一時145.69円まで買われたが、明らかにオーバーボート(買われすぎ)であり、目先の反落は、まだ序の口にすぎないだろう。
日米金融政策の相違は米ドル/円のほうが先に織り込んでいるし、欧米金融政策の格差がこれからユーロ/米ドルのレートに反映される以上、ユーロ/円には、より大きな下落余地があるのではないか。昨年(2013年)の年末コラムにて指摘した20円超の反落余地は、もはや最小値幅ではないかと思う。
【参考記事】
●2014年春にイエレン・ショックの可能性!米ドル/円の上値目標は110円と控えめに(2013年12月27日、陳満咲杜)

(出所:米国FXCM)
事情がやや異なるが、英ポンド/円も基本的に同じ構造になりつつある。ECBほど明確な緩和姿勢ではないが、2013年年末まで続いた英ポンド高は、米サイドの政策転換をまだ織り込んでいない公算が大きい以上、今年(2014年)は修正される可能性が高い。
ゆえに、英ポンド/円が1月2日(木)に達成した174.83円の高値は明らかにオーバーした値動きで、本格的な反落はこれからであろう。
とはいえ、ここで一気に反落していくかどうかはやや難しい判断となる。
肝心の米ドル/円は、1月2日(木)に105.44円まで上昇し、筆者が提示していた105.50円-105.55円というメインターゲットにかなり近づいてきたが、本日(1月10日)の米雇用統計次第では、もう1回高値更新を果たす可能性も否めない。
ただし、仮に高値更新があっても上値限定といった判断は不変。先週こそ陰線引けしたものの、10月最後の週から年末まで続いた週足の9連続陽線は連続陽線引けの最大記録となっており、相場の過熱感を示唆している。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)
高値更新があれば、むしろロング筋の手仕舞い好機とみなされるのではないか。これからの本格的な調整に備えるべきだ。
■今は無闇に上値を追うべきときではない
構造的には、本コラムでもたびたび指摘してきたように、史上最安値から足元まで、米ドル/円は5波構造をもって大きく切り返してきたが、現在はその最終段階、つまり第5波の頂点に位置するか、すでに頂点を超えたところにある。
長期スパンでは、円安のなお途上とはいえ、1回も本格的な調整なしで一直線に押し進むのは不可能だから、新年早々、反落のリスクを警戒したほうが無難であろう。
もちろん、105.50円-105.55円を超えて、107円台まで上昇余地を拓く可能性がまったくないわけでもない。為替相場はオーバーボート、あるいはオーバーシュートになりやすく、また修正するまで時間がかかるといった習性があるから、目先の上値余地は一段と拡大する可能性もある。
ただし、こういった限定されたリターンにどれだけリスクを負うべきかを考えずに、無闇に上値を追うべきではなかろう。2012年年末~2013年年初の相場と違い、現在はポスト・アベノミクスとも言える段階なので、リスクオンより、リスクオフの可能性をしっかり頭に置いておきたい。
■今後は米ドル/円と日経平均の関係に注目
この意味では、高い相関性を維持してきた米ドル/円と日経平均の関係に注目したい。
最近、両者の相関性、やや薄れているように見えるが、米ドル/円が日経平均を追随し、反落幅を拡大していくか、それとも日経平均が米ドル/円の値動きに接近し、もう1回高値更新を狙うかは見どころであり、興味深いテーマだ。
(出所:米国FXCM)
最後に、日経平均は大発会から大きく反落し、「馬尻下がり」の可能性を暗示しているようにみえる。米ドル/円と同様、日経平均は先駆けとなり、かつ過激にアベノミクスの効果を織り込み、また日銀の金融政策に過大な期待をかけてきた。その分、相場の春吹雪を覚悟したほうが良さそうだ。
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