■言われるほど、QE3を危惧したドル売りは見られない
為替市場では、米ドル安の基調が続いている。ドルインデックスは78.62まで反落し、円をはじめ、主要通貨は対米ドルでの高値圏をキープしている。
先週のFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果を踏まえた米ドル売りであるが、そのような中、2月3日(金)の米国雇用統計は注目される。結果が芳しくなければ、「QE3(量的緩和策第3段)」の蓋然性が一段と強まり、さらなる米ドル売りにつながるといった見通しや解説をよく耳にする。
しかし、少なくとも投資家動向に関する最近の統計を見ると、「QE3」の可能性を危惧した米ドル売り・外貨買いの傾向はあまり見られない。むしろ、多くの投資家は米ドルの調整で押し目買いを断行しているようだ。
ちなみに、ここで言う「投資家」には、プロとアマチュア、機関投資家と個人投資家の両方が含まれる。一般論として、IMMの先物市場における投機筋はプロ、店頭市場のデリバティブ(FX)を行う投機筋はアマチュアとされる。
だが、最近は一概に、そうとも言えない側面がある。店頭市場にプロの機関投資家が参入してくるケースも見受けられるのだ。
これは、ヘッジファンドをはじめ、手の内を見せたくないプロが先物市場の利用を避ける傾向にあるためだが、それでも、大まかな見方としては通用するだろう。
なお、彼らの行動パターンが、通貨ペアによって異なっていることも付け加えておく。
■FOMC当日のユーロ/ドルは、なぜ大きく上昇したのか?
さて、ユーロ/米ドルをIMMデータで見ると、1月24日(火)時点の統計では、ネット・ショートは17万1347枚まで増加し、史上最高レベルを再更新した。
その翌日にFOMCが行われているため、この数字にはFRB(米連邦準備制度理事会)の政策の影響は織り込まれていないと見られるものの、その後のユーロ/米ドルの値動きを考慮すれば、市場参加者のユーロ売りの意欲はFOMC後も弱まっていないと思われる。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
ここで、筆者が2月1日(水)午後に発行したレポートの一部をご覧いただきたい。ユーロ/米ドルの値動きの特徴をよくとらえており、市場センチメントを探るヒントが隠れていると思っている。
「昨日ユーロは急落した。高値更新できなかったことを受け、一部ロング筋の手仕舞いが主因と思われるが、圧倒的にショート筋が多い局面では、教科書通りに動くかどうかは慎重な姿勢でフォローしていきたい。
図示のように、28日高値をトップとしたヘッド&ショルダーズ(三尊型)といったフォーメーションが形成され、昨日の安値がそのネックラインを一時破っていた。通常のケースでは、素直に下放れし、安値更新して同フォーメーションのターゲット(1.2930前後)に照準する公算は高い(黄色矢印の指示通り)。
(出所:米国FXCM)
「しかし、切り返しのトレンドが強い場合、所謂『ダマシ』のサインもよく見られ、『ダマシ』というシグナル自体の存在がその後のトレンドを更に推進する原動力になるケースもある。
前例として24日から25日にかけて時間足に形成された『トリプルトップ』フォーメーションの形成とその後の上放れ(ダマシ)が挙げられ、1.2623を起点とした上昇チャネルの再規定もあり、1.3025/40にサポートされ、再度切り返す可能性も注意しておきたい(赤色矢印の指示通り)。
なお、1.2623を起点とした上昇変動は18日以来、初めて200時間線まで反落しており、一旦サポートされるケースも多い。
何れにせよ、短期スパンでは状況は流動的で、本日臨機応変で対応したいが、仮に『三尊型』の通りに下放れしたとしても、売りポジションの多さに鑑み、1.2623を起点とした反騰を終焉させるではなく、大型調整をもってスピードを緩める公算が高いと見る。ドルの底打ちはなお先か」
実際のところ、ユーロは1.3026ドルの安値をつけてから、1.3218ドルまで大きく反発した。
このレポートを発行した2月1日(水)は、ユーロの「三尊型」を売りサインととらえる分析がたくさん出ていたので、多くのトレーダーが新規で売り参入してきたと見ている。ゆえに、ユーロは下がらず、大きく反発した。
■プロもアマも、戻り売りばかりを狙っている
教科書どおりに行かないのが「相場の常」である。とはいえ、「問題児」のユーロが連続で「ダマシ」を出して続伸し続けられるのは、1つの原因しか考えられない。
それは、すなわち…
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