■米ドル全体の「損するポジション」はだいぶ解消済み
言い換えれば、為替相場における値動きの大きさは、「損するポジション」の数と比例する場合が多いから、「損するポジション」が足りなくなると、逆に材料があっても値幅が限定されるしくみである。
CFTC(米商品先物取引委員会)の統計データをフォローしていけば、前述の理屈をより理解できる。
米ドル全体のネットロングポジションは、ドルインデックスの7月高値に合わせて、かなり高い水準(筆者が持つデータで比較可能な範囲では2004年以来の高い水準を記録)にまで膨らんでいた。現在、それは2月以来の低い水準まで落ち込んでおり、それは「損するポジション」がだいぶ弾けたことを意味している。
もちろん、これは米ドル全体の話であり、米ドル/円など個別通貨ペアの状況はまた異なっているので、注意していただきたい。
まとめてみると、今回の米政府閉鎖という材料は、米ドル安トレンドが進行した後に出てきたから、同材料が米ドル安を一段と押し進めるか、それとも一段落させるかに注目する必要がある、と筆者は思う。
換言すれば、同材料の出現が一概に米ドル安を加速させるとは限らないという可能性を提示しておきたい。
なぜなら、巷では米デフォルトの可能性を深刻視しているが、前例を見る限り、米国の政治家たちは自らの地位を失うリスクを冒して、米国をデフォルトさせるほど馬鹿ではないことがわかるからだ。
ギリギリまでの交渉と抗争が続くが、最後にはなんらかの妥協策を得られるのではないかとみる。こういった可能性を何より知っているのはマーケットであり、足元でパニック的な米ドル売りが起こっていない最大の理由ではないかと思う。
■一転して米ドル買いに殺到する可能性も
それどころか、過剰に積み上げられた米ドルロングポジポジションの一掃もあり、米議会の早期妥結があれば、一転して米ドル買いが殺到し、トレンドを修正させる可能性さえある。
こういった予測ができる最大の根拠は、前回のコラムでも提示したように、「バーナンキ氏は米債務上限の引き上げに失敗した場合に備えてQE縮小を遅らせた可能性が大きい」ということにある。最大懸念材料が払拭されれば、FRBもQE縮小を決断するのではないかといった連想が、米ドル買いをもたらす可能性も大きいからだ。
【参考記事】
●カギは米債務上限問題に! 9月FOMCでバーナンキFRB議長が裏切った理由とは?(2013年9月27日、陳満咲杜)
したがって、米ドルにとっての状況は、足元では最悪の段階にあるが、最悪の段階にあるからこそ、もうこれ以上、悪化の余地は限られる。それゆえ、米ドルは底打ちして、上昇しやすい時期に入っているのではないかとみる。
米ドル安に関する行きすぎた悲観論は、7月初めにおける過度な楽観論と同じく、修正される運命にある。
■ユーロ/ドル、英ポンド/ドルはすでに切り返しの最終段階
こういったロジックが正しければ、ユーロ/米ドル、英ポンド/米ドルはすでに切り返しの最終段階にあり、米ドル/円も5月高値から形成された大型トライングルの最終段階にきていると思う。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 日足)
(出所:米国FXCM)
米ドル安から米ドル高に修正してくれば、引き続き米ドル/円とクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の上昇加速に注目したいと思う。このあたりの話はまた次回に。
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