■米ドル高頭打ちで原油価格は上昇へ
高井 2015年12月にFRB(米連邦準備制度理事会)が利上げして、今年(2016年)も3、4回の利上げを予告しました。
ところがBrexit(英国のEU離脱)など海外で不安要因が表面化し、年1回すら危うくなってきた。FRBが動けない状態が続いたまま、大統領選挙が近づいてきています。
「もう米ドル高は頭打ちだ、ならば原油も金も、コモディティ全体が買いだろう」という空気になって、今年(2016年)前半にコモディティ全体が上がってきたんですね。

ひろこ 足もとのコモディティ反発は金融要因が大きいようですが、米ドルの動きだけを見ていても原油は取引できるんですか?
高井 もちろん金融要因だけでなく、需給要因も大切ですが、米ドルだけ見ていても大外しはしないでしょう。

「米ドルだけ見ていても原油は取引できるのか?」という大橋さんの質問に対し、「需給要因も大切だが、米ドルだけ見ていても大外しはしない」と答える高井さん
■在庫の減少が需給改善のカギに
ひろこ 個人投資家が原油を取引するとき、参考になる指標は?
高井 在庫はすごく重要です。我々が見ているのは米国原油在庫とOECD(経済協力開発機構)の原油在庫です。
現在は在庫が高水準に積み上がっています。現在は作りすぎて余っているんですね。原油価格が回復するためには在庫量が目に見えて下がる必要がある。

ひろこ 適正な在庫水準はどのくらいなのでしょうか?
高井 2012年~2014年あたりの実績が適正な在庫量でしょう。アメリカの原油在庫が4億5000万バレルぐらいまで下がってきたら需給の本格的な好転と言えるでしょう。
米国はようやく減産を進めていますが、ロシアやイランやイラクは逆に増産しています。需要をいかに伸ばせるかが、在庫を減らすカギとなるでしょう。
![米国原油在庫[戦略備蓄(SPR)除く]](/mwimgs/a/2/-/img_a275932985481af2cc259ed4f448272b68284.jpg)
■中国の原油爆買いは終わったのか?
ひろこ 消費という意味では無視できないのが中国。「中国の需要が下がったから原油価格が落ちたんだ」という解説をよく聞きます。
ところが、中国の原油の輸入量は減っていない。これが不思議なんですが……。
高井 中国は個人消費が好調で、自動車が飛ぶように売れています。そのため、ガソリンが必要になり、中国はずいぶん原油を買っています。
ところが、実体経済はスローダウンしていますから、重油や産業用のディーゼルは余っている。原油を買ってきて精製しても、ガソリン以外の重油や灯油、ディーゼルは輸出してしまうんです。
ひろこ だから輸入量は減らないのに、需給を悪化させてしまうんですね。
■需給改善、シェールの台頭で原油は40-60ドルのレンジへ
高井 とはいえ、アメリカのシェールオイルはスウィング・プロデューサーとして油価を見ながら供給を増減させるので、おそらくこれからのWTI原油価格は40ドルから60ドルの中に収まってくるのではないでしょうか。
(出所:住友商事グローバルリサーチ作成)
(「住友商事・高井裕之氏に聞く原油相場(3)驚きのサウジ大改革を進める「MBS」とは?」へつづく)
(取材・文/ミドルマン・高城泰 撮影/和田佳久)
【ザイFX!編集部からのお知らせ】
本記事に登場した大橋ひろこさんが登場するザイFX!の連載企画が「FX&コモディティ(商品) 今週の作戦会議」。原油をはじめとしたコモディティ(商品)と為替について、大橋さんが元為替ディーラーの西原宏一さんと毎週、注目ポイントを話し合っています。
コモディティがテーマとなっている、こちらのコンテンツもぜひ、ご覧ください。
【参考コンテンツ】
●「FX&コモディティ(商品) 今週の作戦会議」
また、原油などのコモディティはCFDで取引することもできます。今回の高井さんと大橋さんの対談記事や、「FX&コモディティ(商品) 今週の作戦会議」を参考に、コモディティそのものをトレードしたい、でも、どの会社に口座を開けば良いのかわからないという人は、以下のコンテンツもぜひご覧ください。
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