■消去法による米ドル選好で米ドル全面高継続
ところで、ドルインデックスは昨日(5月16日)陰線引けしたものの、大した下落を示さず、執筆中の現時点において再び84の節目手前まで上昇している。
(出所:米国FXCM)
マーケットが動揺せず、米ドルのロングスタンスに傾いていることは、従来からの「FRBに対する思惑」よりも、「消去法による米ドル選好」が主因ではないかとみる。
すなわち、昨日(5月16日)の経済指標のリリースで、FRBによる早期出口政策模索論は後退しているものの、EU(欧州連合)、英国、豪州など各経済主体はこれから量的緩和を拡大、あるいは金融政策を緩和していくと予想される。
そのような状況では、先行して政策を行ってきた米国の方が、目先不透明ではあるものの、比較的出口に一番近いと思われるのだ。
よって、ユーロなどの不確実性に比べ、米ドルが消去法的に選好される側面が大きいと推測される。
したがって、米ドルの全面高は、米ドル自体の強さより、諸外貨の弱さに起因しているところが大きいといった結論を得られる。
もっとも典型的な例は、言うまでもなく米ドル/円である。
日米金利差など、従来のものさしではとても説明がつかない水準まで上昇してきた米ドル/円は、日銀の「異次元緩和」による円売りが主体となり、米ドル買いよりも円売りのほうが相場をリードしているところが大きいと言えるだろう。
こういった視点は、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)相場の急騰を見る上でも同じで、諸外貨買いよりも円売りが主因であることが明らかである。
■クロス円に異変! 豪ドル/円が2ケタに逆戻り
ところで、最近ではクロス円に異変が起こっている。
当コラムで繰り返し指摘してきたように、クロス円の上昇を一貫してリードしてきた豪ドル/円は、ユーロ/円、英ポンド/円の高値更新に追随してくるどころか、本日(5月17日)再び100円の節目を割り込み、2ケタに逆戻りした。
これは円売りトレンドの一服を示唆するサインとして見過ごせないと思う。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨vs円 4時間足)
当然のように、豪ドル/円の軟調は、豪ドル/米ドルの暴落にリンクしている。
前述のように、消去法による米ドル選好が、諸マイナス材料が集中する豪ドルの下落に現れている。
商品相場の低迷、中国景気減速に、利下げの可能性ありといったマイナス材料を重ねた豪ドルは、米ドル高の受け皿として格好の売り対象となり、豪ドルは0.9750ドル割れまで下がってきた。
しかし、これは米ドルに対する評価が高まったというよりも、「割高」だった豪ドルの修正という視点のほうが妥当である。
■目先の米ドル/円の上昇は、最大でも103円台までか
いずれにせよ、豪ドル/円の軟調が米ドル全面高とリンクしていることは間違いない。
言ってみれば、クロス円相場の急騰局面では、米ドル/円とドルインデックス両方の急伸はあり得ない。
クロス円を含めた円売りモメンタムの強化は、米ドル全面高の局面では得られないわけである。
さらに検証していくと、米ドル/円とドルインデックスのタイムラグにたどり着く。
以下の米ドル/円とドルインデックスの比較図で見てみるとわかるように、米ドル/円とドルインデックスの傾向が大きく異なる時期がある。
(出所:米国FXCM)
最近では、2012年11月~2013年2月までの間で両指数の相違が鮮明で、米ドル/円の上昇とドルインデックスの下落がはっきりしていた。
同じ時期におけるクロス円のパフォーマンスはというと、クロス円がもっとも急騰し、ほぼ一直線に上昇した時期でもある。
また、ドルインデックスと米ドル/円の両方が上昇した場合、その時期が一定期間を過ぎると傾向が崩れ、再び両者の動きが相違していくといったリズムを繰り返していることもわかる。
では、2月から続いてきた両者の上昇傾向がそろそろ崩れる時期に見舞われるならば、今回はどちらが頭打ちしやすいだろうか。
答えは、冒頭のドルインデックスのチャートを見てみれば、おのずとおわかりいただけるだろう。
この意味では、米ドル/円の上昇は、目一杯計算しても103円台に留まり、1回頭打ちして反落してくる公算が大きいのではないかとみる。
次回は米ドル/円自体のサインを検証したい。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)