先日、当サイトの「FX実況ちゃんねる」をのぞいていた筆者はあるツイートに目を奪われた。
そのツイートには
宮田先生、コロナも波動で捉えてる。第五波ピークアウトか?
と書かれていたのだ。
宮田先生、コロナも波動で捉えてる。第五波ピークアウトか?https://t.co/rLF52zXgBz #fxch #usdjpy https://t.co/FyBXsrS3K4で実況中
— ラッキー☆ハゲオ (@hageo_01) August 31, 2021
この宮田先生とは宮田直彦氏のことではないだろうか。宮田直彦氏と言えば、エリオット波動の専門家。もしかして、これは宮田氏が新型コロナウイルスの新規陽性者数の推移をエリオット波動で分析しているということだろうか?
果たして、書き込まれていたリンク先へ飛んでみると、それはまさしく8月31日(火)に公開された「宮田直彦のエリオット波動レポート」だった。
5波はエリオット波動で最後の波。そして、日本の新型コロナウイルスの新規陽性者数の波は現在、第5波にある
エリオット波動理論は非常に複雑だ。それを詳しく説明する資格は筆者にはないが、エリオット波動は「上昇5波、下降3波」で構成されるという基本はわかる。それぐらいは知ってるよ、というトレーダーは多いのではないか。
上図はエリオット波動を模式的に示したものだが、「5波」というのは、エリオット波動では大きな上昇波動の最後の波になる。
一方、新型コロナウイルスの新規陽性者数の推移には波があり、現在、日本は第5波にあると言われている。
第5波ということは、エリオット波動的に考えると、日本の新型コロナウイルスの新規陽性者拡大はこれが最後!?みたいな話が連想されるわけだが、おいおいおいおい、ちょっと待て!と思ったトレーダーも多いことだろう。
エリオット波動の上昇5波では、1波、3波、5波はメイン波動と同じ方向の波動になるが、2波、4波はそれとは逆方向に動く。
一方、新型コロナウイルスの新規陽性者数で第1波、第2波…などと呼んでいるのは、すべて感染者数が拡大している時期を指し、グラフで言えば、すべて「山」の部分である。エリオット波動とは話が違う。
いやいや、そんな細かい話の前に、そもそもエリオット波動理論は元々は株式相場を分析するために作られたもの。この理論の提唱者、ラルフ・ネルソン・エリオット(1871年~1948年)もこれがウイルス感染拡大の分析に使われるとは思っていなかっただろう。
それでも、両者を絡ませてみたくなる気持ちも少々。なぜなら、今、流行っている新型コロナウイルスは「デルタ株」だからだ。そこにはちゃんと「株」という言葉が入っている──。
「第5波」という言葉にカギカッコがつけられた背景を推測
話が脱線に脱線を重ねたが、ここで大急ぎで大事なことを確認しておくと、宮田直彦氏はその「エリオット波動レポート」の中で、新型コロナウイルス新規陽性者の推移をエリオット波動では分析していない!
さすがにそんなことはやっていないのだ。だが、しかし…。
8月31日(火)に公開された同レポートの冒頭には以下のように書かれていた。
新型コロナ新規陽性者数の「第5波」が既にピークアウトしたとすれば、それは投資家心理改善につながり、株高に追い風となるでしょう。
宮田直彦氏はエリオット波動の専門家だが、新型コロナ新規陽性者数をエリオット波動で分析はしていないし、さらに8月31日(火)の段階で第5波がピークアウトしたとさえ言っていない。「ピークアウトしたとすれば…」と仮定形の形で、議論を展開しているにすぎない。
(出所:マネースクエア)
しかし、である。宮田氏はある意識を持って、このように書いていたのではないだろうか。「エリオット波動は5波で終わる」という、トレーダーのみんなが知ってるシンプルな話を意識して。
仲間内の雑談ではなく、正式なレポートで、新型コロナ新規陽性者数の波をまさかエリオット波動で分析するわけにはいかないだろう。だから、宮田氏はそんな論理展開はしていない。しかし、そんな論理展開はできないけれど、本当は関連づけて論じてみたい気持ちもちょびっとあるのではないか。
先に引用した宮田レポート冒頭をもう一度、見てみよう。
新型コロナ新規陽性者数の「第5波」が既にピークアウトしたとすれば、それは投資家心理改善につながり、株高に追い風となるでしょう。
第5波という言葉にはカギカッコがつけられ、「第5波」となっているのだ。このカギカッコはさしたる意味なく、何となくつけられたものではきっとない。この文章の書き手は厚生労働省でもNHKでもないのだ。この文章の書き手は他ならぬエリオット波動の専門家なのである。
冒頭に引用したツイートがまさに典型だが、このエリオット波動レポートを読んだ読者には、「エリオット波動は5波で終わる」という話を思い浮かべた人が少なからずいるのではないだろうか。そういったことを意識しながら、ちょっとニヤリとしつつ、第5波という言葉をカギカッコで括って宮田氏は書いたのではないだろうか(筆者の想像です)。
現在、日本のワクチン1回目接種率は60%に達し、2回目接種率は50%近くまで上がってきているようだ。このまま順調にワクチン接種が進んでいけば、まだ波は来るかもしれないけれど、一番高い波は第5波だったということに実際なる可能性もあるのかも…。
(出所:首相官邸)
宮田直彦氏の移籍で、“エリオット波動の本場”にもなっていたマネースクエア
宮田直彦氏は以前、三菱UFJモルガン・スタンレー証券でチーフ・テクニカルアナリストを務めていたが、2020年11月にFX会社のマネースクエアへ転身。それは約10ヵ月前のことだから、比較的最近の話だ。そして現在、宮田氏はマネースクエアでチーフテクニカルアナリスト、マネースクエアアカデミア学長を務めている。
マネースクエアはリピート系発注機能の元祖、トラリピ(トラップリピートイフダン)で知られるFX会社だ。“トラリピのマネースクエア”は、宮田氏の移籍により、“エリオット波動の本場”にもなっていたことになる。
マネースクエアで宮田氏は、月に1回、「宮田直彦のエリオット波動レポート マンスリー・フォーカス」と題するレポートを発表している。また、「宮田直彦のエリオット波動レポート マーケット見通し(短期アップデート)」と題するレポートも数日おきに出されている。
今回の新型コロナ「第5波」に触れたレポートはこのうち、「マンスリー・フォーカス」の方だった。
宮田氏のエリオット波動レポートに興味のある人はマネースクエアの公式サイトをのぞいてみてはどうだろうか。
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また、宮田氏はマネースクエアの動画コンテンツ「M2TV」にもときどき登場している。
以下の「M2TV」の動画は「コロナ『第5波』はピークアウト?! 日本株市場の出直り期待が高まる?」とのタイトルがつけられたもの。本記事で書き並べてきたような、新型コロナ「第5波」に関する解説が宮田氏自身の口から語られている。
ちなみに、宮田直彦氏は2021年3月、「第33回人気アナリスト調査」アナリストランキング株式編のテクニカル分析部門で6位に入賞している。これは『日経ヴェリタス』が主催しているアナリストランキング。『日経ヴェリタス』は日本経済新聞社が発行する週刊の金融情報紙であり、その前身である『日経金融新聞』から数えれば、30年以上の歴史を持つ。
そして、このアナリストランキングにFX専業会社のアナリストがランクインすることは極めてまれなことだ。
新型コロナウイルスの新規陽性者数は高止まりしているとの報道があったが…
先に述べたように、宮田氏が新型コロナウイルス新規陽性者数の「第5波」について書いていた「宮田直彦のエリオット波動レポート」は8月31日(火)に公開されたものだった。本記事は9月8日(水)に公開しているので、それよりも約1週間前のことである。
同レポートで「新型コロナ新規陽性者数の『第5波』が既にピークアウトしたとすれば…」と宮田氏は仮定形で書いていたわけだが、その時点で、日本の新型コロナウイルス新規陽性者数は減少し始めているようにも見えたのだった。そして、その傾向はその後も続いているようだ。
以下は厚生労働省発表、日本の新型コロナウイルス新規陽性者数の過去3ヵ月間の推移だ。ごく素直に見て、このところ、グラフは段々と下がってきているように見える。
(出所:厚生労働省)
その一方、感染者数が高止まりしているがゆえに、緊急事態宣言を延長する方向というような報道も最近あった。だが、感染者数は少なくはないのかもしれないが、高「止まり」しているのだろうか?
緊急事態宣言、首都圏など延長へ 来週半ばにも決定 感染者高止まり https://t.co/nDxvRWo1AF
— 毎日新聞ニュース (@mainichijpnews) September 4, 2021
以下は厚生労働省発表、日本の新型コロナウイルスによる重症者数の過去3ヵ月間の推移だ。こちらはまだピークアウトしているようには見えない。
(出所:厚生労働省)
新型コロナウイルスのデルタ株は感染力が高いという。ワクチンを接種していても「ブレイクスルー感染」が起こることもあると聞く。病床が逼迫している、自宅療養者がたくさんいるといった報道も目にする。上記のとおり、重症者数はピークアウトしていない。
このような状況を考えれば、新型コロナウイルスに対して、まだまだ警戒を怠らないでいた方がいいことは確かだろう。
だからといって、感染者数が高止まりとの認識でいいのだろうか。
当サイトの読者の多くはトレーダーだろう。だとすれば、生活者としては新型コロナウイルスへの警戒感を緩めることなく、トレーダーとしては新規感染者数の推移を冷静に見定める必要があるのではないだろうか。新規感染者数の推移は金融市場へも影響を与えていると思われるからだ。
日本の新型コロナ新規陽性者数は4ヵ月前後の間隔でピークをつけている
宮田直彦氏はエリオット波動とともに相場のサイクル論も重視する立場。米ドル/円が16.5年サイクルで安値をつけていることなどから、宮田氏が見事な予想を展開したことがあったことは次回記事で紹介したいが、8月31日(火)公開の「宮田直彦のエリオット波動レポート」では、日本の新型コロナ新規陽性者数は、理由はわからないとしながらも、4ヵ月前後の間隔でピークをつけていることが指摘されていた。
宮田レポートから、そのピークの日付を紹介すると以下のとおりだ。
第1波…2020年4月10日
第2波…2020年7月31日
第3波…2021年1月8日
第4波…2021年5月8日
第5波…2021年8月20日?
そして以下のように、宮田レポートでは、新型コロナ新規陽性者数が「山」のようになったところで、日経平均やTOPIXが安値をつけ、新型コロナウイルス新規陽性者数が「谷」のようになったところで、日経平均やTOPIXが高値をつけるような傾向が見られることが指摘されているのだ。
(出所:マネースクエア)
さらに、宮田レポートでは新型コロナウイルスの実効再生産数などにも踏み込んで、新型コロナウイルスの新規陽性者数の推移が論じられ、それが株式市場とどう関係してくるかといったことが詳しく解説されている。もっと詳しいことはマネースクエアの公式サイトで「宮田直彦のエリオット波動レポート」をぜひ、見てみてほしい。
>>>マネースクエア[マネースクエアFX]の最新スペック詳細はザイFX!の比較コンテンツをご覧ください
次回記事では、かつて筆者がエリオット波動を主とした宮田直彦氏の分析に鮮烈な印象を受けた経験を紹介したい。その対象は米ドル/円の長期チャートだった。
(「米ドル/円が40年の長きに及ぶ円高トレンドに幕を引き、歴史的な大底を打つ瞬間はエリオット波動で事前に予想されていた」へつづく)
(文・ザイFX!編集長・井口稔 / 編集協力・ザイFX!編集部・藤本康文)
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