プロもアマチュアも同じことを考え、戻り売りばかりを狙っているから、ショートポジション(売り持ち)の多さに比例して、踏み上げ後の上昇幅も大きくなったのである。
それまでに、プロがユーロショートを少なからず手仕舞っていたならば、2月1日(水)のような「ユーロの踏み上げ」が演出されることは難しかった。また、アマチュアの「新規参入」なしでも、トレンドは続かなかっただろう。
ちなみに、海外の大手店頭取引業者が発行しているポジション統計を見ると、ユーロ/米ドルが1.2700ドルをブレイクした後、個人投資家は競ってユーロを売っていたようだ。70%前後の比率でユーロショートに傾いており、前述した「三尊型」が、さらなるユーロ売りを誘発したと思われる。
■ユーロの戻りの限界を指摘するレポートが多いが…
逆張りを好む個人投資家の行動パターンは容易に推測できるが、プロの動向を知る手がかりは、金融機関のレポートを参考にするしかない。
仕事上、筆者は多くのレポートを見るが、この2週間の金融機関のレポートは、うんざりするほど、ユーロの戻りの限界を指摘するものが多かった。だから、筆者はユーロのロング(買い持ち)を推奨した。
要するに、猫も杓子もユーロを売っていたのに切り返しが継続しているのだから、残る道は1つしかなく、上に行くことが推測できた。
総括すると、FRBの政策云々より、足元で進行している米ドル安・外貨高は、なおテクニカルの要素で主導される公算が大きいということだ。
資源国通貨の豪ドルが買われるのは当然で、FRBの政策云々との整合性も取れるが、「問題児」のユーロや、量的緩和拡大が必至と見られる英ポンドの急伸は、単純に米国の政策動向で説明するには無理がある。
相場の真実、あるいは、為替の真実を悟るには、もっと相場の内部構造と市場センチメントの関係に着眼しなければならない。
■米ドル/円に対する見方はプロとアマで大きく割れている
もちろん、マーケットの行方は、ポジション動向によって簡単に決定されるものではない。だが、為替市場は「交換関係」で成り立っているために、その値動きの大半がロングとショートのバランスや、その崩れ方によって形成されていることを肝に銘じていただきたい。
詳しい説明は筆者の拙作『FXトレーディングの真実』の「開眼編」を参照していただければ幸いだが、前述したユーロ/米ドルの事例からも、次のような、かなり衝撃的な教訓が得られるのではないだろうか?
1、大衆は常に間違う。
2、プロもアマチュアも同じことを言い始めたら終わり。
なお、この2つは、ともに拙作におけるタイトルである。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
なお、主要通貨ペアの中で、プロとアマチュアの見方が最も大きく割れているのは米ドル/円である。IMMデータでは8年ぶりの高い水準まで米ドル売り・円買いが進んでいるが、個人投資家の大半は米ドル買い・円売りに傾いている。
果たして、今回はどちらに軍配が上がるだろうか?
もっとも、このような相違のほうが正常であることも申し上げたい、つまり、プロは総じてトレンドフォローに徹するが、対照的に、個人投資家は逆張りを好む。
だから、最近のユーロ/米ドルや英ポンド/米ドルは、どちらかいえば、通常ではない現象である。
■「QE3」が真の焦点として、マーケットの動向を左右する
以上、IMMデータでユーロショートが史上最高レベルを更新し続けている状況をもとに考えると、ユーロの切り返しが早期に終了するといった性急な判断は避けたいところだ。
ただし、「S&Pショック」によってユーロの切り返しが始まる場合、本来なら好材料となるはずのギリシャの債務交換協議の合意後に、ユーロ高が一服する可能性があることにはご注意いただきたい。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足)
2月3日(金)の米国雇用統計の結果を受けて、相場は再び荒れてくるだろう。そして、ポジション整理が一段と進むと思われる。その後に、今度は「QE3」が行われるか、否かが真の焦点として、マーケットの動向を左右するだろう。
今回はユーロの話が長くなったので、このテーマはまた次回に説明したい。
(2012年2月3日 AM11:48執筆)
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