今回は、アルジャントレード株式会社の代表取締役で、ファイナンシャルプランナーの持田有紀子さんに、為替を中心とした相場見通しを聞いた。

持田さんは、野村証券に勤務した後、現在は、外国為替取引や金融派生商品(デリバティブ)を中心とした投資情報のサービスを手がけている。
最後に、アルジャントレードが関わっているヘッジファンドのこともお聞きした。お見逃しのないように!
■大きなトレンドでのドル安は簡単には変わらない
—— 米国経済の見通しをどのように見ていらっしゃいますか?
米国経済の見通しそのものは、最近の要人発言にもあるように、横ばいと見ています。見通しが明るくなれば、当然、実際の経済も上向く可能性は高い。ただし、楽観はしていません。
10月2日発表の米国雇用統計は、悪い内容でした。非農業部門の雇用者数がプラスになるのは、間違いなく来年以降でしょう。

失業率が10%以上になるのも時間の問題で、それを一度見るとしか思えません。
それでも、小売売上高などの消費者関連指標は底堅い。ただし、米国政府がこれまで打ち出してきた経済対策に伴う「特需」が多分にある点は注意が必要です。
つまり、底上げされた形になっていて、それがはげてきた時が問題。住宅減税などの効果が今のところは続いていますが、これがいつまで続くか、疑問です。
米国の市場関係者に話を聞くと、失業率が上昇していく中でも、新たなエネルギー政策による恩恵を受けて、人出も足りず、バブルモードになっている都市なども一部にはあるようです。
しかし、その効果は、一般の人々にまったく波及していなくて、一般論で言うと、景気の本格的な回復はまだまだだと思います。
——アメリカはこれから、ハロウィン商戦、クリスマス商戦と続きますが、期待できませんか?
それでも、若干の持ち直しはあるでしょう。
その時々で、悪い話ばかりではなく、ところどころに良い話がちょっとは出ることもある。その時には、需給の上で戻りがあるかもしれません。
大きなトレンドでのドル安は簡単には変わらないものの、それでも、特にアメリカ人は、楽観的な人々なので、みなが仙人のように消費を控えてしまうということにはならないと思います。そのタイミングでは戻りがあるでしょう。
ただし、お金の使い方では、新品ではなく中古で済ませるなど、行動の一部を変えているようなので、不動産バブル期のような盛り上がりを期待するのは無理だと思います。
■米国債の価格が下がったら、みんなが困る!
——米国債の入札が続いていますが、比較的好調です。金利の見通しを、どのように見ていらっしゃいますか?
米国債の金利は、もう少し上がると思っていましたが、実際のところ、入札は意外に好調ですね。それなりの金利に抑えられていて、短期金利は上昇するどころか、むしろ下がっています。
そういったわけで、為替のドルへの影響という意味では、まったく良い状況にはなっていません。
一時に懸念されていた「米国債の暴落」というリスクは、現在ではほぼなくなりました。米国の短期金利はなかなか上がっていきづらい状況で、ドル買いは、あまり進まないでしょう。
また、この先の要人発言などで、「出口戦略」を注意深く見ることが一番のポイントになるでしょう。
前回のG7では、出口戦略についてはしばらくやらないと見られています。だから、現在のドル安の流れが続く可能性は高い。
けれども、出口戦略が話題になる時には、ドルが戻る場面があるとは考えています。
米国債は、中国はもちろん、海外からの需要は強いようです。まあ、本当に「米国債の暴落」などということになったら、世界中がまた困ったことになってしまいます。
■ユーロは、基軸通貨にはなれない!
ドルが基軸通貨であり続けるべきかという話があるけれど、ダメだ、ダメだと言われつつ、主役交代と言われつつ、ドルに替わる通貨は、そう簡単に出てきません。
当然、アジア人民元みたいな通貨が表に出てくるには、あまりにも時間がかかりすぎて、現実のところはムリでしょう。
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