■ドルインデックスは現在、反転しやすい時期
とはいえ、2017年の見通しを述べないといけないから、ここではメインシナリオを描いておこう。総論として、ドルインデックスの状況から考えるとわかりやすいかと思う。
まず、ドルインデックスは7年間のサイクルを持ち、1980年代後半から、1988年~1995年(85.33~80.6)の保ち合い期間、1995年~2001年(80.36~121.00)の上昇期間、2001年~2008年(121.00~70.79)の下落期間、2008年~2015年(70.79~100.51)のリバウンド期間と分けられる。
(出所:Bloomberg)
統計的には、7月や12月に、ドルインデックスのトレンドがもっとも反転されやすいこともわかる。
このような視点でみると、米ドル全体は2008年からすでに7年間の上昇期を経ており、現在は実に反転しやすい時期にあると推測される。
同視点の延長線で「トランプ・ラリー」を見る場合、「トランプ・ラリー」がもたらした米ドル高は、さらなる米ドル高が続くための土台というより、米ドル高の「クライマックス」、すなわち最終段階における加速的な値動きととらえられる。
(出所:Bloomberg)
■「トランプ・ラリー」に対する修正が起こるだろう
一方、現時点の諸要素から考えて、「2017年に米ドル高基調が大きく反転する」というのもハードルが高い。よほどのことがない限り、「2008年を起点とした米ドル高基調自体は維持されるが、スピード修正が始まる」といったシナリオがもっとも想定されやすいかと思う。
ドルインデックスの7年サイクルに照らして考えると、2016年12月の高値をもって米ドル高がいったんピークを迎えるか、延長されても2017年春にピークをつけ、反落期間に入る公算が高い。
この場合、2018年7月まで調整波が続き、その後、大型上昇波変動に入り、米ドル高の基調は2023年に続くというシナリオだ。
二番目に想定されるのは、今月(2016年12月)前後から、米ドル全体が大型保ち合い周期に入り、2017年7月前後まで続くが、その後、またブル(上昇)トレンドへ復帰、というシナリオだ。この場合、同じく2023年まで上昇波が続き、本格的な米ドル高局面が来る。
いずれにしても、筆者は本格的な米ドル高局面は、現在の「トランプ・ラリー」を継承する形で続くとは思わない。
「トランプ・ラリー」に対する修正、場合によっては否定的な値動きは、最短で2017年の夏場まで、最長で2018年の夏場まで続くとみる。要するに、米ドル高のポピュリズムがいったん修正されないと、「ホンモノ」の値動きは来ないのである。
■ドル/円の上値は122円程度。その後、105円の安値打診か
このような視点をもって2017年の相場をみると、米ドル/円は120~122円前後の打診がせいぜいで、ユーロ/米ドルはパリティになるかならないかのところで下げ止まり、その後、相場が反転する公算が大きいと思う。
米ドル/円の場合、まず、105円前後の安値打診、ユーロ/米ドルの場合は安値更新後、1.2ドルの回復も想定される。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 月足)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 月足)
英ポンド/米ドルの場合、1.1ドルの節目を割り込めるかどうかが重要なポイント、また、豪ドル/米ドルは、2016年1月安値0.6827ドルを更新できるかどうか、見極めたいところだ。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 月足)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 月足)
米ドル全体の見通しからみると、筆者は両通貨ペアが底割れを回避できると思うが、英ポンドの場合は英国の出方次第で難しくなるから、いったん底割れがあることも、想定範囲におきたい。
■状況次第では下方修正。米ドル/円は100円割れ打診も!
クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の見通しはさらに難しくなる。不確実性の多い2017年だからこそ、ブラックスワンが出てくると、円がもっとも買われやすいが、前述した米ドル/円の105円の予想は、単純に米ドル高基調に対するスピード修正を予想したもので、ブラックスワンの出現を前提としていない。
よって、状況次第では下方修正しなければならない。
この場合、やはり、再度100円の大台打診を覚悟しておきたいから、クロス円は反落しやすく、また、下値打診しやすいのではないだろうか。特に英ポンド/円には要注意だ。2012年安値を再打診するか、場合によってはいったん割り込むことも想定されるから、安易な逆張りは避けたい。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 月足)
このあたりの考え方は、また新春号にて述べたい。それでは、皆さん、良いお年を!
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