■誰もが予想できなかった、足元の株式市場の好調ぶり
株高が続いている。7月23日(木)の米国株式市場では、ダウ指数が9000ドルの大台に乗り、ナスダックは連続12日の上昇となった。これらは市場関係者を驚かしている。
1990年代のITバブルの時でさえ、このような連騰は見られなかった。ヨーロッパ市場も好調で、FTSEユーロファスト300は連続9日の上昇となっている。これは2006年以来のことだ。
足元の水準は、もっとも楽観的なアナリストが年初に立てた見通しさえ、保守的に見えるほど高い。
ゴールドマン・サックス、IBM、AT&Tなど大手企業の好決算は市場にとって「ポジティブ・サプライズ」であり、6月の中古住宅販売件数をはじめとした米国の住宅データでさえ、好転の兆しを見せている。
■「株高=ドル安」の傾向がさらに鮮明になってきた
そうなると、当然のように投資家のリスク許容度が高まって、「株高=ドル安(ドルインデックス下落)」の傾向が鮮明になっている。先々週からは、受動的に「リスク避難先」として買われていた円の反落が目立つようになってきている。
つまり、ユーロ/米ドルの上昇は、ユーロ/円の上昇をもたらすだけでなく、米ドル/円の下値余地をも限定している。結果として、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)相場の動向が、メジャー通貨ペアである米ドル/円にも影響を及ぼしているのだ。
このような理屈は、これまでもこのコラムで繰り返し説明している。為替市場の動向を読み解くもっとも重要なポイントであるにもかかわらず、米ドル/円やクロス円の値動きだけを見てマーケットを解釈しようとする傾向はなお強く、強調しすぎることはないであろう。
■株高なのに、ユーロ/米ドルは早くも弱気相場入り?
だが、前日の7月23日(木)から、為替市場と株式市場の連動性にやや異変が生じているように見える。
米国株が大幅続伸しているにもかかわらず、ユーロ/米ドルをはじめとする複数のメジャー通貨ペアが、頭打ちの様相となっているのだ。
(出所:米国FXCM)
上のチャートのように、ユーロは対米ドルで1.4291ドルまで上昇したが、その後は大幅安となった。一時は1.4118ドルまで下落し、直近3日間の安値を更新していた。チャート的には典型的な「かぶせ線」(※)となり、トップアウト(頭打ち)の可能性が高いと解釈されている。
株のパフォーマンスと逆行しているかに見えるユーロの値動きには、いろいろな見方がある。その1つは、1.4300ドルの節目をブレイクできなかったために、多くのトレーダーがいっせいに手仕舞いに動いたという「心理的な要素」だろう。
このことから、トレーダーの多くが、米ドル安のトレンドが継続できるかどうかに確信を持てていないと「裏」を読むこともできる。
(※編集部注:「かぶせ線」はチャートのローソク足の見方の1つで、始値は前日の大陽線の高値よりも高くなったが、終値は前日の大陽線の実体の中で引けたという状況。弱気相場入りのシグナルとされている)
■スイスフランにまつわるジンクスとは?
それでは、米ドル安のトレンドが再開されるか否かを見極める目安はないのだろうか?
筆者は、もっとも単純な方法として、米ドル/スイスフランに注目している。
上のチャートのように、ユーロは対米ドルで1.4291ドルまで上昇したが、その後は大幅安となった。一時は1.4118ドルまで下落し、直近3日間の安値を更新していた。チャート的には典型的な「かぶせ線」(※)となり、トップアウト(頭打ち)の可能性が高いと解釈されている。
株のパフォーマンスと逆行しているかに見えるユーロの値動きには、いろいろな見方がある。その1つは、1.4300ドルの節目をブレイクできなかったために、多くのトレーダーがいっせいに手仕舞いに動いたという「心理的な要素」だろう。
このことから、トレーダーの多くが、米ドル安のトレンドが継続できるかどうかに確信を持てていないと「裏」を読むこともできる。
(※編集部注:「かぶせ線」はチャートのローソク足の見方の1つで、始値は前日の大陽線の高値よりも高くなったが、終値は前日の大陽線の実体の中で引けたという状況。弱気相場入りのシグナルとされている)
■スイスフランにまつわるジンクスとは?
それでは、米ドル安のトレンドが再開されるか否かを見極める目安はないのだろうか?
筆者は、もっとも単純な方法として、米ドル/スイスフランに注目している。
ドルインデックスの中で、スイスフランが占める比率は3.6%ともっとも低いが、下のチャートのように、なぜか米ドル/スイスフランとドルインデックスの値動きはいちばんよく似ているのだ。
(出所:米国FXCM)
最近、マーケットで、あるジンクスがささやかれていることをご紹介したい。それは、米ドル/スイスフランが1.0600フラン、ユーロ/スイスフランが1.5000フランのそれぞれの節目をブレイクできないというものだ。
確かに、6月2日以来、米ドル/スイスフランは1.0600フランの節目を下抜けられなかった。その理由は単純だ。スイス当局が市場に介入していて、対ユーロをはじめとして、スイスフラン高を阻止しようとしているからだ。
■スイス当局が対米ドルで介入する可能性がある!?
そうすると、ユーロ/米ドルの頭打ちも理解できる。
米ドル/スイスフランとユーロ/スイスが揃って切り返してきたので、ユーロのロング(買い持ち)筋はとりあえず撤退するしかなかった。米ドル安となるか否かのカギを握るのは、足元で介入の可能性がある米ドル/スイスフランにあるといっても過言ではないだろう。
最近、マーケットで、あるジンクスがささやかれていることをご紹介したい。それは、米ドル/スイスフランが1.0600フラン、ユーロ/スイスフランが1.5000フランのそれぞれの節目をブレイクできないというものだ。
確かに、6月2日以来、米ドル/スイスフランは1.0600フランの節目を下抜けられなかった。その理由は単純だ。スイス当局が市場に介入していて、対ユーロをはじめとして、スイスフラン高を阻止しようとしているからだ。
■スイス当局が対米ドルで介入する可能性がある!?
そうすると、ユーロ/米ドルの頭打ちも理解できる。
米ドル/スイスフランとユーロ/スイスが揃って切り返してきたので、ユーロのロング(買い持ち)筋はとりあえず撤退するしかなかった。米ドル安となるか否かのカギを握るのは、足元で介入の可能性がある米ドル/スイスフランにあるといっても過言ではないだろう。
(出所:米国FXCM)
以上の検証を踏まえ、今後も米ドル/スイスフランの値動きを注視することで、米ドル安のトレンドが継続するか、再開するのかといったタイミングを測ることができると考えている。
今回の局面では、ズバリ、米ドル/スイスフランの1.0600フラン割れがあれば、米ドル安トレンドが再開するということである。
仮にそうなれば、ユーロ/米ドルは1.4700ドル、英ポンド/米ドルは1.7150ドル(場合よっては1.7500ドル)、豪ドル/米ドルは0.8500ドルというターゲットが射程圏に入ってくるだろう。
夏場のマーケットでは、米ドル安がもう一段進行する可能性が高い。前記のターゲットも含めて、その検証は次回に行いたい。
以上の検証を踏まえ、今後も米ドル/スイスフランの値動きを注視することで、米ドル安のトレンドが継続するか、再開するのかといったタイミングを測ることができると考えている。
今回の局面では、ズバリ、米ドル/スイスフランの1.0600フラン割れがあれば、米ドル安トレンドが再開するということである。
仮にそうなれば、ユーロ/米ドルは1.4700ドル、英ポンド/米ドルは1.7150ドル(場合よっては1.7500ドル)、豪ドル/米ドルは0.8500ドルというターゲットが射程圏に入ってくるだろう。
夏場のマーケットでは、米ドル安がもう一段進行する可能性が高い。前記のターゲットも含めて、その検証は次回に行いたい。
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