■同じチャートから正反対の意味を読み取ってしまう理由
ところで、「罫線屋」がおかしやすいミスの1つとは、個々のサインにこだわりすぎたゆえに、色メガネをかけてしまうことだ。
足元の米ドル/円を、違った色メガネをかけて見てしまうと、まったく違った結論を出してしまうだろう。
下のチャートで、「ヘッド&ショルダーズ(※)」しか読み取れない方は米ドル/円のトップアウトと判断し、ショートポジションを取ってしまうだろう。
(※編集部注:「ヘッド&ショルダーズ」はチャートのパターンの1つで、天井を示す典型的な形とされている。人の頭と両肩に見えるために「ヘッド&ショルダーズ」と呼ばれていて、仏像が3体並んでいるように見立てて「三尊型」と呼ぶこともある)
(出所:米国FXCM)
なぜなら、同フォーメーションはよくトレンドの天井に出るし、いったん成立すれば、少なくとも90円台まで反落する見通しだからだ。
それに対して強気派は、下のチャートに示したように、同じチャートから強気のフォーメーションを見い出す。すなわち、上昇トライアングル、あるいは上昇途中のシンメトリカル・トライアングルと見なせば、上値更新はこれからだ。
(出所:米国FXCM)
したがって、こういったテクニカルのワナを避けるために、以下の2点に注意すべきであろう。
1.チャート上のサインやフォーメーションは、本当に点灯、あるいは成立するまで確信を持たないこと。またダマシの可能性にも常に注意しておくこと。
2.整合性をもって相場を全面的に判断し、できるだけ色メガネの度数を減らすこと(人間である以上、まったく色メガネを掛けずに相場を見るのは不可能だし、取引システムさえできない。なぜなら、システムのロジックは色メガネを掛ける人間が書いているからだ)。
■早く成立した方のフォーメーションに従うと予測するが…
「こんな説教はどうでもいい、米ドル/円がこれから上がるか、それとも反落するかを言ってみよ」といったお叱りがそろそろ来るかと思い、本題に戻るが、実はその答えは前述のとおりである。
つまり、足元では微妙なので、筆者は特にスタンスを持っていないが、前述のチャート上の両フォーメーションのうち、どちらかが先に成立すれば、短期スパンのトレンドはそこに進むと思う。
「そんな風見鶏みたいな…」といったお叱りも承知しているから、あえて言ってみれば、キーウーマン発言から考えて、米ドル/円の上値志向はなお維持され、上にブレイクしていく公算がやや大きいのではないかと思う。
95円の大台をいったん打診してもおかしくなかろう。
当然のようにこのような話を持ち出すと、先週のコラムでも言っていたように「皆、同じ話をし始まったら相場が終わり」、あるいは「曲がり屋の陳でも95円の大台を言い始めたら終わり」といったリスクもあるので、ご参考まで。
【参考記事】
●購買力平価が示すドル/円上昇の限界点。なぜ、96円で頭を押さえられるのか?(2月15日、陳満咲杜)
一方、先週のコラムでも指摘していたもうひとつの可能性、つまり、「円売りポジションの買い戻しがすでに始まっている公算が大きい」ことは、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)、特に英ポンド/円の相場から認証されているのではないかと思う。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足)
英ポンド/米ドルの「底なし」急落があっただけに、英ポンド/円の反落も当然の成り行きだが、ここで注目しておきたいのは円安トレンド全体の値動きだ。
要するに、今まで米ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円の上昇に追随して、遅れてはいたものの英ポンド/円も基本的には高値更新し、ブル(上昇)トレンドを維持してきた。
しかし、これから仮に米ドル/円の高値更新があっても、英ポンド/円が遅れても追随してこない、あるいはユーロ/円さえ高値更新が難しい状況になれば、円安トレンドの一服が本格的になってくる公算が大きい。
市況はいかに。
(2月22日 PM1:30執筆)
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