昨日のアジア時間では、ややリスク調整気味の動きが出た。これは昼過ぎに公表するといっていた東芝の決算が延期されたからだ。巨額なロスを計上するのはわかっていながらも、それがさらに膨らんでいないかどうかを確認するためのものだった。
それが延期されたとなると、まだ何か隠し持っているのではないかと不安を呼び起こしたのである。日本株も午後から急速に下げ足を速め、リスクオフの観点からドル円も下がってきた。そして113円台の前半で欧州勢の参入となった。
欧州時間での為替相場は小動きを強いられた。それは夜中にイエレン議長のスピーチが予定されていたからであり、それに対しての様子見姿勢が強まったのである。トランプ大統領が就任してからFOMCはあったものの、公的なスピーチとしては初めてである。
保護主義の貿易政策などについて、どう評するのか。為替政策は財務省のマターなのでFRBはものを言う立場にはないが、為替レートの根拠ともなるドル金利の動向についての言及はあるのかないのか。また短期金利の世界ではドル金利はすでに年3回までの利上げを織り込んでしまっている。それを正当化するような内容が出てくるのかどうかである。
ドル円は113円台の中盤でイエレン議長の発言となった。自国第一主義に警鐘を鳴らしながらも、現在の雇用環境とインフレ率のあり方には問題がないことを示した。また年内の利上げは年前半にも考慮されなければならないとした。
これによってドル金利は若干ではあるが、短期も長期も上昇に向かった。ドルも小さい値幅ながらも全面高に向かい、ドル円も114円台に乗せてきた。
私が注目したいのはFRBの膨れあがったBSである。これは金融緩和によるものだが、テイパリングしたと言いながら、まだ規模を減らしていないという実情がある。これを当面は減らすことはしないと間接的にしゃべったのだ。
これによってそれまで利上げを嫌って下げていた米国株も反転・上昇に向かい、結局は4日連続での最高値更新となっている。リスク許容度の増大が、ニューヨーク時間の午後からのクロス円の堅調さを支えたといっても過言ではない。
今日もドル相場は強ぶくんでいる。伸びはないものの、ドル円などは昨日のドル高値圏を維持している。値動きにダイナミックさを感じられないので、今すぐに手を出すという気もしない。
夜のアメリカの経済指標でも見てみないと思いながらも、それでは動くことはないだろうとも感じている。今夜もイエレン議長がスピーチするが、内容は昨日と同じだろう。当面はドル円の押し目買いスタンスで臨むしかなさそうだ。
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