■なぜ、本格的なリスクオフはまだこれからなのか?
株式相場のパフォーマンスと連動した形で、10月に入ってから為替マーケットは波乱となってきたが、前述のように、総じてドルインデックスとリンクした形の米ドル/円の上下が見られてきた。
(出所:米国FXCM)
株安はリスクオフの視点でとらえられるが、為替相場の反応は、典型的なリスクオフの反応とかけ離れているところが見逃せないし、興味深い現象だ。
これはVIX指数の動向と絡めるとよくわかる。10月15日(水)に一時31.06まで上昇した同指数と相俟って、ユーロ/米ドルは1.2887ドルまで上昇、米ドル/円は105.19円まで下落した。
VIX指数の急伸がリスクオフを意味するなら、伝統的なパターンである米ドル買い(米ドル/円を除き)・円買いの同時進行につながるはずだが、今回は明らかに違っていた。
言い換えれば、10月以降の為替市場の変動は、リスクオフの動きといった側面もあるものの、やはり、米ドル全面高に対する修正がメインだったことがわかる。
したがって、目先VIX指数が再度16.50前後に落ち着き、ドルインデックスの下落も一服したわけだが、ドルインデックスの「買われすぎ」はVIX指数の上昇のきっかけであり、原因ではない可能性が大きい以上、VIX指数の上下とあまり関係なく、ドルインデックスの「買われすぎ」はこれからも修正されていく公算が大きい。また、やや逆説となるが、本格的なリスクオフがあるならば、まだこれからだ、ということも推測される。
したがって、本格的なリスクオフが生じれば、典型的な米ドル買い・円買いの同時進行がみられるだろう。言うまでもないが、その時は米ドル全体における「買われすぎ」を十分修正したからこそ、典型的な反応パターンが見られるわけで、足元ではまだそのような段階ではないと思う。
■ユーロ/米ドルの1.25ドル割れはいったん避けられるか
ゆえに、目先ユーロ/米ドルの下値余地について、ガンガン拡大していくかどうかについても慎重に測りたい。
2014年7月初頭からユーロが大幅下落してきたことから考えて、先週(10月13日~)高値までの修正では、必ずしも十分とは言えず、これから仮に安値打診があっても、1.2500ドルの節目を大きく割り込むことはいったん避けられるのではないだろうか。
(出所:米国FXCM)
本格的なユーロ安は、次回本格的なリスクオフの時出現し、その際には行き過ぎたユーロ安も十分修正されているはずだ。
■本格的なリスクオフが来れば、クロス円の暴落は必然
まとめてみると、目先再度米ドル全面高に復帰しているようにみえるが、中短期スパンにおける米ドル高の行きすぎは、なお完全に修正されていない公算が大きいから、限定的な値動きにしかならないだろう。
また、行きすぎた米ドル全面高が完全に修正されない限り、本格的なリスクオフにはならないから、米ドル全面高に対する修正は、次のステップを踏む必要条件とも言える。
このような見方は、ユーロ/円、英ポンド/円などクロス円の動向をもって証明されよう。前回のコラムでも指摘したように、中長期スパンでは、ユーロ/円にしても、英ポンド/円にしても、すでにベア(下落)トレンドに入っているから、これから大幅に下値余地を拡大する公算が高い。
【参考記事】
●米ドル/円下落は異変でも急変でもなく、当然の結果。円高の大波はまだこれから!(2014年10月17日、陳満咲杜)
先週(10月13日~)の安値から、スピード調整を先行させ、足元なおその途中とみるが、本格的なリスクオフの局面が来れば、クロス円は米ドル/円よりはるかに大きな値幅を達成できるとみる。
何しろ、前述のように、典型的なリスクオフとは米ドル買い・円買いの同時進行であり、その結果は、クロス円の暴落のほかあり得ないからだ。今後はクロス円の動向から目を離せない。市況は如何に。
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