(「『FX友の会 in 東京 2011』レポート(1) ユーロをものすごくネガティブに見ている!」からつづく)
■資金管理さえうまくやれば、爆発的に勝てることがある!
このあたりでFX友の会はスタートしてから2時間以上が経過していたが、勉強会はノンストップで続いた。このあと、登場したのは個人のFXトレーダー2人。ともに叶内さんのサポートが少しあったものの、基本は1人での講演だった。
まずはテクニカルメインの専業トレーダー・バカラ村さん。
バカラ村さんはザイFX!の「FX取引ツールを本音でレビュー」のコーナーにも時々執筆してもらっており、FXに関するDVDなども出している。
バカラ村さんの話は、トレードに関する基本的な考え方から、チャートや注文情報画面を示しながらの具体的解説まで、非常に盛りだくさん。専業トレーダーならではの実践的な内容だった。
トレードにおいて、バカラ村さんが重視しているのは次の3つ。
(1)相場観
(2)タイミング
(3)資金管理
バカラ村さんはいわゆる“テクニカル派”ということになりそうだが、意外にも売りから入るか、買いから入るかという相場の方向性を見定めるのはテクニカル分析ではなく、相場観なのだという。
「相場観に基づいて、相場の方向性を見つけます。そして、エントリーはその方向に行うのですが、そのエントリーのタイミングをはかるのに、テクニカル分析を使うんです」
そして、相場観やテクニカル分析よりも、さらに重要なのが資金管理だという。
「トレードで負ける場合は資金管理ができていないからです。相場観ははずれても、トレードで勝てることは十分あります。資金管理さえうまくやれば、爆発的に勝てることもあるんです」
また、バカラ村さんはトレードにおける「メンタル」の重要性についても強調していた。
「インヴァスト証券でやっているリアルトレードコンテスト。あれに名前を出して参加するのは大変だと思います。
あの成績を見ると、著名な人たちでも、損益がマイナスになっています。名前が出ていると、かなりトレードしにくいはずなんです。いつもなら10pipsで利食うところを、コンテストに参加して名前が出ているために5pipsで利食ってしまったりする。
トレードはメンタルに左右されるものだからです」
■ダブルトップの教科書的説明が間違っているケース
バカラ村さんは具体的なチャートを示して、いろいろ解説してくれたのだが、次にその中の2例ほどを紹介しよう。
1つはユーロ/スイスフランの日足について。下のチャートの黄色で囲んだところは、ダブルトップのような形になっている。このとき、ネックラインからトップまでの幅は730pipsあった。
「これがダブルトップで、ネックラインを割れたあとは、ネックラインから730pips下がるのが教科書的説明というのはウソ」だとバカラ村さんは言い切る。
その理由は?
「相場が上昇してきたあとにできたダブルトップであれば、ダブルトップの形成期間中は、まだ上昇が続くのではないかと考えた買いがたまっているはずです。
けれど、それが上昇せずに、ついにネックラインを割れ、上昇相場が続きそうもないと見られるようになるからこそ、上昇を期待して買った人の投げが出るわけです。
そして、ネックラインからトップまでの上昇期間中に買った人がすべて投げるまで下落が続くからこそ、ネックラインからトップまでと同じ値幅だけ下がるだろうと言えるわけです」
これに対し、このユーロ/スイスフランの日足チャートはずっと下落が続いたあとにダブルトップ的な形ができている。だから、その期間に上昇を期待した買いが積極的に入ったという感じではない。
だから、この場合は、買いがそれほどたまっていないので、ネックラインから730pipsまでは下がらないとみるべきだと思います」
■「ベアトラップトレード」を超具体的に解説!
もう1つ、豪ドル/円5分足を使ったバカラ村さんの「ベアトラップトレード」についても紹介しよう。
「ベアトラップ」とは安値を更新して下落トレンド継続になると思われたのに、それが反転上昇する形。「ベアトラップトレード」とは、いわゆる「ダマシ」が強力な売買シグナルになる1つの例だ。
バカラ村さんは以下に示すような形で、豪ドル/円の売買を行った。ずっと下落してきた相場が反転したところをちょうどうまくつかまえているように見える。
これについては会場から具体的にどうトレードしたのかと質問があり、エントリーと決済について、バカラ村さんからかなり詳しい回答があった。
「水平線で示したレンジの下限(2)を下抜けたところで、本来は下落トレンドが継続するはずです。戻りがあったとしても、(2)で跳ね返されて、レンジの中には戻ってこないはず。
ところが、レンジの中に戻ってきた。そして、レンジの中間に戻ってきたときが、これは『ベアトラップ』ではないかと判断する第一段階になります(A)。でも、この段階ではまだ確信は持てないので、エントリーは控えます。
そして、これがレンジの上限(1)まで戻りきったときに、下がらない可能性が高いと考えます(B)。
その後のエントリーポイント決定には、他のテクニカル指標を使ったりすることもありますが、このときは、移動平均線に支えられたことと、レンジの真ん中あたりだったことを根拠に、(C)でエントリーしました。
このとき、損切りのストップ注文を入れるのは安値のちょっと下ですね(D)。
一方、利益はできるだけ伸ばしていくのがベストですが、豪ドル/円は利上げが遠のいたという話もあり、この数日前から上値が重いと感じていました。そこで、早めに利食いたいということで、以前のレジスタンス付近である(E)のところで利食いました。
どうだろうか? バカラ村さんの超具体的な「ベアトラップトレード」、参考になっただろうか?
■どこかで一念発起すれば誰でもトレードで勝てるようになる
次に登場した個人トレーダーはFX友の会・世話人の奈那子さんが一押しというマークさん。
マークさんはFXを始めたのが2005年。そこから3年間で900万円もの損失を出してしまった。
しかし、そのあたりからトレード成績が改善。その後1年間、資金が増えたり、減ったりした期間を経たのち、直近2年は安定して勝てるようになったそうだ。週ベースでいうと、この1年間で負けたことは2~3回しかないとのこと。
マークさんの話はそれまでと雰囲気が一変、いわゆる“プレゼン”のような感じだった。静かだが説得力のあるそれは、小耳に挟んだところによると、あのスティーブ・ジョブズをマネたものらしい。
マークさんはトレードについて「Change Point of View(視点を変える)」ことを提案する。投資家の95%は勝てないか、市場から退場しているというが、残り5%の勝ち組との違いはどこにあるのか?
「それは才能ではない」とマークさんは言う。そして、「どこかで一念発起すれば、誰でも勝てるようになる」と語る。
■あなたは毎日チャートを見続けていますか?
マークさんはトレードを英語の学習にたとえて、次のように話していた。
「みなさん、英語は少なくとも中学・高校の6年間学ばれてきたと思います。けれど、95%の人は英語が話せないのではないでしょうか?
そういう人が、新しい英語学習法が書かれた本を買って読んだら、話せるようになるでしょうか? おそらく、ならないと思います。
トレードも同じです。今までうまくいかなかった人が、新しいトレード法を試したからといって、勝てるようにはならないでしょう。
大切なのは『正しい手順×時間』。正しい手順で、ずっと継続してやることです」
「勝てないトレーダーと英語ができない人には一つだけ共通点があるんです。英語ができない人は理論は学んでも『リスニング』はやっていないのではないでしょうか。
勝てないトレーダーはテクニカル分析の理論には詳しくても、実際にチャートを見続けることをやっていないのではないでしょうか。
『英語は壮大な慣れ』という言葉があるのですが、『トレードは壮大な慣れ』だと思います。慣れるためにはチャートを見続け、トレードし続ける必要があります。
手法は何でもいいので、自分で作ってください。そして、毎日決まった時刻に、決まった時間、チャートを見続けるのです。そして、自分で決めた手法どおりに、トレードに入ります。注意点は、損切りの値幅より、利益確定の値幅を大きくすることだけ。
これを1000回やってください」
英語は1000時間やるとある程度できるようになるらしいのだが、それにもひっかけたマークさんの話だった。
これは、FXのトレードでそんなに勝てないなぁと感じている記者自身にとっても耳の痛い話だった。確かに記者も「勝てない」と言いつつ、そこまで真摯に毎日チャートと向き合ってはいなかった。
「勝てない」と嘆くのなら、まずは地道な努力を継続的にやらなくてはいけないのだ。
■三空さんの「210万円損切り生放送」も取り上げられた
さて、FX友の会、勉強会の最後はたくさんの人が出演する、いわば“バラエティ・コーナー”。
司会役は奈那子さんとシステムトレーダーのはんぞさん。さらに、ザイFXでもおなじみの三空さん、ザイ・オンラインの尾川編集長、FX友の会“東京支部長”的立場のゆんさん、南アフリカランド研究所のランケンさんといった個人トレーダーに加え、前回の記事でご紹介した西原宏一さん、清水昭男さんもご意見番として登場した(「『FX友の会 in 東京 2011』レポート(1) ユーロをものすごくネガティブに見ている!」)。
ここで一番の大ネタとして取り上げられたのは5月26日(木)に生放送された「ザイFX! TV(原宿)」の番組。三空さんが生番組中の生トレードで、相場急落中にナンピン買いを繰り返し、ついに210万円の損切りに至った、あの話だ。
会場に番組の映像も流れる中、西原さんは「これはコメントのしようがない」とコメント。三空さんは「最近はこの大損した話をするのが一番受けがいいんです」と話していた。実際、今回の勉強会でも、このときが一番会場が沸いていたかもしれない。
また、このコーナーでは、ゆんさんがFXのトレードをするときにつけている「トレードノート」も紹介された。
普段エロ話ばかりしているゆんさんが意外なぐらい几帳面できれいなトレードノートをつけていたことに「ゆんさんはFXをやっていたのか!」とゆんさんを知る一部の参加者からは驚きの声が上がっていた。
これにて、4時間以上に渡るFX友の会の勉強会は終了。このあとは奈那子さんが「一番大事」と話す懇親会へ。120人以上の人が残って、食べながら、飲みながらの交流会となった。その際、参加者から提供された、さまざまな商品が抽選でもらえる「抽選会」も行われた。
その後、記者は離脱してしまって詳細は不明だが、一部の人たちにより翌朝まで二次会、三次会が行われていたようだ。こうして100人以上ものFXトレーダーが一堂に会したFX友の会の夜は更けていったのだった。
(取材・文/ザイFX!編集部・井口稔 撮影/和田佳久)
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