■猫も杓子も米ドル安を予想しているがゆえの問題点は?
さらに、最近報じられた、あるニュースも気になる。ブルームバーグの報道によると、今週(2月12日~)、米マイアミで開催された「トレードテックFX」で、発言した運用担当者やストラテジストのほぼ全員が、「米ドルは売り」といった見方を披露していたという。
「米ドル強気派は、口をつけられなかったマルガリータと同じぐらい珍しい」と言われるほど、皆が同じ方向、すなわち米ドル安の方向に賭けているようだ。
となると、1つわかりやすいことが推測される。猫も杓子も米ドルに弱気なので、皆が米ドルの売りポジション(ユーロの買いポジション)を持ち、さらなる米ドル安を待って、利益を確定したいところだ。問題はただ1つ、猫も杓子も米ドル売りなので、誰かがさらに米ドルを売って(ユーロを買って)くれないと、米ドルを買い戻して利益を取れないのに、さらに米ドルを売りたいという者は極端に少なくなっていると思われることだ。
■思うようにユーロ高が進まなければ、逆転もあり得る
為替市場は典型的なゼロサムゲームである。損する者がいなければ、いくら賢くて未来を見通せる者でも儲からない。
皆がユーロ買い・米ドル売りに賭けているから、ユーロは上のチャートで示したメインレジスタンスゾーンを大きく突破し、さらなる上昇トレンドを強めていかないと、ユーロロング筋の「共倒れ」が逆に起こりやすいのではないかと思う。
なぜなら、猫も杓子もユーロ買い・米ドル売りを仕掛けているから、思うようにユーロ高が進まなければ、堪忍袋の緒が切れる者が出てくるだろう。彼らの手仕舞いがどんどん広がっていけば、今回は潮流の逆転をもたらすだろう。すなわち、ユーロ売りがさらなるユーロ売りを呼び、ユーロの買い持ちが多すぎるため、さらなる投げ売りを誘う、といった逆循環が起こりかねない。
「人の行く裏に道あり花の山」、「野の山も皆一面に弱気なら、阿呆になって買うべし」という日本の相場格言がある。断定的な結論は出せないが、足元は為替市場の状況から考えて、格言の教えどおりに実行すれば報われるタイミングにあるのではないかと思う。もちろん、目先の短期トレードの話ではなく、あくまでマクロ的な視点での考え方、ということを強調しておきたい。
■円売りポジションの整理は、思った以上になかなか進まない
では、米ドル/円はどうなるだろうか。同じ視点で見るなら、逆の見方ができるかもしれない。IMMのデータを見る限り、円売りポジションは減少しているものの、なお高い水準(11万枚売り超)をキープしている。
また、日本のある大手FX会社の統計では、米ドル買い・円売りのポジションが統計開始(2012年3月)以来、最大の積み上げを記録しているから、米ドル安の一服があっても、対円ではなかなか浮上できないだろうと推測される。
この意味では、106円の節目を打診している足元の米ドル/円(※3)、短期スパンでは、すでに「売られすぎ」のサインが点灯しているにもかかわらず、さらなる下値トライもあり得る上、仮にリバウンドしても、戻りが鈍い可能性が大きいだろう。
(※編集部注3:本記事寄稿後の編集中に米ドル/円は106円を割り込んだ)
円売りポジションの整理は、思った以上になかなか進まないから、米国株と米長期金利がどうであれ、これからしばらくは米ドル/円の頭が重い構造が維持されるとみる。
■ユーロ/円は目先切り返しても126円まで下落の可能性あり!
足元の為替相場は、雑な言い方をすれば、猫も杓子もユーロ買いと円売りを仕掛けている。だから、ユーロ/円の動向が気になるし、それはある程度推測しやすいだろう。
前述のロジックが正しければ、ユーロの買い越しは報われず、円の売り越しも整理されていく運命にあるから、残る道は1つしかなく、すなわちユーロ/円の大逆転だ。
今日(2月16日)は旧正月の新年の始まりである。新年(2018年)の基調はユーロ/円を見ればわかるので、ユーロの大逆転はユーロ/円から始まり、ユーロ/米ドルに波及していく公算が高いと思う。
実際、ユーロ/円はすでに逆転のサインを点灯しているから、ユーロ/円と英ポンド/円の上値ターゲットを正式に放棄し、逆にユーロ/円について、126~128円の下値ターゲットを提示しておきたい。
ただし、目先はユーロ/円はややオーバーシュートで、むしろ、いったん切り返しやすい状況にあるとみる。
ごく短期スパンの話なら、確かに円売りポジションの積み上げで米ドル/円の下値余地を警戒しなければならないが、サイクル論の視点では目先一服しやすいタイミングにある。そして、確かにユーロ買いポジションが過大でユーロ/米ドルの上値余地は限られるとみるが、たちまち崩れることもないから、ユーロ/円は目先切り返しを果たすだろう。
(出所:Bloomberg)
しかし、前述のロジックが正しければ、中期スパンでは、ユーロ/円の切り返しがあれば、絶好の戻り売りのチャンスを提供してくれるだろう。
何しろ、同じ「外貨」なのに、また同じゼロ金利なのに、ユーロの買い越しの過大と円の売り越しの過大は、ユーロの過大評価、そして、円の過小評価のアンバランスを意味するから、この修正がすでに始まった以上、2018年年内の基調として定着してくれると思う。市況はいかに。
(12:30執筆)
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