「急速な円高が到来」
「ドル急落、1ドル=95円台へ!」
「12年7ヵ月ぶりの円高水準」
…そんなニュースが続々と流れたのは3月17日のこと。ドル/円相場が急落したのだ。それまでズルズル下がりつつあったドルはナイアガラの滝状態となり、市場は騒然。ドル買い投資家の屍が累々と積み重なっていったのである。
いったい、これからドルはどこまで下がるのか? 『ザイFX!』編集部がお届けする当コーナー「ドル・円・ユーロの明日はどっちだ!?」では、これを最初の大きなテーマとして掲げ、取材を開始することにした。
まず、話を聞いたのはマット今井こと、今井雅人さんだ。かつてUFJ銀行などでディーラーを勤めていた今井さん。その全盛期には1ヵ月で4~5億円もの利益を上げていたというスゴい人である。
ちなみに今井さんは『ザイFX!』でも「為替で読み解く世界経済」という連載コラムをスタートしている。ぜひ、そちらもご覧いただきたい。
さて、3月17日にどえらく下がったドル/円相場では何が起こっていたのだろうか? 「ドル/円の95~100円には地雷が埋まってたんですよ」と今井さんは言う。
地雷? えっ、何のことですか? 相場ってやっぱり戦争みたいなもの? 取材班のギモンをよそに、今井さんは「その話をする前に…」とドル/円相場の過去について語り始めた。
「ここ10年以上、ドル/円は101円を割り込みませんでした。1999年に101円台があり、2005年にもう一度101円台。なんで、ここで止まったか。簡単な話です。要は国が介入したんです」
そういえば、最近は”介入”って聞かないけど、以前はそれがあったわけですね。
米ドル/円の長期チャート
「日本は99~00年には11兆円、円売りドル買い介入しました(一部ユーロ買いも)。また、正確には05年には介入してないんですが、その前、03~04年には35兆円も円売りドル買い介入してたんです」
ならば、今回も1ドル=100円付近になったら介入があっていいと思えるのだが、前2回と今回には状況に大きな違いがあると今井さんは言う。
「前2回の円高時はアメリカは景気が良かった。4%ぐらいの経済成長率があったんです。だから、アメリカにも余裕があって『円高を止めたい』と日本が言ってもアメリカは文句を言わなかった。だけど、今回はアメリカの景気が悪い。成長率はこれから下がっていって、リセッション(景気後退)になるかも…と言われている状況ですからね」
ちなみに日本は単独で円売りドル買い介入してもいいのだが、それには必ずアメリカの了承を取らないといけないという。何でもアメリカの顔色をうかがわなくてはいけないのはいろいろな場面で見慣れた光景だが、為替も例外ではないということだ。
「前2回の円高時はアメリカは景気が良かった。4%ぐらいの経済成長率があったんです。だから、アメリカにも余裕があって『円高を止めたい』と日本が言ってもアメリカは文句を言わなかった。だけど、今回はアメリカの景気が悪い。成長率はこれから下がっていって、リセッション(景気後退)になるかも…と言われている状況ですからね」
ちなみに日本は単独で円売りドル買い介入してもいいのだが、それには必ずアメリカの了承を取らないといけないという。何でもアメリカの顔色をうかがわなくてはいけないのはいろいろな場面で見慣れた光景だが、為替も例外ではないということだ。
■共和党政権は介入したがらない
サブプライムローン問題が明らかになってからの一連の動きを今井さんはこう説明する。
「サブプライムローン問題が起こったことで、株は下がり、金利は下がり、景気も悪くなった。その結果として、ドルが売られました。ドル安は最後に起きた現象なんです。過去にはドルの下落が金融市場を混乱に陥れたこともありました。こういう時は震源地がドル安だから、ドル安を止めることに意味がある。けれど、今回はドル安は結果であって、原因ではないから、ドル安を人為的に止めても意味がないんです」
また、今のブッシュ政権は共和党だが、そもそも共和党は介入したがらないのだという。市場に任せるのが基本原則なのだ。だから、「よほどのことがない限り、介入しません。そして、今はまだ『よほどのこと』までは起こっていません」という。
ただ、日本が総額35兆円の円売りドル買い介入を行った03~04年もブッシュの共和党政権だった。この時はなんで介入できたのだろう?
「03~04年当時、世界経済の大きなテーマは『日本のデフレ』でした。日本のデフレを止めないと世界経済がおかしくなるという議論をよくG7などでしてたんです。そんな中、日本政府が円を売ってドルを買えば、日本の市場に円がどんどんあふれることになる。そうやってお金が余ればモノの値段が上がる、つまりインフレが起きるだろうということで、巨額の介入が行われたんです」
以上のことはアメリカの財務次官だったジョン・テイラーという人が『テロマネーを封鎖せよ』という著書の中でハッキリ書いていることだという。けれど、今の世界経済の大きなテーマは「日本のデフレ」ではない。
結局、さまざまな条件から今回は以前と同じような介入は考えにくい状況にあったと言える。しかし、世の中には「前もここで止まったから…」と安易に考え、「100~101円は割らないだろうという前提でモノを考え出す人が結構出てくる」のだという。
その結果として、「100円より下のところにたくさん埋まっていたと思われるのが”地雷”、つまり損切り目的の大量の円の買い戻し注文なんですよ」
ここでついに話は”介入”から”地雷”へ戻ってきたのだった。
(「ドルはどこまで下がるのか? (2)」へつづく)
(ザイFX!編集部・井口稔)
「サブプライムローン問題が起こったことで、株は下がり、金利は下がり、景気も悪くなった。その結果として、ドルが売られました。ドル安は最後に起きた現象なんです。過去にはドルの下落が金融市場を混乱に陥れたこともありました。こういう時は震源地がドル安だから、ドル安を止めることに意味がある。けれど、今回はドル安は結果であって、原因ではないから、ドル安を人為的に止めても意味がないんです」
また、今のブッシュ政権は共和党だが、そもそも共和党は介入したがらないのだという。市場に任せるのが基本原則なのだ。だから、「よほどのことがない限り、介入しません。そして、今はまだ『よほどのこと』までは起こっていません」という。
ただ、日本が総額35兆円の円売りドル買い介入を行った03~04年もブッシュの共和党政権だった。この時はなんで介入できたのだろう?
「03~04年当時、世界経済の大きなテーマは『日本のデフレ』でした。日本のデフレを止めないと世界経済がおかしくなるという議論をよくG7などでしてたんです。そんな中、日本政府が円を売ってドルを買えば、日本の市場に円がどんどんあふれることになる。そうやってお金が余ればモノの値段が上がる、つまりインフレが起きるだろうということで、巨額の介入が行われたんです」
以上のことはアメリカの財務次官だったジョン・テイラーという人が『テロマネーを封鎖せよ』という著書の中でハッキリ書いていることだという。けれど、今の世界経済の大きなテーマは「日本のデフレ」ではない。
結局、さまざまな条件から今回は以前と同じような介入は考えにくい状況にあったと言える。しかし、世の中には「前もここで止まったから…」と安易に考え、「100~101円は割らないだろうという前提でモノを考え出す人が結構出てくる」のだという。
その結果として、「100円より下のところにたくさん埋まっていたと思われるのが”地雷”、つまり損切り目的の大量の円の買い戻し注文なんですよ」
ここでついに話は”介入”から”地雷”へ戻ってきたのだった。
(「ドルはどこまで下がるのか? (2)」へつづく)
(ザイFX!編集部・井口稔)
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