秋の訪れを感じさせるような穏やかな天気となった9月3日(日)。東京・秋葉原のイベント会場で、約200名の個人トレーダーが集まるオフ会「FXトレーダーフェスタ」が開催されました。
主催者は、ザイFX!のコンテンツ「FX取引ツールを本音でレビュー」でもおなじみのひろぴーさん。「オフ会でもやりたいな~」という、結構軽い感じの思いつきが発端だったそうですが、豪華な講師陣がズラリと集結する、かなり大規模な催しとなりました。
今回は、その模様をお届けします。
【参考コンテンツ】
●FX取引ツールを本音でレビュー
■元プロディーラーが語るスキャルピングの極意
ひろぴーさんといっしょに司会を務めるのは、フリーアナウンサーの内田まさみさん。ラジオ日経の「トレードパーティ♪」で共演しているだけあって、二人の息はピッタリです。
司会は主催者のひろぴーさん(右)と、フリーアナウンサーの内田まさみさん(左)。息ピッタリの軽快なトークで「FXトレーダーフェスタ」は幕を開けた
セミナー開始直前に、北朝鮮が核実験を実施したらしい…という不穏なニュースが伝わり、会場には翌日のマーケットの動きを気にせずにはいられないといった雰囲気がプンプン。
そんな中で、セミナー講師のトップバッターとして登壇したのは、JFXの小林芳彦社長と、元インターバンクディーラーで現在は「生涯現役」を目指し、専業トレーダーとして活躍するりゅーずさんです。
トップバッターとして登場したのは、クレディスイス銀行などで活躍してきた小林芳彦社長(左)と、モルガン銀行などの外資系銀行でディーラーとして20年以上もマーケットに携わってきたりゅーずさん(右)。元プロディーラーの2人が語るスキャルピングの極意とは?
対談形式で進められたお二人のセミナーテーマは、「インターバンク流スキャルピングの極意! ~顧客玉カバーとは~」。
かつて、大手金融機関でディーラーを務めたお二人がプロディーラーの心理を交えながら、チャートの動きに秘められた売買状況やスキャルピングの効果的なやり方を熱く語ってくれました。
使われたのは、FXトレーダーにとっては月に一度のお祭り的なイベントともいえる米雇用統計があった、9月1日(金)の米ドル/円1分足チャート。
記憶に新しい値動きを細かく振り返るその話に、多くの方がそのときの自分のトレードを重ね合わせながら、真剣に耳を傾けている様子でした。
スキャルピングの効果的なやり方を米雇用統計があった9月1日(金)のチャートを使って説明。記憶に新しい値動きだけに、多くの参加者が自分のトレードと重ねて熱心に聞き入っていた
その後、小林社長がスキャルピングで主戦場の1つにしている仲値の時間帯に、なぜ、米ドル/円が神経質な動きになることが多いのか?という話題に転換。
輸出企業や輸入企業といった実需筋から持ち込まれるオーダーをカバーしながら、なおかつ自分の利益にもつなげたいインターバンクディーラーの手に汗握るやり取りを、お二人が身振り手振りで解説。
昔は手の振り方で、電話口の相手が売るのか買うのかをインターバンクディーラーに伝えて注文を通していたんだそう
現在とは違って、かなりアナログな手法で取引が行われていた当時のディーリングルームの様子までもが伝わってくる熱演を披露してくれました。
■MT4を使いこなせ! 伝道師オススメのインジケーターは?
次に登場したのは、元為替ディーラーで金融占星術にも造詣が深く、現在はメタトレーダー4(MT4)教育の第一人者としても知られる山中康司さん。
かつてバンク・オブ・アメリカなどでトレーディング業務に従事し、現在は金融コンサルティング会社を設立してメタトレーダー4「MT4」の普及活動にも力を入れている山中康司さん
「MT4で広がるチャート分析の世界~初心者から上級者までMT4を使いこなせ~」をテーマに、メタトレーダー4(MT4)の概要説明やオススメのインジケーターを紹介してくれました。
挙手による自己申告では、この日のセミナー参加者の半数くらいが、実際にメタトレーダー4(MT4)を使ってトレードした経験があるということ。根強い人気を誇っているな~と実感しました。
セミナー参加者の半数近くがメタトレーダー4(MT4)を使ったトレード経験があるということ
世界700社近くのFX会社で採用されているメタトレーダー4(MT4)ですが、現在では6割近くのユーザーが、モバイル端末から利用しているんだそうです。
また、5年前はメタトレーダー4(MT4)ユーザーの約半数が自動売買を行っていたけれど、現在はその割合が2~3割に減っていて、裁量でトレードするユーザーが増えているなんて情報もありました。
山中さんがオススメしてくれたのは、高値を用いたMA(移動平均)と安値を用いたMAのうち、トレンドが出ている方のMAだけを表示させる「HLactivator」(ハイロー・アクティベーター)や、CCIをベースに開発された「Woodie's CCI」といったインジケーターなど。
FXトレード・フィナンシャルのメタトレーダー4(MT4)口座[FXTF MT4]では「FXTF‐OverLay Chart」という名前で提供されている、2つの通貨ペアのチャートを重ねて表示させることで、値動きを比較することができる「オーバーレイチャート」なども紹介してくれました。
【参考記事】
●FXTFのMT4口座に新たなスクリプト登場! チャートを重ねて表示してラクラク比較。
そのほかにも、始値を用いたMAと終値を用いたMAのクロスによって、トレンドを判断する手法なども有効だと、チャートを使って詳しく解説してくれたり…。
オススメのインジケーターやカスタマイズ方法を紹介。メタトレーダー4(MT4)を使いこなすひろぴーさんも、たまらず参戦!
画面に表示させる通貨ペア数や、テクニカルラインの色をパラメーターごとにオリジナルで設定しておけば、グッと取引がしやすくなるなんてアドバイスもあったりして、ステージに映し出されたスライドの画面を、スマホのカメラで熱心に撮影する参加者の姿もありました。
■ひろぴーがTTPした超短期トレードで生き残る術とは?
このあと、コーヒーやおやつが振る舞われた20分の休憩を挟んで(この時点ですでに押し気味…)、次に登場したのは、専業トレーダーのおばらっちさん。
実はこの方、数年前にひろぴーさんが初めて参加したFXのセミナーで講師をしていて、ひろぴーさんはそのとき、おばらっちさんが語ったトレード手法を「TTP」(徹底的にパクる)したんだそうです。
かつて、ひろぴーさんが「TTP」したおばらっちさん。超短期トレードで生き残るためには「損小利小」の心構えが肝心とのこと
【参考記事】
●専業トレーダー・おばらっちさんに突撃(1) 最初の成功&失敗から学んだこと
●専業トレーダー・おばらっちさんに突撃(2) 「負け」を前提にして、勝ち続ける技術
セミナーのテーマは「超短期トレードで生き残るためのテクニックと考え方~専業投資家8年以上のガチトーク!~」。
おばらっちさんのトレードは「頭と尻尾はくれてやれ」の相場格言のさらに上をいく、「一番うまいヒレの部分」をゲットするようなスタイル。10pipsくらい狙えそうな相場の中から、確実に数pipsの値幅を取る「損小利小」が肝心だと言っていました。
そうすると、大きなLotで取引する資金が必要になるので、以下のような資金管理やリスクマネジメント、取引手法が大事になってくるということ。
・お金の出入りを厳密に管理して、リスクに見合ったLot数を徹底すること
・スプレッドを取引コストとしてしっかり計上しておけば、余計なトレードが減って効率が良くなる
・手法やテクニカルはカーナビや道路標識のようなもの。良い手法があれば必ず勝てるという幻想は捨てるべき
・それぞれの取引手法の性格を判断して、有効に機能する相場を見つけられるようになることが勝利への一番の近道
・やることや目的を見失わず、己を知ること
言葉にされるとそれほど難しくないようにも感じますが、実際にトレードするとなると話は別。こうしたルールを徹底できるかが、長くトレードを続けられるかの分かれ道になるということですね。
この話があったとき、一番前に座っていた参加者の方が「ウンウン」と大きく頷いていたのが印象的でした。
長くトレードを続けられるかは、資金管理やリスクマネジメント、取引手法がいかに大事かを力説するおばらっちさん
記者が一番興味を持ったのは、おばらっちさんがトレードで使っているという、シンプル・イズ・ベストを極限まで追い求めたような、なんとも簡素なチャート。
おばらっちさんの使っているチャートはめちゃめちゃシンプル! 昔はいくつかのテクニカル指標も表示させていたそうだが、行き着くところまで行き着いた感じ!?
70ティック分の値動きで1本のローソク足を形成する「70ティックチャート」に、MAがたった1本だけ表示されたもので、このチャートを使って勢いのあるポイントを判断しているんだそう。チャートの世界は奥が深いということを、しみじみと感じました。
国内のFX会社の中にも、70ティックチャートが表示できる取引ツールを提供しているところがいくつかあります。セントラル短資FX[ウルトラFX]の高機能チャートツール「Uチャート」では、「Custom足」のティック数を70に設定すれば表示させることができますよ。詳しい方法は、以下の【参考記事】で紹介しています。
【参考記事】
●1分未満のローソク足も表示可能! 他人がどこで取引したかわかる「Uチャート」登場!
メタトレーダー4(MT4)で70ティックチャートを表示させる場合は、インターネット上で検索すれば、メタトレーダー(MT4)用に作られた70ティックチャートのカスタム・インジケーターが見つかるはず。興味のある方は、ダウンロードしてみてください。
■理論派トレーダーはオシレーター系指標の見方を伝授!
お次は、複数のIT企業を経営する傍ら、理論派トレーダーとしても名を馳せる福寄儀寛さんの出番です。
ひろぴーさんが知っている限りでは、スキャルピング、短期、スイングとすべてのトレードができる人は、日本では福寄さんとザイFX!のコラムでもおなじみのバカラ村さんしかいないということ。
テーマは、「節目を意識して行うポジションサイジングについて~FXでもっとも重要なリスクマネジメントを学ぶ~」。
さっそく講義を…と思ったら、用意した資料がスクリーンに映し出されないという、ちょっとしたトラブルが発生。福寄さん、ひろぴーさん、内田さんの3人が座談会のような感じで場をつなぐことになりました。このあたりの臨機応変な対応はさすが。
いきなりのトラブル発生! そんなときも3人はトークで臨機応変に対応
10分ほどでトラブルは解消。福寄さんは、ご自身が考案したオリジナル定型チャート「Fukuyori_SS」などを使って、トレードのやり方を解説。この定型チャートは、FXトレード・フィナンシャルのメタトレーダー4(MT4)口座で使うことができます。
【参考記事】
●FXTFで福寄儀寛氏のMT4定型チャートが使える! IT社長の理論派トレードとは?
5分足と4時間足を同時に見て、トレンドが揃っているか、レジスタンスやサポートがどこにあるかを確認しながら行うトレード手法なども紹介してくれました。
福寄さんは東大卒のIT企業社長で、どんなスパンの取引もこなすトレーダー
そして、話はRSI、ストキャスティクス、MACDなどの、オシレーター系指標の効果的な使い方に。
いわく、相場が行き過ぎたかどうかを判断するのに利用されるこれらのオシレーター系指標が有効に機能するのは、マーケットに新しい材料がなく、トレンドが薄いときだけだということ。材料が出て動いているときは、あまり頼らないほうがいいということなんですね。
RSIで初動を確認して、スロー・ストキャスティクスのクロスで確度を高め、MACDでダマシを排除するといった感じで利用すると効率が良いと言っていましたが、解釈には個人差があり、まずは慣れる必要があるということです。
オシレーター系指標の使い方をそれぞれていねいに解説。トレード技術は数々の相場を経験してきたからこそ
数々の経験やバックテストを繰り返して培ったトレード技術を披露してくれました。
■トレードは曲がり屋に向かえ! 他人の力を借りろ
この時点で時刻は17時10分。この後、10分間の休憩があり、すでに30分近くもスケジュールが押してしまっている中、ひろぴーさんに「18時までに終わるようにまとめて!」と懇願されて登場したのは志摩力男さん。
トリを務めるのは、ゴールドマンサックスやドイツ証券でのプロップトレーダーや、マクロヘッジファンドでファンドマネージャーを歴任してきた志摩さん。「巻きで頼みます!」と言われながらの登壇
【参考記事】
●2017年の相場を大予想! 志摩力男氏のオリジナルレポートをタダでもらう方法とは?
「2017年秋~冬相場展望~志摩力男のファンダメンタルズ~」のテーマで志摩さんが力説したのは、
「トレードは『当たり屋に乗り、曲がり屋に向かえ』。すなわち、相場をハズしている人と逆のトレードをすることが大事」だということ。
経済学と心理学の深い知識より、自分の好きなエコノミストの意見やメルマガなどを利用しながら、うまい人とチューニングを合わせることが重要で、他人の力を存分に借りるべきだと教えてくれました。
トレードは「当たり屋に乗り、曲がり屋に向かえ」と語る志摩さん。最前線で活躍してきただけに含蓄のある言葉
大手金融機関やヘッジファンドでプロのトレーダーとして活躍されてきた志摩さんならではの、オリジナリティあふれる手法が披露されるかと思ったら、ちょっと意外なアドバイス。でも、長年、最前線で活躍してきた方の言葉だけに、ものすごく含蓄のある話です。
■米ドル/円は動かない、ここからはユーロ
そして、話は本題の相場展望に移っていったのですが、いかんせん、時間が押し迫っていたため、時計を気にしながらかなりの駆け足に…。それでも、米ドル/円、ユーロ、豪ドル、加ドルの見通しを解説してくれました。
米ドル/円は、アベノミクス相場以降、猛烈に動いてきたので、今後はあまり動かなくなっていく可能性があるというのが志摩さんの基本的な見方。
(出所:Bloomberg)
さらに志摩さんが解説していた米ドル/円相場に関するポイントをざっくりまとめると、以下のとおりです。
・日銀の金融緩和によって日本の金利はゼロ付近に固定されているので、米国の金利の動きが米ドル/円の動きに影響を及ぼす
・購買力平価に基づく米ドル/円の適正価格は95円~100円
・期待値ゼロのトランプ減税が実現すれば、米ドル/円は120円前後まで上昇。そうでなければ、ボヤケた相場になりそう
・年足チャートで現れた2016年の「首吊り線」は天井形成を示唆?
・猛烈な円安相場になるのは、日本の財政が破たんしたとき
北朝鮮の水爆実験がマーケットに与える影響も警戒していた志摩さんは、トランプ減税の実現でトランプ・ラリー2が始まっても、米ドル/円の長期的な上昇は望みにくいと考えているようです。
米ドル/円は現在、トランプ・ラリーの半値押し水準がサポートになっているんだそう
そして、米ドル/円とは対照的に今までレンジ相場であまり動かなかったのがユーロ/米ドル。こちらは、レンジを抜けてきたばかりであり、今後、大きく動きそうというのが志摩さんの見方でした。
(出所:Bloomberg)
今のユーロは、ECB(欧州中央銀行)の政策を先取りして上昇している段階だけれど、欧州の経済は好調だし、サイクル的にユーロ/米ドルは、2024年頃には1.7ドル~1.8ドルくらいまで上昇している可能性があると志摩さんは予想していました。
そして、英ポンドは英国とEU(欧州連合)の離脱交渉がポイント。今後2~3年、英国経済は厳しい状況に立たされそうで、ユーロ/英ポンドの押し目買いが良さそうとも。
また、豪ドルと加ドルは、オーストラリアとカナダの経済が堅調なので、ともに底堅い動きが見込めるようです。
特に、トランプ政権への不信感で、米国から隣国のカナダに拠点を移す企業が増えているため、カナダは高い成長率を維持することが期待できるんだそう。もし、原油安に見舞われても、加ドルは上昇しそうだと強気の見方を示していました。
志摩さんがそんな見通しを示してくれた矢先の9月6日(水)、BOC(カナダ銀行[カナダの中央銀行])が予想外の利上げに踏み切ったことで加ドルは急騰しましたね。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/加ドル 1時間足)
志摩さんは、1.20加ドルくらいまで米ドル/加ドルは下落(米ドル安・加ドル高)するんじゃないかと予想していました。今後の動きに注目ですね。
志摩さんの巻きの努力もあり、トレード手法、リスクマネジメント、相場展望に至るまで、盛りだくさんの内容だったセミナーも無事に終了。このあとは隣の会場で、豪華な食事と飲み物を手にしながらの懇親会が始まりました。
講師の方を囲んでちょっとした勉強会が始まったり、参加者同士が思い思いに交流を深めたりと、楽しい時間はあっという間に過ぎていったのでした。
(取材・文/ザイFX!編集部・堀之内智 撮影/和田佳久)
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