■円安方向へのスピード調整が円買いの好機を提供!
米ドル/円は昨日(10月23日)、108円の大台を打診、日米株もそれなりに戻ってきた。前回のコラムでも指摘したとおり、いったんのスピード調整の余地はあったから、足元はそのスピード調整を果たしているところとみる。
【参考記事】
●米ドル/円下落は異変でも急変でもなく、当然の結果。円高の大波はまだこれから!(2014年10月17日、陳満咲杜)
もっとも、スピード調整という言い方自体、トレンドの方向が変わらないことを暗示する。今週(10月20日~)の値動きをもって株安・円高の進行が終焉したと思ったなら、かなり性急な判断と言わざるを得ない。
少なくとも2014年年内一杯まで円高の進行を想定する必要があることも既述のとおり。この意味では、足元で円安方向に振れているスピード調整は、再度円買いの好機を提供してくれていることになる。
■ドルインデックスとの連動性が強い最近の米ドル/円
まず、米ドル/円だが、最近はドルインデックスとの連動性が強い。下のチャートはドルインデックスをローソク足、米ドル/円をラインチャートで示したものだが、米ドル/円が高値を取っていくにはドルインデックスの一段高を必要とする。
(出所:米国FXCM)
実際、ドルインデックスの日足を見る限り、10月14日(火)以降の値動きは、すべて10月14日(火)の大陰線の値幅内に留まり、米ドル全体の反騰は、モメンタムが強いとは言いにくい。
早期にブレイクしない限り、ドルインデックスは再度反落してくる可能性が、なお大きいのではないかとみる。
次に、仮にドルインデックスが再び高値を取る値動きになれば、受け皿となるユーロなどの外貨安で再び円高圧力が高まり、米ドル/円の上限を抑圧してこよう。
実際、ユーロ/円にしても、英ポンド/円にしても、先週(10月13日~)の「売られすぎ」から大幅な反騰を果たしているが、共に9月高値を起点とした下落値幅の半値戻しの位置まで戻っていない。
これはクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)相場における円高バイアスの健在を示唆しているから、米ドル/円のみ円安に反応するにも限界がある。
■10月23日の大陽線はリバウンド出尽くしの暗示かも…
とはいえ、昨日(10月23日)の米ドル/円の反騰が、10月15日(水)高値107.50円のブレイクをもって加速されてきたことも、無視できない。昨日(10月23日)の大陽線から考えて、本日(10月24日)もいくぶん上値余地があるはずだ。

(出所:米国FXCM)
しかし、下のチャートで示しているように、10月1日(水)高値110.08円からの全下落幅に対する61.8%反騰位置で頭を押さえられるようなら、昨日(10月23日)の大陽線自体、逆にリバウンドの出尽くしを暗示するサインと化すから、リバウンドの早期終焉も覚悟しておきたい。
(出所:米国FXCM)
この場合、10月15日(水)安値を起点としたリバウンドは、典型的なN字型変動をもって終了されよう。
■なぜ、本格的なリスクオフはまだこれからなのか?
株式相場のパフォーマンスと連動した形で、10月に入ってから為替マーケットは波乱となってきたが、前述のように、総じてドルインデックスとリンクした形の米ドル/円の上下が見られてきた。
(出所:米国FXCM)
株安はリスクオフの視点でとらえられるが、為替相場の反応は、典型的なリスクオフの反応とかけ離れているところが見逃せないし、興味深い現象だ。
これはVIX指数の動向と絡めるとよくわかる。10月15日(水)に一時31.06まで上昇した同指数と相俟って、ユーロ/米ドルは1.2887ドルまで上昇、米ドル/円は105.19円まで下落した。
VIX指数の急伸がリスクオフを意味するなら、伝統的なパターンである米ドル買い(米ドル/円を除き)・円買いの同時進行につながるはずだが、今回は明らかに違っていた。
言い換えれば、10月以降の為替市場の変動は、リスクオフの動きといった側面もあるものの、やはり、米ドル全面高に対する修正がメインだったことがわかる。
したがって、目先VIX指数が再度16.50前後に落ち着き、ドルインデックスの下落も一服したわけだが、ドルインデックスの「買われすぎ」はVIX指数の上昇のきっかけであり、原因ではない可能性が大きい以上、VIX指数の上下とあまり関係なく、ドルインデックスの「買われすぎ」はこれからも修正されていく公算が大きい。また、やや逆説となるが、本格的なリスクオフがあるならば、まだこれからだ、ということも推測される。
したがって、本格的なリスクオフが生じれば、典型的な米ドル買い・円買いの同時進行がみられるだろう。言うまでもないが、その時は米ドル全体における「買われすぎ」を十分修正したからこそ、典型的な反応パターンが見られるわけで、足元ではまだそのような段階ではないと思う。
■ユーロ/米ドルの1.25ドル割れはいったん避けられるか
ゆえに、目先ユーロ/米ドルの下値余地について、ガンガン拡大していくかどうかについても慎重に測りたい。
2014年7月初頭からユーロが大幅下落してきたことから考えて、先週(10月13日~)高値までの修正では、必ずしも十分とは言えず、これから仮に安値打診があっても、1.2500ドルの節目を大きく割り込むことはいったん避けられるのではないだろうか。

(出所:米国FXCM)
本格的なユーロ安は、次回本格的なリスクオフの時出現し、その際には行き過ぎたユーロ安も十分修正されているはずだ。
■本格的なリスクオフが来れば、クロス円の暴落は必然
まとめてみると、目先再度米ドル全面高に復帰しているようにみえるが、中短期スパンにおける米ドル高の行きすぎは、なお完全に修正されていない公算が大きいから、限定的な値動きにしかならないだろう。
また、行きすぎた米ドル全面高が完全に修正されない限り、本格的なリスクオフにはならないから、米ドル全面高に対する修正は、次のステップを踏む必要条件とも言える。
このような見方は、ユーロ/円、英ポンド/円などクロス円の動向をもって証明されよう。前回のコラムでも指摘したように、中長期スパンでは、ユーロ/円にしても、英ポンド/円にしても、すでにベア(下落)トレンドに入っているから、これから大幅に下値余地を拡大する公算が高い。
【参考記事】
●米ドル/円下落は異変でも急変でもなく、当然の結果。円高の大波はまだこれから!(2014年10月17日、陳満咲杜)
先週(10月13日~)の安値から、スピード調整を先行させ、足元なおその途中とみるが、本格的なリスクオフの局面が来れば、クロス円は米ドル/円よりはるかに大きな値幅を達成できるとみる。
何しろ、前述のように、典型的なリスクオフとは米ドル買い・円買いの同時進行であり、その結果は、クロス円の暴落のほかあり得ないからだ。今後はクロス円の動向から目を離せない。市況は如何に。
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