(「【西原宏一が教える FXトレード戦略超入門】チャートを補完するファンダメンタルズ分析」から続く)
リスク許容度が高ければ、投資活動が活発に
為替レポートを読んでいると頻出するのが、「リスクオン/リスクオフ」という言葉。リスクオンとリスクオフは世界の投資家のリスク許容度を示す言葉です。リスク許容度が高ければ、「リスクオン」。投資家は収益を求めて活発に取引を行います。
株式市場に資金を投じたり、原油を買ったり、金利の低い円を売って金利の高いオセアニア通貨や新興国通貨を買うこともあるでしょう。
一方で、「中国経済が危ないらしい」「あの巨大銀行の経営が傾いているようだ」というように、先行きの不透明感が広がると、投資家は積極的に収益を求めるよりも、リスク資産を減らし資金を守ろうとします。
持っている株を売却してキャッシュ(現金)に戻したり、新興国から資金を引き揚げたり、あるいは安全性が高い先進国の国債などを買ったりします。これが「リスクオフ」。
為替市場では、大きな傾向として、リスクオンであればオセアニア通貨や新興国通貨が買われやすくなります。リスクオフであれば円が買われ、米ドルやスイスフランが買われやすくなります。
市場のムードがリスクオンかリスクオフなのかは、戦略を組み立てるうえで欠かせない材料なのです。
今、投資家のリスク許容度はどうなっているのだろうかと思ったとき、わかりやすいのは株式市場、とくにアメリカの株式市場を見ることです。
個別株の動向を見る必要はありません。日経平均のように市場全体の動向を教えてくれるNYダウ平均、あるいはS&P500をチェックすれば十分です。
NYダウ平均がわかりやすくリスクオフを示したのが、2015年8月のチャイナショックです。
チャイナショックの発端は人民元の切り下げや上海株の暴落です。それによってNYダウ平均は急落し、その影響は世界へと波及しました。
当時のメルマガを掘り起こすと、こう解説していました。
「今までは上海株が暴落しても人民元が切り下がってもどうにか持ちこたえていたのですが、本丸である米国株が崩れてから世界が総崩れ。こうなるとファンド勢は資金確保のため、利が乗っている日本株を処分せざるを得ない。日本企業の業績が悪化したからではなく、他のポートフォリオでの損失補填のため、我先にと日本株を利益確定している展開。アベノミクスの株高政策にも黄色信号が灯っています。ここまでマーケットが崩れてしまうと、補正予算程度では戻せないでしょう」(2015年8月25日配信)
チャイナショックで、NYダウ平均は1万7400ドルから1万5000ドル台へと暴落。同時に米ドル/円は、124円から116円まで下げることになりました。
世界の投資家にとって、もっとも大切な投資先はアメリカの株式市場。それが大きく崩れたとき、他の金融市場も無関係ではいられないのです。
NYダウ平均のチャート分析は大局をチェック
トレードする通貨ペアにもよりますが、戦略を組み立てる際、NYダウ平均と日経平均くらいはチェックしておきたいものです。
細かな分析は必要はありません。大切なのは、上昇トレンドなのか、下落トレンドかの大局を見ることにあります。
為替と同じように3本の移動平均線を表示させ、日足や週足の75・200の移動平均線の動き――高値・安値といった節目を割り込んでいないか? 上抜けたりしていないか? といったところに着目しておけば十分です。
そこからリスクオンとリスクオフの空気感を感じ取れれば、FXの戦略がより精度の高いものとなるはずです。
とはいえ、NYダウ平均やS&P500といった銘柄は、通常、FX会社のチャートでは表示できません。
プロであればブルームバーグなどの端末ですべて表示できるのですが、非常に高価です。インターネットを検索すれば、それぞれのチャートは出てくるでしょうが、いちいち「NYダウ平均はこのサイトで」とページを切り替えるのも面倒です。
そこで便利に使えるのが、CFD口座です。
CFDはFXの兄弟のような金融商品で、株価指数や個別株、原油、ゴールドなどのコモディティ(商品)といった幅広い銘柄をひとつの口座で取引できます。
GMOクリック証券のほか、いくつかのFX会社ではCFDを取り扱っていて、ほとんどが口座の維持手数料はかかりません。
CFD口座を開設しておけば、NYダウ平均などの株価指数のほか、次に紹介するゴールドや原油などの商品相場のチャートを見ることができます。
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米ドルトレードにはゴールド相場に注目
為替市場の動きを見通すのに、コモディティ(商品)市場が有力なヒントとなることがあります。
代表的なコモディティ銘柄としてまずあげられるのが、「金(ゴールド)」です。
「有事の金」とも言われ、戦争やテロなど、危機的な状況になると、ゴールドが買われる傾向があります。それは、ゴールドが信頼の高い安全資産だからです。
ゴールドと米ドルには逆相関の関係があります。逆相関とは、一方が上がれば他方が下がる関係のこと。ゴールドが上がれば、米ドルは下がりやすく、ゴールドが下がれば、米ドルは上がりやすくなります。これは覚えておくとよいでしょう。
こうした関係は長期的にも、短期的にも見られます。アメリカの雇用統計が悪い結果となったとき、米ドルが売られる裏ではゴールドが買われていた、なんてことはよくあります。
「マーケットで話題になっているのがゴールド。ひさしぶりに200日線を割り込んで、続落を示唆。この意味においてはドルの続伸を示唆。ポジションは変わらず、米ドル/円のロングのみ」(2016年10月10日配信)
このメルマガを執筆したとき、私が注目したのがゴールドの200日線でした。
ゴールドの日足が200日線を割り込んだということは、大局がゴールド安に変わった可能性があるということ。
つまり、ゴールドと逆相関にある米ドルは上がっていくだろうという見通しだったわけです。
為替市場で圧倒的に取引が多い米ドル。その動きを見通す材料としてゴールドは有力な手がかりを与えてくれることがあるのです。
カナダドルや英ポンドにも影響を与える原油相場
原油価格もまた、為替市場に影響を与えます。とくに、原油価格は特定の通貨と強い関係があります。
その筆頭が、カナダドルです。カナダは世界でもトップ5に入る産油国で、原油価格が上がればカナダドルは買われやすく、原油価格が下げればカナダドルは売られやすくなります。
原油市場全体の動向を見るのに使われているWTI原油(West Texas Intermediate)が急落すると、カナダドルは強く反応します。
また、毎週水曜日に発表される「アメリカ週間原油在庫」の在庫の増加はカナダドルの悪材料となり売られ、在庫の減少は好材料としてカナダドルが買われることがあります。
そして、WTI原油やアメリカ週間原油在庫と並んで注目度の高い原油の指標が「ブレント原油」。これに反応するのが、英ポンドです。
ブレント原油は北海にある油田から採掘される原油で、その価格はヨーロッパの原油価格の指標となっています。北海油田を有するイギリスは原油の輸出国で、その産出量は世界トップ20に入るほど。英ポンドと原油価格も一定の相関が見られるのです。
2016年6月、国民投票でイギリスのEU離脱が決定し、英ポンドは猛烈に売られましたが、原油価格の安定が、その後の英ポンドの反発を支えました。
また、時折、米ドル/円と原油価格が密接な関係を持つことがあります。
例えば、2016年前半の相場は「原油が下がればリスク警戒感が強まって円が買われ、原油が上がれば円が売られて……」という動きが顕著で、「原油本位制」と呼びたくなるようなものでした。
原油価格が急落すると、リスクを積極的に取りにいくのは難しく、円は買われやすくなります。原油価格の下落は、米ドル/円やクロス円通貨ペアの下降トレンドを促進させる材料となるのです。
商品相場と無関係でいられない豪ドル
もうひとつ、原油価格との関係が深い通貨が豪ドルです。オーストラリア自体は原油の輸出国ではありませんが、その主要輸出品は鉄鉱石。鉱工業を経済の主力とする国なので、コモディティ市場ととても関係が深いのです。
当然、鉄鉱石の価格は豪ドルに影響を及ぼしますし、鉄鉱石などの「ハードコモディティ」は、全体的に原油市場の影響を受けやすいため、原油の値動きによって、豪ドルが動くという特徴があります。
そのため、僕自身、豪ドルのトレードをするときは、WTI原油価格や鉄鉱石の価格を注視しています。
為替との関わりがある商品市場は、金や原油以外にもたくさんあります。
農産物の価格とブラジルレアルは順相関にありますし、乳製品価格が上がれば、NZドルも上がるという関係もあります。
トレンドを察知し、見通すためにはコモディティ市場の動きも気にしておきたいものです。
(ザイ投資戦略メルマガ事業部)
(「【西原宏一が教える FXトレード戦略超入門】リスク管理できないトレードはするな!」へ続く)
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