■「FRB裏切りショック」以降、米ドル安の基調が続く
為替マーケットは保ち合い状態となっている。ドルインデックスは、先週(9月18日)の「FRB(米連邦準備制度理事会)裏切りショック」で形成された安値を切らずにいるものの、弱い反発にとどまり、総じて米ドル安の基調を保っている。
(出所:米国FXCM)
■もう、FRBのことは信じられない?
FRBは、QE(量的緩和策)縮小見送り後、市場関係者に厳しく批判され、その権威や信頼性が著しく損なわれている。
にもかかわらず、FRB幹部たち、すなわち地区連銀総裁たちは、引き続き、お互いに矛盾した見方を披露し、マーケットの混乱に頓着しない態度を取っているようにさえ見える。
「バーナンキFRB議長が、彼の前任と違うところがあるとすれば、退任後ではなく在任中に名誉を汚したことだ」ということになりかねない。
ゆえに、連銀総裁の中には10月にもQE縮小可能と言う者がいるが、マーケットの反応は当然疑心暗鬼なものになり、本気で信じられないのが実情だ。こんな雰囲気の中、仮に10月FOMC(米連邦公開市場委員会)で本当にQE縮小があれば、それこそまた大きなショックで、マーケットの一層の混乱は避けられないだろう。
とはいえ、10月QE縮小は一部でその可能性が囁かれている以上、まったく無視することもできない。果たして、バーナンキ氏がそこまで無謀な振る舞いをするかどうか不安ながら、恐らく誰も一定のロジックをもって推測などできないのではないだろうか。
こういったセンチメントがマーケットを支配している以上、しばらく不安定な市況を覚悟しなければならないし、市場関係者はしばらく足をブレーキから外せずにいるだろう。
■米財政問題の再燃もマーケットに影響
バーナンキ氏と同じく、アメリカ大統領のオバマ氏もリーダーシップの欠如という問題に悩まされている。外交ではシリア問題でロシアのプーチン大統領に一本取られ、内政では議会とのギクシャクが続く。
何より深刻なのは、財政問題の再燃だ。米債務上限が再び限界を迎える中、共和党との対立で期限前に合意とならず、米政府機能の一部がいったん停止する恐れがある。
いわゆる「オバマケア」問題に関する米民主党と共和党の対立が、また債務上限危機を招いているが、問題の詳細は政治学者にお任せし、ここではその影響だけに注目したい。
要するにマーケットにとっての2大懸念材料、すなわちFRB政策と米財政問題の不透明さが払拭されるまで、マーケットにはメイントレンドが出にくいのではないかと思われる。
■「結果」の内容よりも「結果が出た」ということが重要
ところで、米債務上限引き上げ問題の再燃は、2011年のケースを思い出させる。
【参考記事】
●米国はもう一度「真珠湾攻撃」を演じるか!?米国債をめぐる米政府の思惑とは?(2011年7月1日、陳満咲杜)
さらに言うと、1995年から1996年にかけて米クリントン政権の時も、実際政府機関の一部が閉鎖されたから、前例がある分、実際議会と決裂しても、マーケットはパニック的な状況に陥らないだろう。
言い換えれば、FRB政策にしても、米財政問題にしても、行き先の不透明さ自体がリスクであり、「結果次第」というよりも、「結果が出次第」何とかなるのではないかと思う。このあたり、2011年のケースも教訓となる。
■債務問題決着までは米ドル安、決着後は米ドル高か
債務問題の混乱は、米ドル安をもたらすという見方と、リスクオフで米ドル高を推し進めるという見方に二分されているが、過去の例でみると、決着までは米ドル安、決着後は米ドル高に反応するといったパターンになるようだ。
ちなみに、決着ということは、議会承認と議会不承認の両方を指しているから、前述のように、「結果次第」というより、「結果が出次第」の側面が大きい。
一般論では、米政府機能の一部がストップとなれば、リスクオフの動きで米ドルが買われやすいが、円とスイスフランといった伝統的な危機回避通貨も買われる公算が高いから、リスクオフの場合、米ドル/円はむしろ売られるリスクがあるので、要注意である。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
さらに今回の場合、かつてと違う…
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