■ユーロ/米ドルはすでにトップアウトを果たした公算が高い
前回のコラムにて提示した見方と同様、ユーロ/米ドルは6月高値を更新したものの、テクニカルの視点では上値余地は限定的であり、4月安値から調整波(切り返し)を継続していたから、いったん反落波に転じると、値幅が大きくなるはずだった。
【参考記事】
●アジア通貨危機再来なら円安か? 円高か? 中国崩壊論より、ユーロ暴落に注意!(2013年8月23日、陳満咲杜)
昨日(8月29日)の材料をもってユーロは急落したが、これはまさにこのような特徴を表す値動きであるから、ユーロ/米ドルはすでにトップアウトを果たし、これからベアトレンドを継続する公算が大きいとみる。
(出所:米国FXCM)
最近のフォーメーションにおいては、上のチャートで示しているように、昨日(8月29日)の下げは7月安値から形成していた「上昇フラッグ」の下放れに当たるから、ベア基調は一層強化されたと思う。
■事態が深刻化すれば真の流動性を持つドルに資金はシフト
こういった分析をまとめると、これからの市況の推測に役に立つ。
まず肝心のシリア情勢がこれからどう展開するかはわからないが、ドルインデックスの切り返しが続くなら、シリア情勢の一段の悪化は、中東混迷の拡大を暗示するサインとして読み取れる。なぜなら、米ドルも資金の逃避先としての役割を果たしているからだ。
しかし、米国のシリア攻撃表明後の値動きでわかるように、先に買われたのが円とスイスフランで、米ドルの優位性はむしろ低下したように見える。このあたりに、実はもう1つの要素が隠されていると思う。
つまり、同じ材料でも、その時効性や継続性によって、マーケットに与える影響が違ってくるということだ。
簡単に説明すれば、米主導のシリア攻撃は、表明した時点では米財政圧迫といった懸念で米ドルを選好できないが、いったんシリア攻撃が始まると、材料の出尽くし感で米ドルが買われる可能性が大きい。
さらに、こういった予測はなお表面的にすぎない。仮にこれから米ドルの暴騰があれば、これはおそらくシリア情勢の鎮火ではなく、中東全域に混乱が広がっていくことを意味するだろう。
中東不安が高まり、オイルマネーのみでなく、世界範囲で安全な逃避先を求める流れが起これば、資金は真の流動性を持つ米ドルにシフトするほかあるまい。要するに「有事のドル買い」である。事態が深刻化すればするほど、米ドルは買われる運命にある。
■何であれ、最後は米ドル買いの材料と化す運命
もっとも、米ドルが買われる運命にあるということは、地政学的な要素があったとしてもそれはあくまで誘因にすぎず、本質的にはドルインデックス自体の内部構造に起因している。
このあたりの話はやや複雑になるが、シンプルにまとめると、以下のチャートで示すように、米ドル全体は2011~2012年から上昇トレンドに入り、これが2021~2022年まで続く可能性が大きい。
だから、ファンダメンタルズ上の材料は、FRBの政策転換であれ、中東混迷であれ、最後は米ドル買いの材料と化す運命にあり、材料自体は巷で言われるほど重要ではない。
この意味では、仮にオバマ大統領がシリア攻撃を取りやめた場合、また米ドル買いが起こるだろう。米財政圧迫の懸念が消えたから米ドルが買われる、といった理屈である。
その時、マスコミの記事には、きっとこのようなタイトルがつくだろう。「米ドル上昇、シリア攻撃中止に好感」といった具合だ。
しかし、物事の本質がわかれば、いわゆる「記者の目」に振りまわれずにすむ。マーケットはシンプルでありながら奥深い。ゆえに、俗論に流されないことが肝心だ。
■米ドル/円は95.80円割れも覚悟を
では、米ドル/円はどう動くか。大きなポイントは、やはり日足におけるトライアングルの突破にある。
どちらに突破するかによって流れが変わっていくが、ユーロ/円などクロス円の動向から考えて、目先なお下放れの可能性が大きいのではないだろうか。この場合、一時的にせよ、8月安値95.80円割れも覚悟しておきたい。
お詫び:体調不良のため、今回短文で失礼します。
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