■米ドル/円は動かない、ここからはユーロ
そして、話は本題の相場展望に移っていったのですが、いかんせん、時間が押し迫っていたため、時計を気にしながらかなりの駆け足に…。それでも、米ドル/円、ユーロ、豪ドル、加ドルの見通しを解説してくれました。
米ドル/円は、アベノミクス相場以降、猛烈に動いてきたので、今後はあまり動かなくなっていく可能性があるというのが志摩さんの基本的な見方。

(出所:Bloomberg)
さらに志摩さんが解説していた米ドル/円相場に関するポイントをざっくりまとめると、以下のとおりです。
・日銀の金融緩和によって日本の金利はゼロ付近に固定されているので、米国の金利の動きが米ドル/円の動きに影響を及ぼす
・購買力平価に基づく米ドル/円の適正価格は95円~100円
・期待値ゼロのトランプ減税が実現すれば、米ドル/円は120円前後まで上昇。そうでなければ、ボヤケた相場になりそう
・年足チャートで現れた2016年の「首吊り線」は天井形成を示唆?
・猛烈な円安相場になるのは、日本の財政が破たんしたとき
北朝鮮の水爆実験がマーケットに与える影響も警戒していた志摩さんは、トランプ減税の実現でトランプ・ラリー2が始まっても、米ドル/円の長期的な上昇は望みにくいと考えているようです。

米ドル/円は現在、トランプ・ラリーの半値押し水準がサポートになっているんだそう
そして、米ドル/円とは対照的に今までレンジ相場であまり動かなかったのがユーロ/米ドル。こちらは、レンジを抜けてきたばかりであり、今後、大きく動きそうというのが志摩さんの見方でした。

(出所:Bloomberg)
今のユーロは、ECB(欧州中央銀行)の政策を先取りして上昇している段階だけれど、欧州の経済は好調だし、サイクル的にユーロ/米ドルは、2024年頃には1.7ドル~1.8ドルくらいまで上昇している可能性があると志摩さんは予想していました。
そして、英ポンドは英国とEU(欧州連合)の離脱交渉がポイント。今後2~3年、英国経済は厳しい状況に立たされそうで、ユーロ/英ポンドの押し目買いが良さそうとも。
また、豪ドルと加ドルは、オーストラリアとカナダの経済が堅調なので、ともに底堅い動きが見込めるようです。
特に、トランプ政権への不信感で、米国から隣国のカナダに拠点を移す企業が増えているため、カナダは高い成長率を維持することが期待できるんだそう。もし、原油安に見舞われても、加ドルは上昇しそうだと強気の見方を示していました。
志摩さんがそんな見通しを示してくれた矢先の9月6日(水)、BOC(カナダ銀行[カナダの中央銀行])が予想外の利上げに踏み切ったことで加ドルは急騰しましたね。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/加ドル 1時間足)
志摩さんは、1.20加ドルくらいまで米ドル/加ドルは下落(米ドル安・加ドル高)するんじゃないかと予想していました。今後の動きに注目ですね。
志摩さんの巻きの努力もあり、トレード手法、リスクマネジメント、相場展望に至るまで、盛りだくさんの内容だったセミナーも無事に終了。このあとは隣の会場で、豪華な食事と飲み物を手にしながらの懇親会が始まりました。
講師の方を囲んでちょっとした勉強会が始まったり、参加者同士が思い思いに交流を深めたりと、楽しい時間はあっという間に過ぎていったのでした。
(取材・文/ザイFX!編集部・堀之内智 撮影/和田佳久)
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