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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

2017年のドル/円は122円まで上昇後、
105円へ反落。ブラックスワンで100円割れも

2016年12月27日(火)19:39公開 (2016年12月27日(火)19:39更新)
陳満咲杜

FXトレーダー・羊飼いに聞く、初心者におすすめのFX口座の選び方とは?

■米国の市場関係者はバロンズ紙の強気が心配!?

 2017年の市場に関する見通しが出そろい、ウォール街は総じて「米国株の上昇が続く」という明るい展望を持っているようだ。しかし、12月16日号の米バロンズ紙を手に取った途端、多くの業界人は心配し始めたという。

 理由は至ってシンプルだ。WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)傘下のバロンズ紙の、そのカバー記事は、往々にして「Contrarian indicator」、すなわち「逆張り指標」としての役割をしてきたからだ。

 となると、言わずともおわかりいただけたと思うが、バロンズ紙は非常に強気な見通しを述べた記事を掲載していた。

 市場関係者が持つこのような微妙な心情は、マーケットにおけるセンチメントを代弁しているのではないかと思う。つまり、米国株高、米ドル高、米金利高のトリプル高を予想しつつ、どこか一抹の不安がある、ということだ。

■「トランプ・ラリー」は先走りしすぎなのか、否か?

 その一抹の不安は、どこに起因しているかと聞かれると、ほぼ間違いなく、「トランプ・ラリー」をどう評価するかに帰結されるだろう。

 言ってみれば、2017年の見通しを行う上で最も重要なポイント、また、最大の不確実な要素は、いわゆる「トランプノミクス」の行方だと言い切れる。

 ゆえに、2016年11月9日(水)から足元まで続く「トランプ・ラリー」をどう評価するか、またどう位置づけるかは重要である。なにしろ、「トランプ・ラリー」はいわゆる「トランプノミクス」の効果を織り込もうとした先走りの結果であるから、「トランプ・ラリー」の行方は2017年相場の基調を決定する重みがある

 「トランプ・ラリー」が「ホンモノ」で、これからも続くといった見方が現在のマーケットにおける主流意見と思われる一方、「トランプ・ラリー」が行きすぎ、また、先走りしすぎたため、いずれ反動が出る、という見方も一部市場関係者に根強く共有されている。当然のように、このような相違があるからこそ、見通しもかなり違ってくる。

 仮に「トランプノミクス」自体が幻想にすぎず、また、事前期待とかなり違う結果になれば、「トランプ・ラリー」も単に行きすぎた先走りというに止まらず、その後、大きく修正される運命にある、という理屈は明白であろう。

■クルーグマンはトランプ政権がデフレをもたらすと予測

 ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン教授は、「市場の『トランプノミクス』に対する理解や期待が間違っている」と主張、トランプ政権がデフレをもたらすだろうと予測している。教授の根拠は以下のとおりだ。

トランプ氏は大型インフラ投資を吹調しているが、共和党内の支持を受けた兆しがなく、商人として成り上がったトランプ氏の大型財政出動は、最終的に私有化プロジェクトになる可能性が大きい。だから、最後は大型減税と収支削減の組み合わせで赤字予算を増やす結果につながりやすい

貨幣政策に関しては、独立したFRB(米連邦準備制度理事会)が決定する事項となり、いくらトランプ氏とはいえ、FRBが独立性を捨ててまでトランプ氏の政策を応援するとは到底考えられない

さらに、財務長官から大統領経済諮問委員会議長まで、一連の経済運営メンバーの構成から考えても、彼らが財政政策の拡大を推進できるとは思わない。なにしろ、「トランプノミクス」の本質は「ケインズ主義」の実践であるが、彼らの経歴をみると、トランプ氏の政策運営にマクロ的な指導をできる者はいないと思われる。だから、市場は間違っている。

 以上は要約であり、また細かいニュアンスが違っているかもしれないが、総論として「トランプノミクス」自体が「羊頭狗肉」だとするクルーグマン教授の主張がおわかりいただけると思う。

ポール・クルーグマン

ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏は、目下の市場の見立てと異なり、トランプ政権がデフレをもたらすだろうと予測しているという (C)ロイター/アフロ

■次期閣僚に大金持ちを多数指名しているという現実

 このような主張は、鋭く、また的を射た視点だと筆者も思う。実際、ポピュリズム的発言と裏腹に、トランプ氏はこれまで、ビリオネア(資産10億ドル超)5人とマルティ・ミリオネア(ビリオネアに次ぐ)6人を次期政権閣僚に指名している。

 皮肉にも、「大企業・ウォール街支配から離脱」と切望する白人中産階級がトランプ氏の最も熱い支持層と言われており、この一件から見ても、「トランプ氏の主張は信用できない」といったリスクは大きいと言わざるを得ない。

 言ってみれば、「トランプ・ラリー」自体がマーケットのポピュリズムであった可能性が大きい。

 さらに、中米対立や対ロシア関係など、トランプ政権がこれから遂行する政策は内政・外交におけるほぼすべての面において、多くの不確実性を持ち、また、かなり流動的だと言わざるを得ない。

このような不確実性を、現在のマーケットはほぼ無視しているだけに、これから、それに直面しなければならないから、その代償も大きくなるケースが想定される。言ってみれば、ポピュリズムは長く続かず、必ず現実に敗れるハメになるから、その時、マーケットはまったく違う反応を見せてくれるはずだ。

■2017年ほど見通すのが難しい年はない!

 2017年の見通しを述べる前に、長く「トランプノミクス」云々を述べてしまって申し訳ないが、実は前述の内容は、2017年の相場を見通す上で、重要なポイントを示唆している。すなわち、

1.2017年は「トランプノミクス」の真贋を含め、不確実性が多いから、簡単に見通せない上、現在の見通しについて距離を置いた方がよさそうだ。
22017年の見通しは、「トランプノミクス」がポピュリズムであり、また、幻想に終わるリスクを織り込まないといけない。

 ということだ。前者については、米国のみならず、EU、中国なども問題や懸念が多く、いつ、どこでいわゆる「ブラックスワン」が出てもおかしくないから、事前の想定がかなり難しい。

 後者に関しては、「トランプ・ラリー」がポピュリズム的な値動きであれば、行きすぎた分の修正はもちろん、場合によっては反動的な行きすぎも想定しなければならない。この意味では、2017年も激動の1年になりそうで、2017年ほど見通しが難しい年はないといえる。

■ドルインデックスは現在、反転しやすい時期

 とはいえ、2017年の見通しを述べないといけないから、ここではメインシナリオを描いておこう。総論として、ドルインデックスの状況から考えるとわかりやすいかと思う。

 まず、ドルインデックスは7年間のサイクルを持ち、1980年代後半から、1988年~1995年(85.33~80.6)の保ち合い期間、1995年~2001年(80.36~121.00)の上昇期間、2001年~2008年(121.00~70.79)の下落期間、2008年~2015年(70.79~100.51)のリバウンド期間と分けられる。 

ドルインデックス 月足
ドルインデックス 月足

(出所:Bloomberg)

 統計的には、7月や12月に、ドルインデックスのトレンドがもっとも反転されやすいこともわかる。

 このような視点でみると、米ドル全体は2008年からすでに7年間の上昇期を経ており、現在は実に反転しやすい時期にあると推測される。

 同視点の延長線で「トランプ・ラリー」を見る場合、「トランプ・ラリー」がもたらした米ドル高は、さらなる米ドル高が続くための土台というより、米ドル高の「クライマックス」、すなわち最終段階における加速的な値動きととらえられる。

ドルインデックス 週足
ドルインデックス 週足

(出所:Bloomberg)

■「トランプ・ラリー」に対する修正が起こるだろう

 一方、現時点の諸要素から考えて、「2017年に米ドル高基調が大きく反転する」というのもハードルが高い。よほどのことがない限り、「2008年を起点とした米ドル高基調自体は維持されるが、スピード修正が始まる」といったシナリオがもっとも想定されやすいかと思う。

 ドルインデックスの7年サイクルに照らして考えると、2016年12月の高値をもって米ドル高がいったんピークを迎えるか、延長されても2017年春にピークをつけ、反落期間に入る公算が高い

 この場合、2018年7月まで調整波が続き、その後、大型上昇波変動に入り、米ドル高の基調は2023年に続くというシナリオだ。

 二番目に想定されるのは、今月(2016年12月)前後から、米ドル全体が大型保ち合い周期に入り、2017年7月前後まで続くが、その後、またブル(上昇)トレンドへ復帰、というシナリオだ。この場合、同じく2023年まで上昇波が続き、本格的な米ドル高局面が来る。

 いずれにしても、筆者は本格的な米ドル高局面は、現在の「トランプ・ラリー」を継承する形で続くとは思わない。

トランプ・ラリー」に対する修正、場合によっては否定的な値動きは、最短で2017年の夏場まで、最長で2018年の夏場まで続くとみる。要するに、米ドル高のポピュリズムがいったん修正されないと、「ホンモノ」の値動きは来ないのである。

■ドル/円の上値は122円程度。その後、105円の安値打診か

 このような視点をもって2017年の相場をみると、米ドル/円は120~122円前後の打診がせいぜいで、ユーロ/米ドルはパリティになるかならないかのところで下げ止まり、その後、相場が反転する公算が大きいと思う。

米ドル/円の場合、まず、105円前後の安値打診ユーロ/米ドルの場合は安値更新後、1.2ドルの回復も想定される。

米ドル/円 月足
米ドル/円 月足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 月足

ユーロ/米ドル 月足
ユーロ/米ドル 月足

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英ポンド/米ドルの場合、1.1ドルの節目を割り込めるかどうかが重要なポイント、また、豪ドル/米ドルは、2016年1月安値0.6827ドルを更新できるかどうか、見極めたいところだ。

英ポンド/米ドル 月足
英ポンド/米ドル 月足

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豪ドル/米ドル 月足
豪ドル/米ドル 月足

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 米ドル全体の見通しからみると、筆者は両通貨ペアが底割れを回避できると思うが、英ポンドの場合は英国の出方次第で難しくなるから、いったん底割れがあることも、想定範囲におきたい。

■状況次第では下方修正。米ドル/円は100円割れ打診も!

クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の見通しはさらに難しくなる。不確実性の多い2017年だからこそ、ブラックスワンが出てくると、円がもっとも買われやすいが、前述した米ドル/円の105円の予想は、単純に米ドル高基調に対するスピード修正を予想したもので、ブラックスワンの出現を前提としていない。

 よって、状況次第では下方修正しなければならない。

 この場合、やはり、再度100円の大台打診を覚悟しておきたいから、クロス円は反落しやすく、また、下値打診しやすいのではないだろうか。特に英ポンド/円には要注意だ。2012年安値を再打診するか、場合によってはいったん割り込むことも想定されるから、安易な逆張りは避けたい

英ポンド/円 月足
英ポンド/円 月足

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 このあたりの考え方は、また新春号にて述べたい。それでは、皆さん、良いお年を!

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