(「住友商事・高井裕之氏に聞く原油相場(1)原油暴落でも減産しなかったサウジの思惑」からつづく)
トレーダーとして、あるいは原油開発の現場で活躍した高井裕之さん。プロも認める原油のプロに大橋ひろこさんが直撃した今回の対談。
第2回目となる今回は、原油価格と米ドルの関係や、原油の需給を見る上で欠かせない指標やその活用法など、実践的な話が続出!
■シェールオイルの採算ラインは?
ひろこ 原油価格が下がるたびにマーケット関係者は「採算ラインはどこだ!」と大騒ぎします。とくにシェールオイルは採算ラインが通常の油田に比べて高いとされています。
しかし、最近ではシェールオイルの開発業者がずいぶんコストダウンを進めて、安い価格に耐えられるようになったとも聞きます。
高井 私がシェールオイルの開発に携わった4~5年前だと、「マジックナンバー」は70ドルと言われていました。
「70ドル以上ならシェールオイルの開発業者が儲かる」という認識です。
現場のエンジニアたちも毎朝、ウォールストリート・ジャーナルでWTI原油価格が70ドル以上であることを確認して操業していたものです。
それが最近ではどんどん下落して、40ドルを切っても掘り続けている。シェール関連業者はものすごい合理化で、生産性を飛躍的に向上させ、採掘コストを引き下げているんです。

(出所:CQG)
ひろこ でも、OPEC(石油輸出国機構)が減産を見送った2014年11月以降、「稼働リグ数」は減っていますよね。って、そもそもザイFX!の読者には「リグ」という言葉がなじみがないかもしれません。高井さん、リグとは何でしょうか?
【参考記事】
●住友商事・高井裕之氏に聞く原油相場(1) 原油暴落でも減産しなかったサウジの思惑

ザイFX!読者にはあまりなじみのない「リグ」について、高井さんに質問する大橋さん
高井 リグは掘削装置。原油の井戸を掘るための「やぐら」のことです。シェールオイルの開発では、リグで油のある地層(シェール層)まで掘り下げて、そこからドリルを水平方向に曲げて井戸を掘っていきます。

シェールオイルの採掘に用いる掘削装置「リグ」。 このリグで油のあるシェール層まで掘り下げて、そこからドリルを水平方向に曲げて井戸を掘っていくそうだ (C)AP/アフロ
高井 シェール開発業者はこれまで2000メートルくらい水平に掘っていたのを4000メートルまで伸ばし、また、ひとつのやぐらに対して5本ぐらいの井戸だったのを20本に増やし、同時にリグのリース会社のコストも叩いてと、涙ぐましい努力で採算ラインを下げているんです。

高井 1バレル=70ドルだったマジックナンバーは40ドルから50ドル台まで下がっているのではないでしょうか。

シェール関連企業の努力により、採算ラインは70ドルから40~50ドル台まで下がってきているのではないかというのが高井さんの見解だ
(次ページでは下落していた原油がなぜ、上昇に転じたのかという話題が…)
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