ウクライナ戦争が終結すれば、ユーロの上値余地は大きく拡大。「領土」と「安全の保証」は両立するのか?
みなさん、こんにちは。
先週末、米国のトランプ大統領とロシアのプーチン大統領の会談、いわゆるアラスカサミットが開催されて以降、ウクライナ戦争の終結といった意見も見られるようになってきました。
そもそもアラスカサミットは、多くの西側メディアで批判が殺到しました。
例えば「トランプ大統領は、ウクライナでの戦争の停戦についてプーチン大統領から何の言質も得ることができなかった」「華々しく幕を開けた会談は拍子抜けの結果に終わった」といった意見がありました。加えて「これで西側諸国が続けてきたロシアの孤立化政策は終わりを迎えた」など、散々な内容でした。
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しかし、今週(8月18日~)に入って、トランプ大統領はウクライナのゼレンスキー大統領との首脳会談の冒頭で、戦争終結に向けてプーチン大統領も交えた3者会談の実現を目指すとしています。
一連の会談終了後にプーチン大統領と電話協議する意向も明らかにし、「8月19日(火)の会談がすべてうまくいけば3者会談が開催されるだろう。そうなれば、戦争を終わらせる合理的な可能性が出てくる」と記者団にコメントしました。
トランプ大統領は、ウクライナへの「安全の保証」を巡って「われわれが関与するものになる」とし、欧州諸国が「防衛の最前線」に立ち、米国はウクライナ防衛で「彼らを助ける」というスタンスを明確にしました。
ウクライナの立場ですが、ゼレンスキー大統領は領土喪失の受け入れは「ほぼ不可能」としながらも、強固で信頼できる安全の保証があれば、交渉の余地があると示唆しています。
欧州首脳もトランプ大統領に対し、ロシアが領土割譲を要求する中での安全の保証について、具体的内容を明確にするよう求めているようです。
こうした流れから、ウクライナ戦争は終結するかもしれません。
欧州の報道では、戦争終結の可能性は極めて低いというものも多いのですが、仮に戦争が終結すれば、欧州情勢の改善、加えてリスクオンとなり、ユーロの上値余地は大きく拡大します。
RBNZ連続利下げ見込みでニュージーランドドル急落。ユーロは上値が抑えられるも対米ドル、円、ニュージーランドドルで押し目買い
ただ、今週のユーロは上値の重い展開となっています。それはRBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])が極めてハト派なスタンスを示したからです。
今週のマーケットはウクライナ情勢に加え、8月22日(金)にジャクソンホール会議で行われるパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の講演に注目が集まっています。
今年(2025年)のパウエル議長は、トランプ大統領から強い利下げ圧力にさらされながらも、一貫して利下げ慎重姿勢を貫いてきましたが、今回のジャクソンホール会議で9月利下げを示唆するのではないかとマーケットは見ています。
その結果、ウクライナ戦争の終結と、米国の利下げを織り込む形で、今週のユーロ/米ドルは底堅く推移すると見るマーケット参加者が多いのですが、本稿執筆時点までのユーロ/米ドルは上値の重い展開となっています。

(出所:TradingView)
その要因は米国株が軟調に推移しているという点もありますが、ニュージーランドドル/円が値を下げているのも影響しています。
8月20日(水)、RBNZはコンセンサスどおり3.25%から0.25%利下げを決定しました。政策金利であるOCR(オフィシャル・キャッシュレート)は3年ぶりの低水準である3.00%まで下げられたことになります。
RBNZはインフレ見通しを引き上げる一方、同時に公表された最新予測は、さらに2回の利下げの可能性が十分あることを示唆しています。
これを受け、ニュージーランドドル/円は一気に約1円下落して、現在85円台後半で推移しています。

(出所:TradingView)
今週は米国株も軟調で、ややリスクオフ的な流れの中、ユーロ/円も171.50円で軟調に推移しています。
ただ、前述のようにウクライナ戦争が停戦すれば、欧州は原油価格下落に加え、ウクライナの復興需要などの恩恵をもっとも受けやすいことから、ユーロの上値余地は拡大します。
停戦に向けて動き出したウクライナ情勢を横目にユーロ/米ドル、ユーロ/円、ユーロ/ニュージーランドドルを押し目買いスタンスです。

(出所:TradingView)

(出所:TradingView)

(出所:TradingView)
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