■市場は再びドル安基調へ
為替マーケットは再びドル安基調を強めている。
リスクオン/オフの視点なら、リスクオンのほうにシフトしているように見えるが、通貨ごとの格差も拡大している模様だ。
金利政策では、今週のRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])の利下げはややサプライズだった。
ECB(欧州中央銀行)、BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])の金利据え置きは想定の範囲だったため無風通過となり、今晩(10月5日)の米雇用統計に注目が集まっている。
一般論では、想定より良い数字が出れば一段とリスクオンに傾くので、対円を除いて米ドルは売られる展開になりやすいと思われる。
■豪州の利下げが豪ドルに与えた影響は?
今週は、RBA利下げの影響が大きかったから、豪ドルを中心に見てみよう。
マーケットの予想に反したRBAの早期利下げは当然豪ドル売りの材料と化し、豪ドル/米ドルと豪ドル/円は共に売られた。
それ以上に、実はユーロ/豪ドルの上昇が目立ち、前回(9月28日)のコラムで指摘していた200日移動平均線(200日線)をあっさり上回ったため、ブル(上昇)基調を一層強めている。
【参考記事】
●QE1、QE2、QE3を比較して計算。米ドル安はむしろこれから来る!(9月28日、陳満咲杜)
(出所:米国FXCM)
ドルインデックスに含まれない分、豪ドルの強弱は対ドルだけでなく、ユーロとの比較が重要になってくる。
最近の値動きで言えば、ユーロ/豪ドルの暴騰が主因で、豪ドル/米ドルの軟調をもたらしたと言っても過言ではなかろう。
もっとも、ユーロ/豪ドルは2008年高値から45%に近い暴落を演じてきたので、足元の切り返しは強いけれども、スピード調整の領域から脱したとは言いきれない。
ドラギECB総裁の新政によるユーロ浮上効果に加え、たび重なる豪州の利下げは、いわゆるユーロキャリートレードに打撃を与えたに違いない。
そのため、足元ではその反動によるユーロ買い・豪ドル売りが進んでいると見られる。
RBAは、世界景気の減速を理由に、2012年年初以来3回目の利下げを敢行し、合計1%もの利下げを実行している。しかしそれでも、3.25%の金利水準を有し、世界最高の格付けを誇る豪州国債や各種公債の魅力は失われていない。
■「世界の景気減速」は建前、本音は「豪ドル高の是正」
第2四半期の統計では、外資が持つ豪州国債、公債の比率は、過去最高の79%からわずかな減少はあったものの、依然77.5%という高い水準を保っている。これは、10年前と比べ、なんと倍以上の増加ぶりである。
しかし、豪州債券への外資殺到は、豪ドル高を押し進めるという、資源輸出型経済に依存する豪州にとってのデメリットももたらすため、好ましい状況ではないことも明白だ。
けれども、欧米日と違い、豪州は世界的量的緩和合戦に直接参加できないため、せめて利下げをして豪ドル高を和らげるしかない。よって、世界景気後退云々は表の理由にすぎないと思う。
したがって、これからの豪州利下げ継続の有無については、世界景気状況よりも豪ドル高是正の具合が、より明確な物差しになるのではないかと思う。
その上、豪州国内の事情、特にCPI(消費者物価指数)が示すインフレ水準も重要になってくるだろう。
インフレの状況次第で利下げを継続できない恐れもあるから、豪ドル高阻止のための利下げは、一筋縄にいかないかもしれない。
■テクニカル分析では直近のユーロ/豪ドル急騰は続かない
テクニカルアナリシスの視点では、ユーロ/豪ドル週足におけるRSIの変動範囲に注目していただきたい。
2009年4月にユーロ/豪ドルが1.9150ドルのサポートを割り込み、大型ベア(下落)トレンドへ突入して以来、RSIは高くても60以下のレベルに押さえられており、ベアトレンドの戻り限界を示してきた。
(出所:米国FXCM)
足元ではRSIが60を再打診しているが、ここをブレイクしなければ、少なくとも直近の急騰は一服し、豪ドル安一辺倒とはなりにくいのではないかとみる。
したがって、足元では豪ドルは押さえられ気味だが、豪ドル自体が持つ優位性はおそらくなお強く、大きく値崩れることも想定しにくい。
豪ドル/米ドルは…
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