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【西原宏一が教える FXトレード戦略超入門】
チャートを補完するファンダメンタルズ分析

2021年03月04日(木)12:15公開 (2021年03月04日(木)12:15更新)
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「【西原宏一が教える FXトレード戦略超入門】IMMでトレンドの始まり、過熱感を予想する」から続く)

3章チャートを補完するファンダメンタルズ分析

 為替相場は、政治経済や金融、さまざまな事象によって動きます。
 チャートが示す値動きの理由を補完するために、
ファンダメンタルズ分析をないがしろにすることはできません。
 3章では、マーケットの空気や方向性をわかりやすく教えてくれるファンダメンタルズ分析を紹介します。

[為替を動かすファンダメンタルズ? ]
「政治の力」を見極める!
POINT 1 為替は政治で動く!
POINT 2 先進国の中央銀行に注目!
POINT 3 為替大国アメリカの動向に注目!
POINT 1 為替は政治で動く!

政治による「為替操作」のインパクト

 為替市場は何によって動くでしょうか? いくらでも答えようのある質問ですが、ひとつには「為替は政治で動く」という側面があります。

 翻ってみれば、1985年9月22日の「プラザ合意」は為替市場にとてつもないインパクトを与えました。

 プラザ合意とは、ニューヨークにあるプラザホテルで日本やアメリカ、西ドイツ、イギリス、フランスの首脳(G5)が集まって、ドル安への誘導を決めた合意です。

 これにより、1985年の1ドル260円から1995年には94円の超円高へ。米ドルの価値を3分の1以下に切り下げる(円は3倍の円高)きっかけとなったのです。

 為替レートを決めるのは市場です。しかし、ときにこうした政治の「為替操作」が起こることがあるのです。

 近いところでは、2016年2月に「上海合意」がありました。正式発表はされていませんが、上海で開催されたG20でドル高是正をめざした、つまりドル安誘導の合意があったといわれています。

 上海合意の前年、人民元の切り下げを背景に、米ドルは対円で125円までドル高が進みました。ドル高を是正することで、人民元のさらなる切り下げ圧力を抑制し、世界経済の安定化をめざそうという意図があったのでしょう。

 いずれにせよ、上海合意の存在がささやかれ、米ドル/円は100円割れまで下落し、ドル安が進みました。高値125円から20%ほどドル高が是正されたことになります。「上海合意でドル高是正!? 米ドル/円は売りだ!」と判断するわけではありません。あくまでも、基本はチャートです。このときも200日線や75日線は米ドル/円の売りを示していて、上海合意という材料があとからついてきた形でした。しかし、上海合意という政治のダイナミックな動きがついてきたことで、下降トレンドへの自信を深められるわけです。

国際政治が為替相場を動かす
POINT 2 先進国の中央銀行に注目!

中央銀行の為替政策は“旬のテーマ”となりやすい

 為替相場と政治の関係で、意識しておきたいのが各国の中央銀行の動向です。中央銀行の重要な役割のひとつに為替市場の監視があります。

 どこの国の中央銀行もマーケットの動きを注視していて、自国の通貨が行きすぎた(好ましくない)状態にあれば、さまざまな手段で意図する方向へと誘導しようとします。

 頻繁に見られるのが、記者会見などで通貨高(または通貨安)を牽制する発言を繰り返す「口先介入」です。

 SNB(スイス国立銀行)などは、実際にマーケットへ無制限介入を続け、スイスフランの為替レートをコントロールしていました。

 先進国の為替誘導政策は、マーケットの“旬のテーマ”となりやすく、それによって生まれたトレンドは、中央銀行の意図に沿っているわけですから、安心感が違います。

 しかし、中央銀行はいつも、いつまでも市場をコントロールできるわけではありません。SNBの無制限介入は限界を迎え、結果、2015年1月15日、「スイスフランショック」を引き起こしました。 

 中央銀行の通貨誘導政策には必ず賞味期限があります。“出口”をイメージしてトレードすることが必要です。

中央銀行の会合・会見は要注目
POINT 3 為替大国アメリカの動向に注目!

各国の通貨政策の裏にはアメリカの合意が!?

 中央銀行が為替市場の中期的な流れを生み出した事例はまだまだあります。

 2013年3月、日本銀行の総裁に黒田東彦氏が就任し、「異次元の量的緩和」政策を取り、円安へと進めました。

 また、ユーロ圏で2014年末から翌年前半にかけて、ユーロ安が大きく進んだのは、ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁が追加金融緩和を示唆、実行したためです。

 これらは一見、それぞれの国の中央銀行が単独で決めたように思えます。しかし、円安にしろ、ユーロ安にしろ、裏側ではドル高を誘引します。

 アメリカへの影響がありますから、通貨安を誘導するような政策を決断する裏には、やはり政治があります。

 ECBが市場の期待を上回る追加金融緩和策を発表した直後、私はメルマガにこう書いていました。

 「これだけの発表をするからには米国の了承もとっているのでしょうから、米国もとりあえず介在しない可能性が高いのでしょう」(2015年1月23日配信)

 アメリカのGOサインがないまま、中央銀行が通貨安へ誘導しようとしても難しいものがあります。しかし、アメリカの同意を取り付けているのであれば、中央銀行の意図通りに為替市場が動く可能性は高まります。

為替市場では政治、とくにアメリカの意向が強く反映されます。

 直接、売買の材料とはしませんが、値動きの見通しを立てる際には気にかけておくといいでしょう。

パラダイムチェンジにアメリカの影アリ!?
3章関連キーワード

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為替と金利の密な関係
POINT 1 金利動向は、事前予想との乖離があるか?
POINT 2「市場金利」にも目を配る!
POINT 3 2国間の金利差が重要!
POINT 1 金利動向は、事前予想との乖離があるか?

サプライズがあると相場は大きく動く

 為替相場を動かす大きな要素として、各国の政策金利があります。政策金利の変更が与えるインパクトは、基本的には「政策金利の引き上げ=通貨高要因=買い材料」「政策金利の引き下げ=通貨安要因=売り材料」となります。

 しかし、大切なのは、政策金利が何%になるかという結果そのものではなく、サプライズがあるかどうか。マーケットは「事前予想と結果との乖離」に大きく反応します。

 「事前に利上げが予想され、結果も利上げ」なら、強い買いにはなりません。しかし「予想は据え置きだったのに利上げ」となると、大きく買われやすくなります。

 また、政策金利の発表と同時に行われる記者会見や発表される声明文も市場は注視しています。

 例えば2017年2月、RBNZ(ニュージーランド準備銀行)は政策金利の据え置きを発表。事前予想は一部、利上げを予想する声もありつつも、据え置きが大勢。サプライズのない結果だったのですが、会合終了直後からNZは売られました。声明文で、「今後も相当な期間、据え置く」と一部にあった利上げの予想を全否定したためです。

政策金利は「今後、どうなるのか」の見通しも重要なのです。

政策金利の“サプライズ”で市場は動く
POINT 2 「市場金利」にも目を配る!

長期金利は債券価格と反対に動く

 「今日は長期金利が上昇したため、米ドルが買われた」 こうしたニュースを目にすることがあるかと思います。ここでいう金利とは、政策金利ではなく、債券市場で取引される国債の利回りのこと。この市場金利も、目配りをしておきたい要素のひとつです。

 混乱する人もいるようですが、債券の価格と利回りは反対の方向に動きます。

債券の価格が上がると利回りは下がり、債券価格が下がると利回りは上がるという関係にあります。 例えば、「利率5%・価格100円・償還まで10年」の国債があったとします。これを98円で買うことができると、年5円を10年間受け取れるので50円の利益。

 さらに、98円で買った債券が10年後、100円で償還されると2円の利益となり、合計利益は52円です。 98円の投資に対して10年で52円の利益。年間利回りは5・3%となります。債券を安く買えたので、利回りが上がったわけです。

為替市場と無関係ではない「市場金利」

 債券市場では国債をはじめ、さまざまな債券の売買が行われていて利回りが変動します。

 とくに2年ものの国債の利回りは短期金利の指標として、10年もの国債は長期金利の指標として利用されるため、多くの人が注目しています。

 わかりにくい国債利回りですが、為替相場とも無関係ではないのです。

覚えておきたい「市場金利」の基本
POINT 3 2国間の金利差が重要!

トランプラリーの原因もアメリカ長期金利の上昇

 長期金利への注目度がにわかに高まったのは2016年11月のトランプラリーでした。トランプ当選直後、私はこんなメールを配信しています。

 「円金利がゼロのまま米金利が上昇するなら日米金利差の拡大により当然、米ドル/円は上昇することになる。米大統領選という大きなリスクイベントを越え、再びもとのトレンド、つまり株高・円安へと回帰していくのでしょう」(2016年11月13日配信)

 為替市場は通貨と通貨の交換取引ですから、アメリカの金利だけでなく「日米の金利差」を見て米ドル/円の為替レートも動きます

 トランプの当選が決まると、景気高揚の期待感が高まり、債券市場から株式市場へとマネーは動きます。すると、債券価格は下がり、長期金利は上がります。

 アメリカの長期金利が急騰し、日米金利差は拡大。「資金を円で持っているより米ドルで持っていたほうが多くの金利がもらえる」となれば、円を米ドルに交換しようとする動きが高まるわけです。

 日米金利差の拡大は米ドル/円の買い材料となり、猛烈な速さで円安が進みました。

 このように市場金利は一度動き出すと加速度がつきやすく、為替市場に大きな影響を与え、市場のテーマとなることがあります。

 市場金利については情報が入りにくいのですが、僕のメルマガではHSBC銀行でチーフディーラーを務めた竹内典弘さんが金利をもとにした分析を配信してくれています。

 トランプ当選の翌日に配信されたメールを紹介しましょう。

 「昨日、米10年債金利は今年1月以来の水準である2・075%と前日より約21bpもの上昇。短期的には米ドルは米金利上昇に伴い更に上昇するものと考えられる」(2016年11月10日配信)

 このあと、アメリカの長期金利は2・5%まで上昇し、竹内さんの見通し通り米ドルは急騰していきました。

(※上記は2017年10月時点の情報です。現在、竹内典弘氏によるメール配信は行っておりません)

市場金利の差は為替市場のテーマになる
3章関連キーワード

(ザイ投資戦略メルマガ事業部)

「【西原宏一が教える FXトレード戦略超入門】「金」などのコモディティ市場にも目を配ろう」へ続く)


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